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旅人の歯医者日記

第2章 折れてしまった前歯
#2-9 差し歯の素材

1999年4月

治療は順調に進んで行き、差し歯の素材を選ぶことになりました。*現在と値段や仕組みが違います。(*第2章は全16ページ)

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23、経過観察

月日がたつイメージ(*イラスト:ハコさん)

(*イラスト:ハコさん)

早いもので、歯が折れてから2カ月以上が経った。治療の方は問題なく進んでいる。と言っていいのか、よくわからないが、間隔を開けて2週間に一回程度の頻度で歯医者に通い、神経の炎症や壊死がないかを確認してもらっていた。

こういう深刻な症状は、歯が折れてすぐに表れるのが一般的だが、強い衝撃を受けた場合には、じわじわと弱って・・・といった感じで、遅れて症状が出てくることもあるという。

もし神経に炎症が出て、歯の根っこの部分がダメになってしまうと、最悪の場合、歯が抜けてしまうそうだ。差し歯を付けても、土台となる歯が抜けてしまっては元も子もない。

歯が抜けるイメージ(*イラスト:よっとさん)

(*イラスト:よっとさん)

といっても、歯が抜けるというのは極端な場合で、いきなり明日、明後日にスッポンと抜けるといったことはなく、神経がダメになった後、ずっと放置していたらそうなるらしい。なので、神経がダメになったとしても、ちゃんと適切に処置をすれば歯が抜けるということはない。

問題になってくるのが、差し歯を入れた後に神経が死んでしまうケース。この場合、神経の除去や消毒といった治療を行うのには、せっかく取り付けた差し歯を壊して外さなければならない。当然、神経の治療をした後、また新しい差し歯を新調することになる。

それは二度手間というもの。お金や時間が二倍かかってしまうので、歯医者に通うのは面倒だが、今は我慢の期間といったところだ。

お坊さんの説法のイメージ(*イラスト:nendoさん)

(*イラスト:nendoさん)

幸いなことに今のところは問題はないようで、歯医者を訪れる度に「大丈夫です。悪い兆候は表れていません。」と、法事の説法のようなありがたい言葉をもらうのだが、よしよしという気持ちと、いつまでこの状態が続くのだろう。通うのが面倒だし、もう大丈夫なんじゃないの。そろそろ次のステップへ・・・といった気持ちが混ざっていた。

以前、奥歯の神経を取った時もそうだったが、こういった経過観察だったり、地道な消毒といった治療を受けるためだけに歯医者へ通うのは、なかなかしんどい。

もちろん、これは歯医者が儲かるためとかではなく、私のことを思っての大事な治療過程になる。先生とも相談して決めたことなので、面倒だなんて文句を言ってはいけない。

それは頭の中ではわかっている。分かっているのだが・・・、通うのだって時間や手間がかかるので、見た目に進展のない治療を受け続けるのは、サボりたい心との葛藤となり、色々と苦痛に感じるのだ。

歯のレントゲン写真のイメージ(*イラスト:あーやんさん)

(*イラスト:あーやんさん)

今日も足取り重く、憂鬱な表情で診察を受けにやって来たのだが、そんな私の表情を汲み取ったのか、予めそういった予定になっていたのかわからないが、詳しい神経の状態を確認するために前歯の部分的なレントゲンを撮った。

そのレントゲンを見る限り、歯が折れた影響、歯を削った後の影響はなく、神経の炎症の兆候も見られなかった。この結果に安心したのか、先生が「神経が落ち着いてきましたね。差し歯を入れる準備をしましょう。」と言い、次のステップに進むことになった。

24、差し歯の素材

差し歯のイメージ(*イラスト:よっとさん)

(*イラスト:よっとさん)

差し歯を入れる準備といっても私にできることはあまりなく、差し歯の素材を決めておくだけ。今日は先生が差し歯の素材についての説明してくれ、2週間後の次回までに考えておいてくださいと言われた。

他の人からあまり見えることのない奥歯と違って、前歯の差し歯はとても目立つので、その素材は慎重に選ばなければならない。

一般的な素材は3種類あり、一つ目は金属製で、世間でよく言う銀歯。奥歯の差し歯に入れているものと同じになる。

健康保険が適用され、断トツで安いのだが、これはいかにも差し歯という印象を与え、白い歯の中にあると、よく目立つ。

銀歯のイメージ(*イラスト:レウランさん)

(*イラスト:レウランさん)

奥歯など目立たない場所だったら、大きな口を開けたときぐらいしか他の人に見えることはないのだが、前歯だと普通に話していても目立ち、笑ったら銀歯がキラリといった感じになってしまう。

漫画などでは、キラリとした感じの歯は素敵に見えるように描かれていることもあるが、現実的には笑顔が素敵にみえることはなく、えっ銀歯がある・・・といった感じで、初対面の人にいい印象を与えない。

