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旅人の歯医者日記

第1章 はじまりの虫歯
#1-9 奥歯の被せ物

1997年8月~9月頃

奥歯に金属の被せ物が取り付けられ、無事に治療が終了しました。(*第1章は全13ページ)

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21、ワクワクと失望

奥歯の型取りをしてから10日後。今日は歯科技工士の人が作ってくれた銀歯を取り付けてもらう日だ。

この銀歯をはめれば、奥歯に歯が戻り、治療が一段落する。長い間よく耐えてきた。特に2か月にもわたって行われたあの3分消毒。あれはなかなか辛かった。

ずっと耐えて、積み重ねてきた分、今日は長く厳しい冬を乗り越えた後で迎える春のような気分・・・。というのは少々大袈裟で、散髪やレンタルビデオ店でスタンプがたまり、一回無料になる日といった気分で、足取り軽く歯医者へ向かった。

スタンプカードのイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

いつもと違って軽快に歯医者の自動ドアを開け、受付の人に診察券を渡すと、待合室の椅子に腰かけた。

早く順番が来ないかな。目をキラキラさせながら待っている私の姿は、他の人から見たらちょっと変な患者だったかもしれない。

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ちょっと待っていると名前を呼ばれ、診察室に通された。そして診察イスに座ると、横のテーブルには治療器具と一緒に銀歯が用意されていた。

これが今後私の歯となるのか。といっても、ブリキでできたミニチュアの岩といった感じ。

銀歯のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

なんか変なの・・・。と、まじまじと見ていると、いつの間にか背後に先生がやってきていて、「珍しいですか」と聞いてきた。

うっ、見ていたのか・・・。照れ隠しも含めて素直に頷いた。そりゃ普段から見慣れている先生には当たり前の物でも、私にとっては珍しいものだし、今後体の一部となってくれる大事な部品だ。

そんなことよりも、さあ早く付けてくれ。これで長かった治療が終わる。今日の診察は今までになくワクワクして待ちきれない。歯医者でこんなにワクワクしているなんて初めてだ。

ワクワクするイメージ(*イラスト:bonbonさん)

(*イラスト:bonbonさん)

椅子が倒されて診察が始まると、奥歯に被せている仮物を外し、患部を水などで掃除をして綺麗にした。そしていよいよ銀歯の登場。まずはちゃんと奥歯にはまるかの確認。

口の中に銀歯が入れられて、治療の箇所にスポッとはまるはずが・・・、はまらない。「あれ、おかしいな・・・」何度となく先生が銀歯をはめようとするものの、きちんと土台にはまってくれない。

お、おい、どうなってるんだ。向きが逆とか・・・。上下逆とか・・・って、そんな事はないか。素人の工作じゃないんだから。

何度かはめ直していると、グキッとはまった感じがした。が、奥まできちんと差し込まれなく、サイズの小さな靴を無理やり履いているような状態。

これはきつすぎる・・・。それにあんまり無理に押し込んだり、いじり回されても、こっちとしても痛い。

うぐぅ~、たまらずうめき声を上げると、歯医者の人も諦めたようで、「こりゃ、だめです。申し訳ありませんが、もう一度型を取らせてください。」と、また型を取り直すこととなってしまった。

ガッカリするイメージ(*イラスト:bonbonさん)

(*イラスト:bonbonさん)

歯科衛生士の人が来て、「型を取り直します」と、前回と同じピンク色の粘土のような物をかまされた。今までのウキウキしていた気分は反転し、なんでこうなるの・・・と落ち込んだ気分になっていた。

しかも今回は念を入れて2回も型を取らされた。おまけに「型取りの間は絶対に動かないでください。」と念を押され、型取りをしている間も、なんだか後ろの方から視線をチクチクと感じる。

この型取り、ただ座っているだけなので、楽な治療なようにみえるかもしれないが、口いっぱいに粘土のようなものが入れられるので、口の中が気持ち悪いし、喉の奥まで入れられると、「うっ」とむせかえる。2回もやると、結構苦しい。

寝ているイメージ(*イラスト:bonbonさん)

(*イラスト:bonbonさん)

今回の治療代は無料だったが、貴重な時間を割いて来ているわけだし、口の中が気持ち悪いし、全くもって迷惑な話。

こんな事なら前回の治療の時、広島から一生懸命帰ってくる必要がなかったな。今日訪れていても同じことだったではないか。全く持って今日は災難だった・・・と、思いながら歯医者を後にした。

22、奥歯の復活

歯医者からの帰り道。そういえば前回、寝ていたな・・・。と、前回の診察中に自分が寝ていたことを思い出した。

しかもカックンカックンって船をこいでいたっけな・・・。もしかしてその時に型がずれてしまったのかもしれない。

うむ、そういう可能性もあるな。いや、その可能性が高い気がする。考えれば考えるほど、前回寝ていたことが、原因のような気がしてきた。

寝ているイメージ(*イラスト:bonbonさん)

(*イラスト:bonbonさん)

そういえば・・・、型取りをしていた時に後ろから感じた視線は、「またあの患者、寝やしないか」と、歯医者の全員で見張っていた視線だったのかもしれない。

申し訳ないことをしたというか、きっとこれも自業自得なのだろう。ほんと、変に張り切って広島から戻ってこなければよかった。行動力があるのも考えものだ・・・。

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その一週間後の治療では、2回も型取りしただけあって、銀歯はばっちりと奥歯にはまった。

そして先生が、歯に紙を挟んで「カチカチとしてください。歯ぎしりしてください」と言いながら、上の歯と下の歯とのかみ合わせを調整していった。

少しかみ合わせや高さの調整をすると、違和感はなくなり、約4ヵ月の月日にもわたった奥歯の治療が終了した。

治療完了のイメージ(*イラスト:bonbonさん)

(*イラスト:bonbonさん)

かなり時間がかかったけど、一番奥というやり難い場所だったし、神経を取り除くといった重傷だったことを考えれば、しょうがないのだろう。

他の歯医者で治療していないので、治療期間が長いのか、短いのかはわからない。診療内容の良さや悪さも分からない。

でも、こうやってあるべき場所に歯がちゃんと戻ってきてみると、丁寧にいい仕事をしてくれたなと、歯医者には感謝しかない。

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