旅人の歯医者日記タイトル
旅人の歯医者日記

第2章 折れてしまった前歯
#2-8 差し歯になる心構え

1999年2~3月

削った歯は特に問題はなく、神経を生かしたまま差し歯にしていくことになりました。(*第2章は全19ページ)

広告

21、歯の神経

前歯を差し歯用の土台に削ってから、一週間が経った。今日は削ってから最初の診察日になる。

削った後は、ひどく痛むようなことはなく、日々の生活でも特に沁みたりすることもなく、歯磨きの時にも痛みを感じることもなかった。自分で判断する限りでは、何も問題ない。きっと順調な経過というやつで、神経を取るような事態にはならないはず。

歯医者のイメージ(*イラスト:Cranberryさん)

(*イラスト:Cranberryさん 【イラストAC】

歯医者を訪れ、先生に診てもらうと、見た感じでは良好との判断だが、内部の神経の詳しい状況までは分からない。

前回、豪快にドリルで削ったことで、かろうじて生きていた神経が、熱や振動によってお陀仏してしまったということもありえる。念のためということで、部分的なレントゲン写真を撮り、目視できない神経の状態を確認した。

もし神経に損傷があるようだったら、今日は麻酔を打って神経を取り除く治療をすると伝えられていたので、レントゲン写真の結果をドキドキしながら聞いたのだが、神経へのダメージ等は見られないとのこと。よかった・・・。ひとまず安堵。

安堵するイメージ(*イラスト:水雲さん)

(*イラスト:水雲さん 【イラストAC】

その後、先生から治療についての説明が続いた。先生が言うには、「まだこの歯は生きているので、この状態で安定するのなら、神経を生かしたまま差し歯を被せたいと思います。その為には神経の様子を見ながら治療を進めなければならないので、どうしても神経を取った場合よりも治療に長い期間がかかってしまいます。構いませんか。」とのことだった。

と、いきなり言われても、歯の神経がどういうものなのか、どういう役割をしているのか、よくわからない。まあ普通に考えるなら、生かしておいた方がいいに決まっている。何て言ったって、そりゃ神経だもん。大事に決まっているでしょ。というか、なぜそんな解り切った質問をするのだ。この質問の意図がよくわからない。

歯の構造のイメージ(*イラスト:KTKさん)

(*イラスト:KTKさん 【イラストAC】

でも・・・、奥歯を差し歯にした時は、もう既に神経が駄目になっていたので、選択の余地なく残っている神経を取り除いて差し歯をはめた。

今現在、神経のないまま1年半以上生活しているけど、ちゃんと差し歯はハマっているし、何も問題なく生活出来ている。そう考えると、歯の神経がなくても問題ないということになる。

もしかして歯の神経ってなくてもいいのか・・・。そんなに重要な役割をしていないのか・・・。簡単にいらないといった選択肢をしていいのか・・・。どんどんと疑問が膨らんでくる。

もちろん、神経があるのと、ないのとでは、ある方が正常な状態なので、ある方がいいとなるのだろう。なので、神経がないと、どういうことになるのか。健康面でどういった影響を与えるのか、生活にどう影響するのか、そのへんのデメリットをよく知りたい。

先生に「神経がないと何が困るのですか?」と、単刀直入に尋ねてみると、「無くても差し当たっては困りません。」という衝撃的な返事が返ってきた。

衝撃を受けるイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

ただ、神経を取ってしまうと、痛さとかを感じにくくなるので、歯の異変に気が付くことが遅くれ、気が付いたら手遅れという事態になりやすい。

また、歯に栄養がいかなくなるので、歯がもろくなったり、変色しやすくなるとのこと。まあ簡潔に言うなら、神経を取っても困らないが、歯の寿命が短くなりやすい。と、付け加えられた。

なるほどそうなんだ。神経ってもっと重要な役割をしているかと思ったが、そうでもなかったんだ。自分が思っていた神経像と違っていて驚いた。

メリットデメリットのイメージ(*イラスト:poosanさん)

(*イラスト:poosanさん 【イラストAC】

神経を取ることでのメリットもある。それは今後、神経が駄目になる心配をしなくて済むこと。今回の私のように強い衝撃を受けて折れたり、虫歯などで神経付近まで削った歯は、神経が不安定な状態になりやすいので、今後、神経が死んでしまう確率がそれなりにある。

