旅人の歯医者日記タイトル
旅人の歯医者日記

第2章 折れてしまった前歯
#2-12 激痛

1999年8月~9月

親知らずが生えてきたことで口の中の環境が変わり、ほっておいたら激痛に苦しむことになりました。(*第2章は全16ページ)

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32、前歯の痛み

先生に親知らずの相談をしてから1カ月後、前歯の治療が無事に終わり、歯医者へ通う日々から解放された。

それから何事もなく2カ月が経ち、季節は夏になった。毎日うだるような暑さが続き、身体の方がまいってしまいそうになる。

夏とかき氷のイメージ(*イラスト:komachiさん)

(*イラスト:komachiさん)

こういう暑い時には、かき氷やギンギンに冷えたビールなど、体と歯に沁みるような冷たいものが欲しくなるが、まだ前歯の差し歯を入れてから間もない。前歯が沁みるようなことばかりしていると、神経が刺激され、何か悪さをしかねない。

長く辛い治療と、多額の治療費をかけて治った前歯。また歯医者にかかるのは嫌なので、今年の夏は歯に刺激を与えそうな冷たいものの摂取は、なるべく控えるようにしていた。

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少し斜めに生えていた親知らずの方は、もうほぼ生え切ってしまったようで、ここ2カ月の間は特に大きな動きはなかった。この歯に関しては、もし虫歯になったり、もの凄く邪魔になったら抜いてしまえばいいので、気楽に成長を見守っていた。

ただ、全く問題が無いわけではなかった。朝起きると、たまに歯がきしんだ感じがしていた。親知らずが生えてくる事によって他の歯並びがずれているような感触になるだろうか。

歯並びの悪い所に生えてきているのだからしょうがない。と、最初のうちはあまり気にしていなかったのだが、ここ最近は朝起きると、少し痛みを伴った違和感を感じることが増えてきた。

親知らずのイメージ(*イラスト:瑠香さん)

(*イラスト:瑠香さん)

痛さがあることは、歯並びが一生懸命整っている最中ってことになるのかな・・・。だとすれば、生えてくることによる一次的なもので、そのうち歯並びが落ち着いてきたらこういった痛みもなくなるだろう。

外に出っ張っている状態なのも、少し収まってくれればいいのだが・・・。痛いついでだしと、時々、外に出っ張っている部分を「ひっこめ」とばかりに、内側に強く押してみたりしていた。

まあ、気にするようなことではない。そのままほっておいたのだが、ある朝あまりに歯が痛くて目が覚めた。かなりの激痛がしている。しかもその痛さの源は、親知らずのある奥歯付近ではなく、差し歯のある前歯やその上の歯茎だった。

歯が痛むイメージ(*イラスト:さゆりむさん)

(*イラスト:さゆりむさん)

なぜ前歯がこんなに痛い・・・。単純に考えるなら、親知らずが生えてくることで差し歯の部分が圧迫され、内部の神経がうずき始めてきた、といったところだろうか。

もしかして頻繁に親知らずを押していたのが悪かったとか・・・。考えると、それも原因の一端のような気がしてくる・・・。

せっかく差し歯を入れてもらい、今までと同じように前歯が使えていたのに・・・。このまま酷くなって、差し歯の治療をやり直しといった最悪な展開になるのだけは、是が非でも避けたい。

この強烈な痛さを考えると、すぐに歯医者に行ったほうがいいな・・・。今なら原因となっている親知らずを抜いてしまえば、痛みが引き、万事解決しそうだ。

思い付いたイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

よしっ。早速、今日歯医者に行って診てもらおう。このままほったらかしにして、差し歯の治療のやり直しといった憂鬱な展開になりでもしたら、奥歯に穴が開いた時のように「あの時歯医者へ行っておいたなら・・・」と、後悔してもしきれないことになる。

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問題は、いつ歯医者に行くか。後で白い目で見られることを覚悟して、会社を遅れていくか。忍法・雲隠れの術を使って早退するか。無難に会社が終わってから急いで行くか。さて、どうしたものか・・・と、起きてから考えていたのだが、しばらくすると痛みが引いてしまった。

