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旅人の歯医者日記

第2章 折れてしまった前歯
#2-4 前歯のない不便さ

1999年2月

前歯が2本とも途中から折れてしまうことで、前歯の大切さを知ることになりました。(*第2章は全16ページ)

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12、やっぱり・・・な展開

苦労して夕食を食べるイメージ(*イラスト:水雲さん)

(*イラスト:水雲さん)

歯医者で継ぎ足すような治療をしてもらい、折れた前歯が復活した。とはいえ、強力な接着剤で引っ付けただけなので、継ぎ足した部分が完全に固まるまでは、前歯を使わないようにしなければいけない。

ということで、家に帰ってからは細心の注意を払いながら晩飯を食べた。でも、これが想像以上に難作業だった。箸を使って奥歯に食べ物を移動し、前歯に食べ物が当たらないようにゆっくりと噛まないといけない。

言葉にすると簡単なのだが、これが本当に難しい。今まで全く気にしたことがなかったのだが、口の中で食べ物を噛むと、食べ物が右へ行ったり、左へ行ったりと、小さな子供のように不規則で、落ち着かない動きをしてしまう。

遊びまわる子供たちのイメージ(*イラスト:きなこもちさん)

(*イラスト:きなこもちさん)

勢いよく噛むからそうなるので、ゆっくりと噛めば問題ない・・・とはいかず、慎重かつ、ゆっくりと噛んでみるのだが、それでも奥歯で砕かれた食べ物が前歯の方へ動いてしまう。これを制御するのは、かなりの修練が必要のようだ。いきなりやろうと思ってもできるものではない。

しかも、そのことばかりに気を取られていると、食べ物の味がせず、何を食べているのかわからない。こんな食事は嫌だ。味は分からないし、時間はかかるし、もどかしくてイライラしてくる。

食べるのがしんどいイメージ(*イラスト:utatatataさん)

(*イラスト:utatatataさん)

これなら治療する前の方が楽だったな・・・。でもまあ、しばらくの我慢だ。完全に引っ付いてしまえば・・・。・・・。ん・・・。って、引っ付いた後も、大なり小なり、このような感じで日々気を付けながら生活しなければならないってオチになるのでは・・・。

今回の治療は楽に終わったぞ!と喜んでいたが、もしそうだとしたら、一生食べるのに苦労しなければならないのでは・・・。そう考えると、この状態にちょっと不安を感じる。

でも、今はそれを考えてもしょうがない。まずは引っ付くことが最優先だ。時間の経過とともに、普段の生活で前歯のことを心配しなくてもいいぐらい強固に引っ付くかもしれないし・・・。科学の力を信じよう。

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夕食の時は絶対に前歯を死守するぞ!と、全力で気を付けていたのだが、寝る前に歯を磨いている時、うっかり歯ブラシを前歯で噛んでしまい、片方の継ぎ足した物がポロって取れてしまった。

うげっ、油断した。というか、やっぱり・・・。う~ん・・・、そりゃそうだよな。はぁ~(ため息)。

憂鬱に悩むイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

そもそも継ぎ足すだけで前歯が治るとは、話がうますぎるのだ。置物の修理とか、プラモデルを引っ付けるのとは訳が違う。

きっと次回は継ぎ足すだけで治療が終わるはずがない。あ~して、こ~して・・・ってよく分からないけど、奥歯の時のようにかなり面倒な治療が待っているに違いない。

そしてまた何か月にも渡って歯医者に通うことになって、お金の方も・・・。ふぅ~、考えただけで何度もため息が出てくる。なかなか憂鬱な展開だ。

エビフライのイメージ(*イラスト:369さん)

(*イラスト:369さん)

特に生活に支障をきたすような痛みもなかったし、もう片方の行く末を確かめたかったし、何より歯医者を訪れるのが面倒だったので、3日ほどそのままの状態で過ごしていたら、もう片方も天ぷらのえびの尻尾をかじってしまった時に取れてしまった。

まあこっち側もそのうち取れるのでは・・・と思っていたけど、エビの尻尾というのがなんか貧乏くさいというか、みっともなく感じる。

結局、ちょこっと継ぎ足して歯が治るなんて、甘い幻想だったんだな。勝手に期待し過ぎてしまったというのもあるが、過大に期待した分だけ失望も大きく、この状況に少し腹が立ってくる。

何がそんなに腹が立つかというと、また歯が折れるといった嫌な感触や絶望感を味わわなければならなかった事。不快感を増長させ、ムラムラと怒りがこみ上げてくる。

モヤモヤとしたイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

だいたいこう簡単に取れるような治療をしていいものだろうか。どう考えても、普通に生活していたらこういう結果になるよな。歯は飾り物ではないんだし・・・。

よくは分らないけど、もっと別の治療方法があったのでは・・・。欠けてみっともない状態の前歯を鏡で眺めながら思うのだった。

13、前歯がない不便さ

これで前歯の両方がとれてしまったので、前歯がない・・・というか、前歯が半分しかない状態に戻ってしまった。

見た目が悪くなるのは誰でも想像が付くと思う。でもまあ、別に電車の中で隣の人の前歯が欠けていようが、それはどうでもいいこと。そもそも黙っていたら分からない。

困るのが、人と話すときになる。普通に話している場合はそこまで目立たないが、笑ってしまうと、「えっ、この人、歯が折れてる・・・」といった感じで、驚かれるというか、表情が一瞬固まるのが見て取れる。