これは大袈裟に言っているのではなく、会話の際、人間って自然と相手の口元を見ているもので、口の中に目立つものがあると、いい印象を与えない。私自身、ここのところ前歯がない状態で過ごしているので、この事に関しては痛感している。なので、こういう目立つ素材は避けたい。

プラスチックのイメージ(*イラスト:mia69さん)

(*イラスト:mia69さん)

二つ目がプラスチック製。プラスチックの歯と聞くと、なんだか安っぽい模型といったイメージがしてしまうが、正式にはレジンと言われる歯科用プラスチックで作られる歯になり、これも保険の適用対象になる。

銀歯と違って色が白く、見た目的には普通の歯とほぼ変わらない。ただ、使っていくと変色して黄ばんでくるのと、強度の方に少し問題があって、欠けやすく、経年劣化しやすいとのこと。

以前、前歯の虫歯を治した時に、削った部分が小さかったのでプラスチックで埋めたのだが、そこだけタバコのヤニですぐに黄色くなってしまったことがある。プラスチックといえば太陽の光でもすぐに変色してしまうという素材。加工しやすく、値段が安い。そして強度の方もいまいちといった感じになるだろうか。

値段的には2本で3万円ぐらいで、前歯付近の差し歯を入れる人では、値段的にも見た目的にもプラスチックを選ぶ人が多いそうだ。

歯が欠けるイメージ(*イラスト:よっとさん)

(*イラスト:よっとさん)

三つ目はセラミック製で、現在一番いい素材になるようだが、なんと保険が効かなく、2本で17万近くもする。でもプラスチックに比べて変色が少なく、強度もあり、欠ける事が少ない。

セラミックというと、陶器とか、セラミックヒーターのストーブとか、トイレの便器とか、水場のタイルなどが頭に思い浮かび、今まで歯というイメージが全くなかった。

最初聞いたときは「えっ、セラミックの歯? 歯がセラミックで大丈夫なの・・・・。」ってな感じだったが、先生の話す様子からすると、歯の素材としてはとても優秀のようだ。

トイレのイメージ(*イラスト:かなぷさん)

(*イラスト:かなぷさん)

特に熱を入れて説明していたのが、プラスチックだとまた何年か後に新しいサシバに換えなければならないのに対して、何事もなければ半永久的に使える部分。

歯医者の人もお金に余裕があるなら、ぜひセラミックを入れたほうがいいですよ。最初の値段は高いですが、結果としてお得ですよ。と、テレビショッピング顔負けに薦めてくるのだが、いかんせん高い。これも保険で何とかしてくれよと言いたくなってくる。

というか、患者が無保険で得をするなら、健康保険会社も保険適用にした方が長い目で見ると得をするということになるのではないだろうか。う~ん、よくわからん。

25、魅惑の金歯

ちなみに、前歯の素材としてはあまり一般的ではないが、金歯という選択肢もある。「もう一つ、金歯って言うのもありますよ。付ける人はまずいませんが・・・」と、笑いながら先生が教えてくれた。

金歯って・・・、銀歯でも目立つのに、金歯だと強烈だろうな・・・。もし他人の口から金歯がいきなりギラリといった感じで見えたら、水戸黄門の印籠のように、「は、はぁ~、恐れ入りました~」などとひれ伏してしまうかもしれない。

とはいえ、実際に見たことがないからわからないが、成金とか、マフィアとか、あまりいい印象を感じないような気がする。

金歯のイメージ(*イラスト:レウランさん)

(*イラスト:レウランさん)

私的には、金歯は浮き過ぎて、下品な感じがするように思えるのだが、もちろんこれはあくまでも私の個人的な感想なので、金歯の艶めかしい感じが素敵という人もいると思う。

センスの違いというやつになるので、好みで付けたい人は付ければいいのだが、好みが合う合わない以前に、金といえば非常に高価なので、一般庶民にはとても手が出ない。

「ちなみに・・・、いくらぐらいするのですか・・・」と、その金額を聞いたらきっと頭を殴られるような衝撃を受けるのではないか、といった怖いもの見たさで、遠慮がちに先生に聞いてみると、意外な返答が返ってきた。

金相場のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

「ちゃんと調べてみないと正確には分からないけど、一般的な18金のものなら相場の影響もあるけど、たぶん2本で25万ぐらいかな・・・」

セラミックと同じで、保険が効かなく、値段もべらぼうに高い・・・と思ったのだが、セラミックの17万に対して、ちょっと高い程度。純金のものを使わない限り、そこまででもないようだ。

もちろん25万といえば私の一か月の給料以上と、高いには高い。でも、セラミックの歯に17万円出すならだったら、もうちょっと頑張って金の歯の方がいいのでは。セラミックよりも金の方が絶対的な価値があるし、お金の払いがいがあるというもの。