忍法のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

さっきまであれほど痛かったのに・・・。実は一時的なもので、大したことはなかったとか。よくはわからないが、でもまあ・・・、痛みが引いたのなら急いで行く必要はないな。

白い目で見られながら午前休もらうのも嫌だし、気配を消しながらコソコソと早退するのも気を遣うし、当たり前だが給料もちゃんと引かれる。できれば避けたい選択肢だ。

この状態なら会社が終わってからでもよさそうだ。とはいえ、歯医者の診察時間内に間に合わせないといけないので、終業時間に間に合わせて仕事を終わらせたり、終わっても急いで電車に乗って・・・と、これはこれでハードな選択肢になる。

もし早退しても波風が立たない状態だったら、早退させてもおう・・・といった感じで会社に行ったのだが、仕事をしたり、人と話したりしているうちに気が紛れたのか、歯が痛むことが全くなかった。

仕事のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

おかげで、午前中はまだ歯医者に行こうという気持ちはあったのだが、午後になってみると、歯が痛かったことなどすっかりと頭から消えてしまっていた。

仕事が終わる間際になって、そういえば歯が痛かったんだっけ・・・と思い出すものの、今更感が頭の中を占めていた。今から急いで歯医者に行くのが面倒くさい・・・。

ここで持ち前の持病「歯医者嫌い病」が発生し、「今日は疲れたし、今日でなくてもいいか。そんなに悪くはないだろう。もしかして治ってしまったのかもしれないし・・・。」などと先送りしてしまった。

33、激痛

歯痛のイメージ(*イラスト:かぬれさん)

(*イラスト:かぬれさん)

次の日の朝、「うっ、歯が痛い・・・。また今日もか・・・。」と、再び前歯の痛みで目が覚めた。しかも、明らかに昨日よりも痛さがパワーアップしている。

昨日は、朝起きたときには激しい痛みがあったものの、しばらくすると収まり、その後は全く痛みを感じることがなかった。

なので、一時的に大きな症状、例えるなら地震のように蓄積された大きなひずみが一時的に表れただけで、無理に歯を押したり、刺激を与えなければ徐々に収まっていくだろう・・・と楽観視していたのだが、そうそう都合のいい展開にはなってくれなかった。

それにしても痛い。前歯付近が腫れているような感触もする。大丈夫だろうか・・・。洗面所の鏡の前に行き、前歯を見てみると、歯茎が少し腫れていた。昨日は腫れていなかったので、昨日よりも明らかに症状が悪化している・・・。

先送りのイメージ(*イラスト:bBearさん)

(*イラスト:bBearさん)

また先延ばしにしてしまったせいだな・・・。毎回毎回反省するのだが、どうも私の歯医者嫌いというか、歯医者行きたくない病は治らない。今後のためにも、歯医者行きたくない病から治療してもらったほうがいいのかもしれない・・・。

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この激しい痛さからすると、前歯の神経が炎症しているのだろう。もし前歯の神経が死んでしまうような事態になったら、あの気絶しそうなほど痛い麻酔を打たれ、せっかく付けた差し歯も外し、神経を取り除かなければならなくなる。そうなると、時間もお金も相当にかかる。それは何が何でも避けたい。

今日は土曜日。確か土曜日は午前中だけやっていたよな・・・。予約で混んでいるかもしれないが、緊急事態だ。無理を言って診てもらおう・・・。

確認のために診察券を見たら、なんと今日、第二土曜日はお休み・・・。なんで今日やっていないのだ・・・。歯医者の馬鹿野郎・・・。いやいや、昨日、行くのが面倒だと行くのをやめた私が悪いのだ。これこそまさに自業自得という展開。

自業自得のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

月曜日は必ず歯医者に行こう!と心に誓い、今日は大人しく過ごすことにしたのだが、昨日と同様に起きてから時間が経つと、痛みが引いてきた。

また一時的な炎症か・・・。よかった・・・と安堵するものの、今日は腫れている歯茎の突っ張った感触がずっと続き、触ったり、口を動かしたり、食事の際などに、それなりの痛みを感じていた。

