旅人の歯医者日記タイトル
旅人の歯医者日記

第2章 折れてしまった前歯
#2-15 振り出しの虫歯(前編)

1999年12月~2000年1月

親知らずを抜歯したことで歯の痛みは和らぎ、念願のユーラシア大陸横断に向けて準備を始めました。(*第2章は全16ページ)

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39、歯医者からの葉書

12月のイメージ(*イラスト:海辺のあひるさん)

(*イラスト:海辺のあひるさん)

最後の診察を終えてから3ヵ月が経ち、季節は12月となった。月日の経過と共に、前歯付近にあった痛みや、ひきつった症状はどんどんと和らいでいき、今ではそういった違和感はほぼなくなった。

どうやらこの結果から考えるに、無理を言って親知らずを抜いてもらってたことは、少なくとも間違いではなかったようだ。

今ならアフターサービスってな感じで、前歯の神経の処置を行い、歯医者側の負担で差し歯の交換をしてもらえるのだが、もう神経は安定したみたいだし、痛みもないし、わざわざ処置をしてもらわなくてもよさそうだ。

とはいえ、一時的によくなっただけで、後々再発するかもしれない・・・。そういったリスクは残ったまま。今のうちに神経の処置をしておけば、そのような心配がなくなるし、何より今なら費用がかからない。

リスクの天秤のイメージ(*イラスト:erimaruさん)

(*イラスト:erimaruさん)

やるなら今でしょ。といった考え方もできるのだが、再び長々と歯医者に通うのは嫌だし、神経の処置は痛かったり、しんどかったりと辛そう・・・。そう考えると、積極的に治療を受けたいとはならないものだ。むしろ、できれば回避したい。

もし悪くなってしまったら、その時は運が悪かったと観念することにしよう。なすがままに、Let it be.というやつだ。ということで、前歯に関しては、もう「治療は終了!」と、私の中で結論が出ていた。

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口の中のもう一つの懸念材料となっているのが親知らず。前回抜いた反対側にある左上奥歯の親知らずは、今度は自分の番だと認識したのか、歯の並びにゆとりができたのか、少しずつ成長してきている。

今のところ極端に斜めに生えていなく、他の歯並びにも干渉をしていないので、特に問題は生じていない。ただ、前回のように突然前歯に問題が飛び火する可能性があるので、何か予兆が現れたら、即抜いてもらうことにしよう。

親知らずが生えるイメージ(*イラスト:mu-muuさん)

(*イラスト:mu-muuさん)

下の親知らずは、歯茎の中に完全に埋まった状態で、真横を向いている。レントゲン写真を見ると、いつ破裂するかわからない爆弾のような存在に思えるのだが、先生が言うにはこういう親知らずをしている人は多く、生えてくる人はほとんどいないとか。

でも万が一生えてきたり、炎症を起こしたりすると、切開手術を行い、取り出すなりの処置をしなければならないとのことなので、私の生存中は大人しくしていてくれることを願うしかない。

気にしてもどうにもならないので、気にしないようにしよう。なるようにしかならないけど、ならないようになるのが一番。上の歯の時ように、気にしていたらすくすくと生えてきたというような事になっては困るので、極力歯に関しては気にしないように過ごしていた。

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話は変わるが、子供の頃から旅が好きだった私は、小学生のころから世界を旅することに憧れていた。夢は世界一周なんて人に言っていたものだ。

世界一周のイメージ(*イラスト:Nakasaさん)

(*イラスト:Nakasaさん)

そんな旅好きな子供は、中学生になると一人で日帰りの旅をするようになり、高校に入ると青春18きっぷで日本を旅をするようになり、そして大学生になると海外を一人で旅して・・・と、徐々に旅のスケールをステップアップさせていた。

大学時代には航空会社のキャンペーンチケットで念願の世界一周を行ったのだが、それはあくまでも飛行機で地球を一周回っただけ。子供の頃に思い描いていた世界を一周する旅とはちょっと違った。

その飛行機での世界一周を終えてからは、世界を旅すること、ぶつ切りのような旅ではなく、連続した旅を行いたいと強く思い始めた。そういった旅の象徴が大陸横断の旅になる。

日本はユーラシア大陸の東端に位置している。この世界最大のユーラシア大陸の西の端へ向かって横断する旅をできたならどんなに素晴らしいことだろうと思い始め、大学時代から実現に向け計画を温めていた。

国土地理院地図 世界地図

国土地理院地図を書き込んで使用

年をとればとるほど日本に戻ってから社会復帰がしにくくなるので、やるなら早い方がいい。いつ出発しよう。出発にあたって懸念の一つとなっていたのが、前歯の問題。

せっかく意を決して旅に出ても、旅の途中で歯が痛くなり、止む無く帰国・・・なんていうのは最悪だ。そんな中途半端な旅はしたくないので、出発をいつにするのか決めかねていた。

でも、もう大丈夫。無事に解決したので、いつ旅に出発しても大丈夫。ということで、仕事をやめ、1年にも渡るユーラシア大陸横断への準備を始めることにした。

ハガキが届くイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

そんな旅の準備をしているさなか、歯医者から一枚の葉書が届いた。滞納分の請求書か。先送り大好き人間なので、葉書や封書が届くと、不吉なことしか思い浮かばない。

でも歯医者に関しては全部払っていたはず。トラブルもないはず。なんだろう・・・と葉書を見ると、定期検診のお知らせだった。

歯医者に通っている期間は2年7ヵ月と長いのだが、長い間隔を開けずに次の問題が起きていたので、こういった定期健診の葉書が自宅に届くのは今回が初めてだった。

定期健診か・・・。長く通っていると、色々と歯についての予備知識もついてくるというもの。プラークという歯垢はなるべく定期的に取ったほうがいいんだよな。固まって歯石になると厄介なことになる。