問題なのが、差し歯や詰め物をしている場合は、一旦それを外さないと神経の治療をすることができないこと。特に完全に被せるタイプの差し歯は、この作業がとても大変になり、新しい差し歯を新調するお金もかかってしまう。なので、先に取ってしまった方が、今後の管理がしやすいというわけだ。

今の私の状況は、先生からしてみたら神経が過敏になったりと完全には安定していなく、判断に迷う状況のようだ。神経を取る選択をするなら様子見をしないで、さっさと差し歯の治療を進めていくことができるし、今後、神経が駄目になった時のことを心配しないで済む。

説明を聞くイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

先生の説明を聞く限りでは、どっちもどっちといった感じだが、でも先生の話す様子からは神経があった方がいいぞといったことを強く感じる。手っとり早いとか、面倒だからと取ってしまうのもよくなさそうだ。

というより、もし神経を抜くとなると、奥歯の時のように消毒に通う時間が面倒だし、何よりあの強力な麻酔をまた打つ事になる。あの麻酔は・・・想像しただけで、身震いがしてくる。できれば回避したい。

自信満々のイメージ(*イラスト:ぽにーさん)

(*イラスト:ぽにーさん 【イラストAC】

それに、先生が神経を生かしたまま治療をしたいと熱を込めて言ってくれると、自分のためを思って治療してくれている感じがして、何か安心できる。時間がかかるかもしれないが、先生を信じて、神経を活かす方向で治療を受けようではないか。

ということで、「神経を活かす方向で、お願いします。」と返事をすると、先生は満足そうに頷きながら、「分かりました。では次は2週間後に歯の状態を見せてください。」と言い、今日の治療は終わった。

22、差し歯連盟

やれやれ。これで前歯も差し歯になってしまうんだな・・・。奥歯にも差し歯があるので、一気に3本に増えてしまう・・・。

20代で3本の差し歯は・・・、やっぱり多い。50~60歳になったら、差し歯じゃない歯の方が少なかったりして・・・。そして80にもなると、総入れ歯ってやつかな・・・。そう考えると、まるで日本経済のように見通しが暗い・・・。考えれば考えるほど憂鬱になってくる。

ため息をするイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

差し歯って響きも、なんか年寄りっぽくて嫌なんだよな・・・。自分と同じぐらいの歳の人で付けている人なんてほとんどいないだろう。まして3本もあるなんて・・・。よく肌年齢とか、脳年齢なんて言い方をするが、私の歯年齢は20代にして、既に50代といった判定になるんだろうな・・・。

まあとりあえずは、これ以上差し歯を増やさないように気を付けなければな。今回のように歯が折れることはそうそうないだろうから、日々よく歯を磨いて、絶対に虫歯にならないようにしよう・・・。

line

若者の悩み、将来の不安といった感じで、職場の先輩などに、「この前、折れてしまった前歯なんですが、結局、差し歯になってしまうのですよ・・・。」と、ため息混じりにぼやいていたら、意外に周りに差し歯をしている人が多くてびっくりした。

差し歯のイメージ(*イラスト:よっとさん)

(*イラスト:よっとさん 【イラストAC】

「俺もサシバ入れているよ。部活の時に折ってしまって・・・」「何々さんもサシバを入れているよ。前に飲み会の時に話していた・・・」などという言葉は、とりあえず心の励みになり、勇気付けられる。

なんだ、そこまで年が離れていない人でも、差し歯をしている人が結構いるではないか。そんなに大袈裟にとらえるようなことではないかもしれない。同じ立場の人がいると、何か安心してしまう。

ちょっと若いかもしれないが、近いうちにそういった人たちの仲間入りってことだな。もう差し歯になるのは決まったこと。後はなるようにしかならないのだから、差し歯になってしまうと落ち込んでばかりもいられない。

差し歯同好会のイメージ(*イラスト:よっとさん)

(*イラスト:よっとさん 【イラストAC】

そうだ。ここは前向きに、若手のホープとして「サシバ同好会」とか、「サシバ連盟」などを結成するというのもいいかも。そして、この差し歯の縁で広がった人脈を利用してのし上がっていき、ゆくゆくはトップの座を・・・などと妄想が広がっていく。

まあ、そうそう都合よく人生は進んでいかないだろうが、差し歯を入れることをキッカケに、何か新しく生まれ変わってみるのもいいかもしれない。

旅人の歯医者日記
第2章 折れてしまった前歯
#2-8 差し歯になる心構え
2-9 差し歯の素材 につづく Next Page
広告
広告
広告