土曜日は比較的普通に過ごせたのだが、日曜日になってみると事態は最悪だった。同じように歯が痛くて目が覚めたのだが、今日は起きた後もなかなか痛みが引いてくれない。じっとしていても、ずっきんずっきんと歯が痛み、それが頭に響いてくる。

虫歯の痛みだと、何かきっかけがあってその箇所が痛み、徐々に収まっていくといった感じなのだが、神経の根元が炎症しているこの痛みは、ダラダラと続き、痛さも口全体に、もや~とした感じで広がる。

歯が痛く深いなイメージ(*イラスト:K-factoryさん)

(*イラスト:K-factoryさん)

これがなかなか厄介で、どこが痛いとはっきりと分かればまだ対処の仕方とか、その箇所に神経を集中させて軽減することができるのだが、痛みが幻術のように口全体に広がっていると、どうにも収拾がつかない。この状態が不快極まりなく、ジッとしているとイライラしてきてしょうがない。

食事をしようとすれば、口を開けると歯茎が引っ張られるので、ピリピリとした感じで強烈に痛いし、前歯で物を噛もうものなら激痛が起こるので、食べることもままならない。

ジッとしていても不快な痛みでイライラするし、動けば頭に響いて痛いし、食べると激痛が走るので、食欲もわいてこない。生きているのが嫌になるぐらい最悪の状態だ・・・。このままでは歯の痛さで発狂してしまいそう。

歯痛のイメージ(*イラスト:阿部モノさん)

(*イラスト:阿部モノさん)

なんとか不快な一日を耐え、「明日は必ず歯医者に行こう。そうすればこの痛さから開放される。」と床に就いたのだが、ここからもまだ試練が続くことになる。

寝てしまえばこっちのもの。といった目論見だったのだが、そうは問屋が卸してくれなかった。起きている時は何かしているので、痛みをそれなりにごまかせていたのだが、寝ているときには無防備になり、痛さも倍増。夜中に何度も痛さのために目が覚め、その度に鎮痛剤を飲んで痛みを和らげなければならなかった。

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寝たり、起きたりを繰り返し、月曜日の朝になってみると、激しい頭痛を伴っていた。もはや歯の痛さがどうのこうのというレベルではない。歩くたびに振動で歯が痛み、頭も痛い。この痛みから早く脱出しなければ気が狂ってしまうかも。いや、もしかしたら死んでしまうかも。

歯痛でめまいがする状態のイメージ(*イラスト:イラストスターさん)

(*イラスト:イラストスターさん)

もう会社で白い目で見られるとか、歯医者が嫌いなどと言っている場合ではない。朝一で歯医者に行こう。

すぐに会社に電話をして遅刻することを・・・。って、よく考えると、午後から行くのも面倒だな。これだけ歯が痛いと仕事どころではないというか、会社に行く気力もわいてこない。

それに半日行くぐらいなら休んだ方が効率がいい。後で有給扱いにしてもらおう・・・。と、「頭痛が酷くて動くこともままなりません。申し訳ございませんが本日休ませてください。」と、休む旨の電話を入れた。

朝食を食べる元気もなく、恐る恐る歯を磨き、歯医者が始まる9時半に合わせて歯医者に向った。この歯医者までの道のりの長かった事。途中何度も歩けないような痛みに襲われ、その度に電信柱や壁にもたれて休まなければならなかった。

なんてしんどいのだろう・・・。昨日からほとんど寝ていないし、食べていないせいもあるんだろうな・・・。身体がフラフラする。

ふらふらになって歩くイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

あ~しんどい。ちょっと休憩。これって救急車を呼んだ方がいいのかな・・・。って、救急車で歯医者へ連れて行ってもらえるのだろうか?さりげない疑問が頭に浮かぶのだが、よく考えなくてもタクシーを呼んだ方が手っ取り早い。でもまあ後400m。もう少しだ。頑張って前に進もう。

歯の痛みはほっておいて治るものではない。ほっておくとしんどくなるだけなんだ。今まで何度も後悔している気がするのだが、今回ほど身に沁みたことはない。改めて心に刻みつつ、ゆっくりと歯医者への道を進んで行った。

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第2章 折れてしまった前歯
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