先に予防として歯医者に行くのと、虫歯ができてから何度も治療に足を運ぶのとでは、前者のほうが負担が少ない。何より時間に縛られない。それは身に沁みて理解できている。

歯のクリーニングのイメージ(*イラスト:バターさん)

(*イラスト:バターさん)

最近では毎日ちゃんと歯を磨いているので、虫歯は見当たらない。健康のため、いや、旅行資金を節約と、17万円もした差し歯がタバコのヤニで黄ばむのが嫌で煙草をやめているので、歯が白く感じる。でも、転ばぬ先のなんとやら。備えあれば憂いなし。

今回の旅は1年以上の長旅を予定している。旅をしている最中は、歯のケアが日常よりもおろそかになりやすい。万全な状態で旅立てば、帰国したときにダメージも少ないだろう。

それに歯のクリーニングは慣れると結構気持ちいいし、長い期間通ったので、歯医者もちょっと懐かしい。時間がある時にでも歯のクリーニングに行っておこう。

微笑ましいイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

とうとう私も歯の健康を気遣うようになったんだな・・・。これも長年歯医者に通い続けた成果ってやつなのだろう。自ら進んで歯医者に行こうとする自分の成長を微笑ましく思ったのだった。

40、嫌な予感

パソコンのネットワークのイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

インターネットの普及とともに、最近では何でもかんでもコンピューター管理が進んでいる。コンピューターにデーター入力してしまえば、管理が楽だし、一度に多くの処理もできる。コンピューター様様といった感じだ。

とはいえ、その分、人間が機械やコンピューターの理屈に振り回されている感じがする。その最たるが、2000年問題。

1999年から2000年に年号の桁が変わると、日付がリセットされ、コンピューターの計算がバグを起こすかもしれない。オンラインで結ばれている色々なものが動かなくなるかもしれない。などといったコンピューターのプログラム上の問題が指摘されている。

コンピュータートラブルのイメージ(*イラスト:海辺のあひるさん)

(*イラスト:海辺のあひるさん)

旅をしている最中に、預金が倍に増えていたらうれしいのだが、0になってお金を下ろせない状態になると困るし、飛行機などが止まってしまい、各地の交通網が大混乱になりにでもしたら大変だ。日本にいれば対処のしようもあるが、海外だと致命的なダメージを追うかもしれない。

連日この問題が大きく報道されていると、この2000年問題が起きるのが凄く不安になってきて、旅立ちは仮に大規模な2000年問題が起こっても一段落していると思われる1月後半にすることにした。

カレンダーを見ると、中国の旧正月が2月上旬なので、その少し前に合わせて最初の訪問地香港を訪れるのがいい。ということで、ユーラシア大陸横断の旅立ちを1月20日に決め、飛行機の予約をとった。

歯医者へは出発直前の1月中旬に行き、歯を診てもらったり、クリーニングをしてもらおう。そうすれば万全の状態で旅立てる。そう思っていたのだが、正確には実現できなかった。

爪楊枝のイメージ(*イラスト:みくろうさん)

(*イラスト:みくろうさん)

葉書が届いた一週間後。夕食を食べていると、奥歯の歯と歯の間に食べかすが挟まってしまった。なかなかしぶといやつで、爪楊枝を使ってなんとか取れた。

しかし、その食べかすをとった後もどうもすっきりとしない。まだ残存感がある・・・といったような変な感触で、ちょっとムズムズする。

なんでこんなにムズムズするんだ・・・。更に爪楊枝で突っついていたら、今度は血が出てきた。ちょっといらい過ぎてしまった。いらわないようにしよう・・・、我慢、我慢。

ほっておけば治るだろう・・・と思うのだが、性格的なものなのか、この後もムズムズ感が気になってちょくちょく舌や手でいらっていた。

そして1時間が経ったが、やはりなんか変な感触で、少し痛痒い。今まで経験した歯の痛みはどれもピリッとした痛さ。例えるならタバスコのような感じで、音楽で例えればソプラノのような痛さだったのだが、今回のはジーンとした痛さ、音楽で例えればコントラバスのような痛さだった。

コントラバスのイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

騒ぐような痛さではないのだが、逆にそれが不安になる。しかもその痛い歯は一番最初に治療して神経を抜いた歯。数ヶ月前に抜いた親知らずの隣の歯だった。

親知らずを抜いたことで、やはり隙間から食べかすが入り虫歯になったのだろうか。もしそうだとして、神経のない歯が痛いというのはどういうことだ。もしかしたらかなりの重症って事なのか。銀歯を外してみたら、中が腐敗していて、えらいこっちゃな状態になっていたりして・・・。そう考えると不安というか、恐怖。

もう飛行機の予約を入れてしまったので、歯医者に行くなら早く行かないと出発に間に合わない。すぐに歯医者に行こう。年の暮れの忙しい時期、久しぶりに歯医者の自動ドアの扉を開けた。

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