旅人の歯医者日記タイトル
旅人の歯医者日記

第1章 はじまりの虫歯
#1-5 小さく削られた奥歯

1997年4月

レントゲンで奥歯の状態を確認した後、大がかりな治療が行われました。(*第1章は全13ページ)

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10、麻酔注射

麻酔注射のイメージ(*イラスト:しどさん)

(*イラスト:しどさん)

先生が説明してくれたことの半分ぐらいしか理解できていなかったが、「おまかせします。」と返事をすると、「では、今日は虫歯となっている歯を削っていきます。」と、すぐに治療の準備が行われた。

まずは麻酔注射。腕に針が刺さるのでも痛いのに、歯茎に針が刺さることを考えると、ぞっとする。強烈に痛いんだろうな・・・。みっともないので、せめて大きな声を出さないようにしよう・・・。

それなりに覚悟をしていたのだが、麻酔を打つ前に、針の刺さる場所に表面を痺れさすパッチを当てたのがよかったのか、思っていたほど痛くなく、一安心。まずは「第一関門を突破!」といった感じだった。

歯の麻酔のイメージ(*イラスト:あーやんさん)

(*イラスト:あーやんさん)

麻酔を打ち終わると、「麻酔が効くまでに少し時間がかかりますので、しばらくそのままの状態で待っていてください。」と、指示され、また診察椅子で待つことになった。

椅子に座ってじっとしていると、麻酔が効いていく感じが自分でもよく分かり、徐々に頬の辺りが引きつった感じというか、腫れ上がった感覚になっていった。

頬をポンポンと叩いてみると、痛くない。というより、痺れているような感じで、感覚が鈍い。そして打った場所が耳に近いせいか、耳に水が詰まった時のように、叩くと音がボコボコとこもった感じがする。

いつもと違う頬の感触に興味津々。小さな声を出しながら叩いてみると、扇風機の前で声を出しているのと同じような感じで、頭に響く。なんか変なの。

扇風機にあ~のイメージ(*イラスト:はりうーさん)

(*イラスト:はりうーさん)

でもあまり面白がって叩いていると、麻酔の効果が切れてしまうかもしれない。なにより周りから変な人に思われてしまう。大人しくしていたほうがよさそうだ。

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麻酔が完全に効いた頃を見計らって、先生が他の患者の所から戻ってきた。先生は一度に多くの患者を同時に診ているようで、なかなか忙しい。腕がいいから成せる業というのだろうか。

てきぱきと一度に何人もの患者を診察する様子は、まるで手塚治虫のブラックジャックみたい。そう思うと、これからの診察の不安も薄れていく。きっと虫歯もちょちょいと治してくれるだろう。

で、その期待の名医がやって来ると、先ほどと同じように診察椅子が倒され、照明が顔に当てられた。そして、「これから歯を削っていきます。痛かったり、苦しかったら手を挙げてください。それでは口を大きく開けてください。」と言い、ドリルが準備された。

歯科用タービン(ドリル)のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

これから歯が削られる。麻酔って本当に効いているのだろうか。単に痺れているだけで、歯を削ったら痛いのではないか・・・。

昔、歯の治療を受けたときはけっこう痛く、泣きそうになった。今回は歯をたくさん削るから、もの凄く痛いかも・・・。そう考えると手に力が入る。

ぎゅっと目をつむって覚悟を決めていたら、「大丈夫ですから、もっと力を抜いてください。」と優しい声で注意されてしまった。恐怖と緊張のあまり、ちょっと入れ込み過ぎてしまった。

力が入るのイメージ(*イラスト:三度の飯より猫さん)

(*イラスト:三度の飯より猫さん)

少し力を抜いて口を開けると、今度は口の中にドリルが入れられ、キュイ~ンといった甲高い音と共に、歯が削られ始めた。

最初はまだ少し手に力が入っていたが、痛くないと分かると、少しずつ不安な気持ちが消えていった。

11、小さく削られた奥歯

麻酔で感覚がないというのは不思議なもので、ドリルでガリガリと歯を削られているのに、痛くないどころか、何をやっているのかよくわからない。

麻酔の力は偉大だな。これならへっちゃらだ。と、心の中でにんまり。実は思っていたほど、歯医者は痛いところではないのかもしれない。

歯を削るイメージ(*イラスト:hatorinaさん)