見た目的にはちょっと下品に見えるかもしれないけど・・・、金歯がキラリと輝いているというのも味があっていいかも・・・などと、金額を聞いた後には金歯が魅力的な選択肢に思えてきたりする。って、そう思えてしまうのは、金の魔力というやつか・・・。(*1999年の金相場は1g=1100円前後 ちなみに2021年は1g=6400円前後)

金塊のイメージ(*イラスト:かえるWORKSさん)

(*イラスト:かえるWORKSさん)

実のところ、金歯というのは、その見た目や存在、値段が強烈なので、そういった部分に視点がすぐにいってしまうが、そういったことを抜かして考えると、金という金属は差し歯の素材としてとても優秀だったりする。

これはあまり知られていない。というより、金歯を選択肢に入れる人はほぼいないので、話に聞くことがほとんどないからだと思う。

まず銀歯と違って金属アレルギーが起きにくい。そして加工がしやすく、劣化が少ない。強度もセラミックの比ではなく、銀歯の金属よりも柔らかく、ちょうど人間の歯と同じぐらいの硬さと言われている。そもそも金はその艶めかしい輝きとしての価値もあるが、金属として熱伝導率にしても、電子機器の材料としてもとても優秀だったりする。

それに金はご存知の通り、売買対象の金属となる。金歯も使用後に売却すれば、幾分お金が戻ってくることになる。

金歯のイメージ(*イラスト:よーよーさん)

(*イラスト:よーよーさん)

この他、金歯が口の中にあると、幸運の金歯といった感じで、日々幸せな気分になれるという人もいるかもしれない。気持ちの向上は値段のつけられないプライスレスの価値になる。とはいえ、もし取れてなくなってしまったりすると、もの凄くへこみそうではある・・・。

とまあ、結構メリットが多いので、奥歯などの目立たない場所に金歯を使うとという選択肢もいいかもしれない。もちろんお金に余裕があっての話だが。

26、素材に悩む

考えるイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

この日は差し歯の説明を受け、「次回までに考えておきます。」と、帰宅した。さてどうしたものか。それなりに長く付き合っていくものだし、値段が値段だけに色々と悩む。

まあ普通に考えるなら、値段的に手ごろで、色も違和感のないプラスチックが一番の候補になる。一番多くの人が選択しているというのもわかる。

ただ、気になるのが、欠けやすいという部分。いわゆる消耗品扱いとなり、何年かしたら新しいものに付け替えることを覚悟しなければならない。

まして前歯に2本並んで入れるので、数年後にどちらかが欠け、歯医者を訪れなければならないという可能性がとても高いように思える。

先のことを考えてもしょうがないのだが、それは面倒だ。なにより、あの強烈な麻酔注射を打つことになるのが嫌だ。

ってことになると、その必要のないセラミックの方がいいということになる。まあ、これを付けておけば間違いないということになるのだろうけど・・・、値段が17万円もする。

これがプラスチックに比べて少し高い程度ならまだしも、値段的に14万以上もの大きな開きがあるので、決断するのにためらってしまう。

一万円札のイメージ(*イラスト:Meeeさん)

(*イラスト:Meeeさん)

どうしようかな・・・。セラミックだと17万か。差額で考えても14万。結構な額だな・・・。薄給かつ、旅の資金を一生懸命貯めている私には、いくら物がいいといっても厳しい金額だ。いや、それなりに給料をもらっていたとしても、頭を抱える金額だよ。これ。プラスチックで我慢するか。

そう決めつつあったが、セラミックの半永久的に使えるという部分が、歯医者に通うのが面倒な私にとっては、どうにも魅力的に思える。これを入れておけば、差し歯に関してはもう歯医者に通わなくても済む。それは14万以上の価値があるのではないだろうか・・・。

それにタバコ吸いなので、前歯がタバコのヤニで真っ黄色になってしまってはみっともなくて、口が開けられなくなってしまう。まあこの機に禁煙すればいい話だが、今すぐに禁煙できるか自信がない・・・。

ってことで、やっぱりセラミックがいいな・・・。そうだ。一応、私は被害者になるんだよな。半分でも払ってもらえると助かるのだが・・・。と、事故の加害者である友人に相談してみたところ、「俺が全部払うから気にするな」との事。

交渉成立のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

赤の他人ならこういう場合は慰謝料とか、見舞金とか、それなりに大きな金額を賠償してもらえるのかもしれないが、一緒に遭難し、苦労した間柄。普段から一緒にツーリングにも出かけていることだし、今回の治療費を払ってもらって水に流すというのが、お互いにいい落としどころになるのかな。

ということで、治療費の当てが出来たので、17万近い大金を叩いて歯医者お薦めのセラミック製の差し歯を入れる事に決めた。

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第2章 折れてしまった前歯
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