歯が欠けたイメージ(*イラスト:ごまめさん)

(*イラスト:ごまめさん)

小さな子供だったら、歯が半分しかなくても、あっ、生え変わりなんだ・・・ってな感じで、可愛いらしく見えるものだが、スーツを着たサラリーマンだと、可愛らしさはない。

むしろ悪いことしてるんじゃないの?とか、不摂生とか、不潔といった印象を与え、その後、距離を置かれるというか、色々な面で対応が悪くなる気がする。

でも・・・、驚かすつもりでやっている訳ではないのだが、笑顔だったのが急にひきつるような表情となって表れるのが、ちょっと面白く、後でそのことを思い出すと、思い出し笑いをしてしまう事も時々あった。

驚かすイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

で、結局のところ一番困るのが食事の時。自分でもビックリしたのだが、前歯がなくて一番不便に感じたのが、麺類を食べる時だった。

前歯があるときには全く気にしていなかったのだが、麺というものは必ず前歯でかみ切って、奥歯で砕いて食べている。前歯がないと噛み切れないのだ。ラーメンを食べに行って、食べることのできない自分にビックリしてしまった。

ラーメンの写真
ラーメン

その時は麺を冷まし、下の歯と上唇、或いは顔を少し傾け、前歯の横の歯を使って麺を切って何とか食べたが、それ以降は唇が火傷するし、汁が付いて口の周りの肌がただれるし、食べている様子がかっこ悪いので、冷たい麺を含めて食べることはしなかった。

ラーメンにレンゲは必要なの?油断しているとスープの中に沈むし、行儀よく食べる料理ではないし、別になくてもいいんじゃない。前歯が折れるまではその必要性を感じていなかったのだが、今回、そのありがたさを痛感することとなった。

でもレンゲが付かないうどんの場合はそうはいかない。しかもうどんは太く、歯ごたえがあるので、噛み切るのが大変。それにちゃんと噛まないと消化にも悪い。前歯がよくないと食べれない食べ物の代表格はうどんではないだろうか。今回前歯で不便な生活をしてみてそう思ったのだった。

ラーメンを食べるイメージ(*イラスト:こっそり出版さん)

(*イラスト:こっそり出版さん)

それ以外の普段の食べ物は、ナイフで切って小さくして奥歯で噛めば問題ない。もちろん骨付きのチキンなど、豪快に前歯を使ってかぶりつく物は食べられない。

マクドナルドなどのハンバーガーなどは、かぶりつくことはできないが、行儀よく手でちぎって食べれば問題ない。そうやって品良く食べる女性はたまに見かけるが、これはこれで口回りが汚れなくていいし、いつもと違って味もおいしく感じたりもする。

ただ、何段にもなったものや、鳥のから揚げを挟んだものは、油やソースで手が滑り、ちぎるのが大変。幼い子供が食べた後のような大惨事になってしまう場合がある。

ハンバーガーのイメージ(*イラスト:imaさん)

(*イラスト:imaさん)

暖かいもの、冷たいものともに、飲み物を飲んでいるときに歯が沁みるということはなかったが、こういうのは一旦沁みだすと、ずっと沁みて辛い思いをしそうなので、ビールなどをジョッキで豪快に飲むようなことはほとんどしなかった。

食生活に関しては、不便をし、困る場面が多々あったが、奥歯は問題なく使えていたし、前歯を使うことで沁みたり、痛みを感じたりするわけではなかったので、それなりに不便はしたけど、絶望感を感じるほど苦労はしなかったとも言えるだろう。

口がすぼむイメージ(*イラスト:Cranberryさん)

(*イラスト:Cranberryさん)

感覚としては、前歯が無いと、前唇に当たるものがなく、口がしぼんだ感じがする。これがもの凄く違和感を感じ、なかなか慣れなかった。入れ歯をしている人が入れ歯を外すと、口がすぼむのと似ているような感じかもしれない。入れ歯をしている人の気持ちがちょっと分かった。

後は、煙草を吸うのも不思議な感覚で、前歯の欠けている所にちょうどタバコがはまり、歯を閉じたままでタバコを吸ってられるのは楽なのだが、歯の間から煙がもくもくと逃げているのは、ちょっとみっともなくみえる。

良かった事は特にないのだが、あえて挙げるならナイフを使って食べる癖が付いて、少し行儀良くなった事や、歯に沁みるのが嫌だったのでビールなどを飲みに行かなっかたので、少し健康的な生活を送れ、またお金を節約する事が出来たぐらいだろうか。

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第2章 折れてしまった前歯
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