旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とわんこの日々
世田谷編 2003年 Page15

ワンコのいる日常と旅についてつづった写真ブログです。

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20、行きたい時が行き時(2003年8月中旬)

飲み会のイメージ(*イラスト:水雲さん)

(*イラスト:水雲さん)

お盆の話になる。暇をしている大学時代のバイク仲間が集まって、近況報告を兼ねた飲み会を行った。

その席で友人が、「バイク乗り復活おめでとう。どうだ。ありきたりなツーリングではなく、旅を満喫できるようなツーリングに出かけないか。ちょっと遠めで。泊りがけで。」と誘ってきた。

この友人は、バイクを走らせるために箱根付近にはよく行くものの、それ以外へは滅多に行かない典型的な走り屋系のバイク乗り。乗っているバイクもレース用バイクを市販化したNSRと、筋金入り。

世間では夏休み真っ盛り。せっかくの夏だし、たまにはバイクで思い出に残るような旅をしたいな・・・。でも一人ではどこへ行っていいのやら・・・。と思っていたようで、再びバイクに乗り始めた旅好きの私に話を持ち掛けてきたようだ。

ひらめくイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

「そりゃいいな。どうせ泊りがけで行くなら普段行かないような場所にしよう。バイク復活記念だし。」と、ほろ酔い気分でどこか面白そうな場所は・・・と検討し、私の中でいつか行ってみたい旅行プランの一つ「佐渡島を一周っていうのはどう?」と提案してみた。

船に自分のバイクを載せて離島をツーリングする。なかなかできないからこそ魅力的だ。ちょっと佐渡は遠く、手間や時間がかかるけど、その分、頑張って訪れるだけの価値があるはず。それに一人じゃない。連れがいれば、その道のりも短く、手間や負担も軽く感じるはず。

国土地理院地図

国土地理院地図を書き込んで使用

友人はすぐに「新潟の沖に浮かんでいる島だよね。」と、佐渡島の場所は理解した。しかし、続けて「佐渡ってめちゃくちゃ遠くないか。もっと近場でいいところはない?」と言ってきた。どうやら日光よりも少し遠いぐらいを想定していたようだ。

「新潟まで200キロちょっとだし、そこから船に乗るだけだし、島もそんなに大きくないし、思っているほど遠くないぞ。それにある程度走るぐらいじゃないと旅は楽しくないし、満足感が得られないぞ!」と、旅の上級者らしく自信満々に答えると、「佐渡ってそんなに遠くないんだ・・・。そうだね。じゃ行こうかな。離島も面白そうだし・・・」と、前向きにツーリングの話が進んでいった。

とはいえ、いきなり「佐渡へ行こう」となっても、学生ではないのでスケジュールが・・・。夏休みはもう消化してしまったし、この時期は他の人との兼ね合いで有給が取りにくいもの。

考えるイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

さてどうしたものか。休みが長く取れる別の機会にするか。秋には連休があるし・・・。それとも目的地をもっと手軽な場所、日光とか、飛騨高山にするとか・・・。いや、一度思い立ったら無性に行きたくなってしまうのが旅人の性(さが)。

「鉄は熱いうちに打て」「欲しい時が買い時」というように、行きたいと思った時が行き時というもの。この機を逃したら次に佐渡へ向かって風が吹くのはいつになるかわからない。

風見鶏のイメージ(*イラスト:K-factoryさん)

(*イラスト:K-factoryさん)

それに、時間を空けると面倒になってくるというもの。特に友人の方が「やっぱり遠いから・・・」などと言いかねない。盆期間をフル稼働で働いたことで、来週末の土日は連休をもらっている。飲んで気が大きくなっているのもあって、それをフル活用して佐渡へ行こうと、この場で決定した。

後で友人に聞くと、地理には疎いので距離感がいまいち分からなく、頭の中では新潟はもっと遠そうな感じがするけど、地理感の強い私の話しぶりからそこまでではなさそうだし・・・。船に乗るのが楽しそうだし、一人ではなく、旅慣れた人間と一緒だし・・・、まあ何とかなるだろう。と、酔っぱらっているのもあって、OKの返事をしてしまったらしい。

家に帰ってから地図を見たら、新潟まで200キロちょいと言いながら300キロあるし、新潟からも船で結構時間がかかるし・・・と、こんなに遠いとわかっていれば、その場で「うん」と返事をしなかったよ。おまえの距離感が異常なんだよ・・・と愚痴をこぼしていた。

やれやれなイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

この時代はまだ便利なスマホがなく、適当感が溢れていた時代だった。もしその場でスマホを利用して地図を見たり、距離を検索していたら、佐渡までの距離におののいて、この話は実現しなかったかもしれない。

21、佐渡への道のり(2003年8月下旬)

国土地理院地図

国土地理院地図を書き込んで使用

旅の始まりは仕事を終えた金曜日の夜。深夜に友人と落ち合うと、旅費節減の為、延々と東京から国道17号を新潟に向けて走った。

高速を使えばいいのに、貧乏っぽい。いやいや、節約志向の旅は使命感やら達成感やらがあって、それはそれで楽しいのだ。

それに一般道だと情緒を感じながら走ることができるし、高速代がかからない。なので、私のバイク移動の第一選択肢は一般道となる。ただ、時間と体力を多く消費することになるので、必要に応じて高速道を使ったりはする。

移動を簡略化しては旅は面白くない。というのが、ユーラシア大陸横断をしてきた私の哲学になるのだが、その崇高なる哲学に付き合わされる友人はたまったものではない。

こんな長距離を一般道で移動するなんて、正気の沙汰ではない。面倒で、大変なだけ。気は進まないが、私が張り切って走るので、付き合うしかない。きっと走りながら私に声をかけたのは失敗だった・・・と思ったに違いない。

やれやれなイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

ということで、旅は道連れ世は情けってなもので、友人と深夜の17号をひたすら北進していった。深夜の道は交通量が少ないので走りやすくはあったが、太平洋岸から日本海岸までの330キロという長い道のりは走り応えがあった。

でも、「旅のよい道連れは旅路を短くさせる (ウォルトン)」にあるように、仲間がいれば長い旅路もそんなに苦にはならなかったし、苦労した分だけ目的地、新潟港に到着したときの喜びも大きく、次のステップ、佐渡への船旅への期待度も上がるというもの。

佐渡ツーリング 新潟港に到着の写真
新潟港に到着

新潟港に到着したのが、午前5時少し前。フェリーの出発は6時だから、計算通りになかなかいい時間に到着したものだ。

フェリーに積める車やトラックのスペースに限りがあるように、バイクにも限りがある。しかもバイクの方が積める場所が限られるので、載せられる数は少ない。

8月終わりとはいえ土曜の朝一の便。どこかのツーリングチームが佐渡ツーリングを企画しているかもしれない。あるいは我々のような旅が大好きなバイク乗りがわんさかと来ている可能性もある。

Sold Outのイメージ(*イラスト:イタチ◎さん)

(*イラスト:イタチ◎さん)

「前のお客様でちょうどバイク用のチケットは売り切れてしまいました。次の便にしてください。」ってな事になったら最悪だ。まずは先に乗船チケットを確保しておこう。その後にバイクに乗ってコンビニを探して朝食をとったり、ガソリンの給油をすればいい。

何はともあれといった感じで、急いでチケット売り場を訪れたのだが、チケット売り場には長い列が・・・出来てはいなく、ガラガラだった。

窓口を訪れても、すんなりとバイクの乗船券を購入できた。これはこれでうれしいのだが、こんなはずでは・・・と、何か当てが外れた気分。

まあ張り切って何かを行っているときは、周りの人間も自分と同じように考えていたり、同じ方向に進んでいるように思えてしまうもの。ちょっと入れ込み過ぎていたようだ。

モヤモヤと考えるイメージ(*イラスト:ちゃむまっぴーさん)

(*イラスト:ちゃむまっぴーさん)

それにしても・・・、バイクの乗船代というのは車に比べると安いものの、往復として考えると、そこそこの額になってしまう。

しかも排気量で料金が区切られているので、1100ccの私は250ccに乗る友人よりも多く払わなければならなかった。隣で友人が割引価格の様な値段を払っているのを見ると、ちょっと嫌な感じ・・・。

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乗船券を購入する時に、「バイクは一番先に積みます。車が並んでいる列の一番前で待機していてください。もうすぐ積み始めます。」と言われた。

友人のバイクは燃料タンクが小さく、燃費もあまりよくない。乗船券を購入後に給油する予定だったので、ガソリンの残量が少し心配な状態。コンビニに朝食を買いにも行きたいところだが・・・。どうしよう。

急いで給油しに行くか。ちゃっちゃと行ってくれば間に合いそうだ。しかしスタンドの場所がはっきりわからない。

もたついてしまい、戻って来てみたら「もう乗れません」ってなことになっても嫌だしな。しょうがない。無事に船に乗ることができた。それでよしとしようではないか。

佐渡ツーリング フェリーにバイクを固定する写真
壁に固定されるバイク

他にバイクはいなかったので、我々が一番手で船に乗船した。船にバイクで入っていくのは変な感じ。しかも「滑りやすいので、転ばないように注意してください」と係りの人が言っていた通りで、床がでこぼこしてとても走りにくい。

佐渡へ向かったものの、フェリー内で転倒し、佐渡を走れなかった・・・なんていうのは、話のネタとして聞く分には面白いけど、本当に起きたらシャレにならない。慎重に走り、係の人に誘導する一番前の隅っこに向かった。

バイクを停めると、係員がテキパキとロープでバイクを固定していった。途中で倒れないように壁に固定するそうだ。その様子をちょっと眺めていたが、乗用車の乗船が始まったので、ここにいては邪魔だ。上部の船室に上がることにした。

佐渡ツーリング 船上から新潟港を眺める写真
順番を待つ車の列

客室に入ってみたものの、出航前のフェリーは上下に揺れるので落ち着かない。更に上層へ登って屋上の甲板で港の様子を眺める事にした。

しばらく眺めていると、乗船の為に並んでいた車の列が徐々に少なくなっていき、列が消滅すると乗船口が閉じられた。

そしてボォ~ンと大きな汽笛が鳴り、出港。煙突から煙が一段と上がり、エンジンが勢いよく動き始め、その振動が体にも伝わってくる。

警察車両のイメージ(*イラスト:楠 英浩さん)

(*イラスト:楠 英浩さん)

船はゆっくりと岸を離れていった。ちょうどタイムリーな日に来てしまったようで、お隣の貨物用埠頭は早朝だというのに物々しい警備が敷かれていた。

なにやら今日は制裁問題で揺れる北朝鮮船、万景峰が新潟港に入港するとかしないとか。動く船からパトカーや機動隊などの警備車両が沢山停まっている様子が見えた。

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港を出てしまうと、特に代わり映えのしない風景となり、そのうち飽きて船内に入ることにした。腹減ったな・・・。食堂に寄ってみたものの、営業は30分後とのこと。そんなに待てない。腹が減ったけど・・・、それ以上に眠い。昨夜から走りっぱなしだからな・・・、寝るか。

横になるイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

二等船室に降りてみると、そんなに混んでいなく、空いたスペースを見つけてごろんと床に横になった。最初のうちは何時もと違う感覚の揺れが気になったが、すぐに深い夢の世界へ旅立っていった。

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