(*イラスト:hatorinaさん)

どうせなら耳元で耳障りとなっているキュイ~ンというドリルの音も、消音タイプのものを開発して欲しいものだ。

そういった事を考えられるほど、精神的に余裕が出来てきたものの、今度はいつまでも続くドリルの音に不安を感じてきた。

さっきからガリガリとたくさん削っているような・・・。一体どんな感じで削っているのだろう。麻酔が効きすぎていて、状況がさっぱり分からない。

でも、さっきからずっと削りっぱなしなのは確か。このままでは歯がなくなってしまうのでは・・・。そう不安に思い始めると、ドリルの音が歯の断末魔のように聞こえてくる。

断末魔のイメージ(*イラスト:まさぷすさん)

(*イラスト:まさぷすさん)

早く終わってくれ・・・。もう勘弁してくれ・・・。息が苦しい・・・。と、心の中で念じていると、ようやくドリルの音が止まった。

そして、「削り終わりました。長い時間お疲れ様です。うがいをして口をゆすいでください。」と声がかけられ、椅子が起こされた。

ふぅ~。やれ、ようやく終わった。思ったよりも長かったな・・・。痛くはなかったが、ずっと大きく口を開けていなければならなかったので、顎がとてもだるい。

それに喉に水や唾が溜まるので、時々呼吸が苦しなるのも辛かった。削り終わってみると、少し涙目になっていた。

うがいのイメージ(*イラスト:わたあめ。さん)

(*イラスト:わたあめ。さん)

歯を削った後の口の中は、嫌な臭いが充満していて、とても気持ち悪い。すぐに診察椅子に備え付けられている水場の紙コップを取り、うがいをした。

何度かうがいをした後、舌で問題の奥歯を触ってみると、奥歯が原形をとどめないほど小さくなっていて、ビックリした。

こ、こ、こんなに小さく削っていたんだ・・・。この時点でようやく事の重大さを実感した。

これは部分的に削って、銀の被せ物をして、終わりといったものではないぞ。被せ物は被せ物でも、完全に歯全体をすっぽりと被せるものではないか。

ようやくさっき先生が説明した「銀歯を被せて治す」といった治療の趣旨をちゃんと理解できた。

差し歯のイメージ(*イラスト:改築工房さん)

(*イラスト:改築工房さん)

簡単に書くなら差し歯になるようだ。差し歯というと、なんだか年寄りっぽい感じがしてしまい、大学生のうちから差し歯になってしまうことにちょっと抵抗を感じるが、まあ奥歯の目立たない場所だから、黙っておけば誰にもわからないだろう。

それに荒治療はある程度覚悟していた事。最悪の場合、歯を抜くことになるかもしれないと思っていたので、差し歯としてでも歯が無事に残るのなら、それはそれでいいか。

まあしょうがない。こうなったのも自分が悪いんだし。と開き直るものの、こんなに痛々しい状態になるんだったら、もっと早く歯医者を訪れ、治療を受けていればよかったな・・・とも思ってしまった。

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その後は、白いパテみたいなもので奥歯を覆う仮の被せ物が造られ、「とりあえず仮のものを被せておきました。こっち側であまり物を噛まないようにしてください。それから、麻酔が切れた後、凄く痛むかもしれないので、痛み止めを付けておきます。痛くなったら飲んでください。」と、恐怖の言葉で治療が終わった。

痛み止めのイメージ(*イラスト:K.T.Bonitaさん)

(*イラスト:K.T.Bonitaさん)

ふぅ~、やれやれ疲れた。歯医者は疲れるところだ。ずっと気が張っていたのもあって、どっと疲労感を感じながら帰路についた。

そして、ドリルの余韻を奥歯に感じながら、きっと同じ状況なら誰しもが思うことだろうが、「これからは虫歯にならないよう、ちゃんと毎日歯を磨こう!」と、心に誓ったのだった。

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第1章 はじまりの虫歯
#1-5 小さく削られた奥歯
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