旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とわんこの日々
世田谷編 2005年Page8

世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。

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12、人生初のバイクレース(2005年7月4日)

今日はSLy チャレンジバイクレース第3戦の開催日。我々にとっては2005年の2戦目になり、そして私のデビューレースとなる。

スクワットをするイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

先日行われた走行会で得た経験と筋肉痛を基に、毎日寝る前に腕立てやスクワット、そして握力の筋トレを行い、普段、自分のバイクに乗るときには、サーキットのコーナーリングのイメージを頭の中で描きながらバイクを傾けてみたりと、できる範囲の準備してレースの日を迎えた。

スポーツランドやまなし レース前のチーム
レース前のチーム

今回は3時間耐久レース。1か月前の走行会に一緒に参加した後輩Iと、名古屋でレース活動している後輩Eも出場してくれることになり、私を入れた新人3人に、今回は少しだけ走れればいいといった友人の3.5人チームで参加。

その他にも「楽しそうですね。走るのは無理ですけど、ぜひ手伝わせてください。」と、後輩Aも駆けつけてくれ、かつてないほどチームに活気がある。

レースの方も、前回の1時間耐久の時は12台しか出走していなかったが、今回は3時間耐久ということで倍の24台と増え、パドックはライダーや家族で賑わっていた。やっぱりレースは賑やかなほうが楽しい。

スポーツランドやまなし レース前のパドックの様子
レース前の様子

このレースには予選というものはなく、グリッド(スタート順)はクジで決めている。レースをみんなで楽しもうというサンデーレースなので、こういったところはほのぼのとしている。

で、なんと今回はクジ運がよく、2番手からのスタート。第一ライダーを務める後輩Eは名古屋でレース活動をしているので、ポールショット(第一コーナーに最初に侵入すること)を取れるかも・・・。もしかしたらオープニングラップも取れてしまうかも・・・。と、もの凄く期待のかかるスタート順となった。

スポーツランドやまなし レーススタート
レーススタート

スタート方式は、伝統的なル・マン式スタートの変則版。ル・マン式スタートというのは、マシンをパドック側に一列に並べ、ライダーはコースの反対側に並ぶ。スタートの合図とともにライダーがマシンに駆け寄り、またがってスタートするといった古典的なスタート方式。

このサーキットでは安全を考慮し、予め第一ライダーはバイクにまたがって待機し、第二ライダーがコースの反対側から走り、第一ライダーにタッチしてスタートするようになっている。

SLy チャレンジバイクレース第3戦のイメージ

第二ライダーは私。狙うはオープニングラップ。スタートの合図が鳴るとともに、100m走の選手のように本気で走り、第一ライダーの後輩Eにタッチした。

すぐに安全なピットレーンに入り、期待しながらホームストレートに戻って来る後輩を待つのだが・・・、最初に最終コーナーを立ち上がって来るバイクは黄色いバイクではなかった。その後ろのバイクも黄色ではない・・・。いや、先頭集団に黄色のバイクの姿がない。

探すイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

まさか転倒してしまったとか・・・。嫌な予感が頭をよぎったが、かなり抜かれたようで、中団グループの中にいた。もしかしたら先頭で・・・と、期待が大きかっただけに、ガッカリ。

後で話を聞くと、彼にとってはこのサーキットで最初のレースだし、乗り慣れていない小排気量のマシンだったので、パワーの出方がよく分からなく、コーナーの切り返しでもたついたところを後続車に雪崩のごとく抜かれ、コースの隅の方へはじかれてしまったそうだ。

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レースがスタートして15分が経った。第一ライダーの後輩Eは順調に周回数を重ねている。順位は手堅く中団。20~25分を目安に交代することにしているので、間もなく第二ライダーの私と交代になる。

いよいよ出番か・・・。今まで気楽に構えていたが、自分の走る時間がせまってくると、やっぱり緊張する。ヘルメットを被ると、緊張の度合いも高まる。

緊張するイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

心臓をバクバクさせながら、屈伸したり、手足を延ばしたりしていると、後輩Eが他のバイクと軽く接触してしまったようで、緊急でピットに入ってきた。

バイク、ライダーともに大きなダメージはなく、計測機器が外れかかっているだけだった。特に問題はない。ガムテープで補修し、すぐにスタート。バタバタと慌ただしく交代したので、あまり緊張することなくコースインすることができた。

孤独なライダーのイメージ(*イラスト:モタツーさん)

(*イラスト:モタツーさん 【イラストAC】

最初の1、2周は転倒しないように押さえて、その後はペースを上げて・・・。色々と考えていたが、走っているとあまり先のことを考える余裕がない。次から次へと目の前に迫ってくるコーナーを必死になってこなしていくという感じだ。

バイクの場合、頭をヘルメットで完全に覆うので、外界と遮断されているような感覚になる。一人でツーリングしている時に、孤独だな・・・と感じることがあるが、レースでもやはり同じこと。自分の息遣いを感じながら淡々とコーナーをこなしていく感じになる。

孤独なイメージ(*イラスト:poosanさん)

(*イラスト:poosanさん 【イラストAC】

孤独だな・・・。他人と競争しているのに孤独に感じる不思議。サーキットの場合は代り映えのしない風景の中をグルグルと回り続けるので、ツーリング以上に孤独とか、淡々としたという表現がふさわしい。

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最初は集中して走っていたが、15分くらい経つと集中力が落ちてきた。手や足に痛みを感じてきて、走りにくい。今何位だろう。自分が走ってから順位はどれくらい下がったのだろう。手が痛い。そのうち握力がなくなり、ブレーキを失敗してしまわないだろうか・・・。コーナーに集中しないといけないのに、段々と気が散っていく。

練習走行の時と今日のレースの違いは、順位があること。時間の長い耐久レースだし、マシン差、ライダーの実力差が大きいので、同一周回で走っているチームは少ない。なので、速い上位チームには何度も抜かれていくし、遅いチームは私でも追い抜ける。

2周に一回、抜いたり、抜かれたりするが、実際に自分の順位が変わることはほとんどない。でも抜かれると、順位が下がったのだろうか・・・と、すごく気になる。

このへんは走り慣れてくれば気にならなくなるのだろうが、まだ最初のレース。抜かれてばかりいると、「また抜かれた・・・」と気が動転・・・とまではいかないが、少々焦りが生じてくる。

転倒クラッシュのイメージ(*イラスト:モタツーさん)

(*イラスト:モタツーさん 【イラストAC】

もう抜かれたくない。もっと早く走りたい。頑張って順位を上げてやる。気の焦りや集中力の欠如から、操作が散漫になり、コーナーリング中にグリップを失って転倒。そのままコースオフしてしまった。

滑るように転んだので、怪我はなく、バイクも見た感じでは大きな損傷はなかった。ただレギュレーションで、転倒やコースオフした場合は自力でコースに戻ることが禁止されている。コースに砂が入るのを防ぐためだ。

スポーツランドやまなし 運搬される様子(他のチーム)
運搬される様子(他のチーム)

ではどうするかというと、オフィシャルの作業車が来るまで待って、その作業車にバイクごと載せられ、ピットまで運ばれることになる。このロス時間が大きく、確実に10周以上の周回数を失ってしまうことになる。

この作業車で運ばれているときの腹立たしさや、情けなさと言ったら筆舌に尽くしがたい。それに後に走るライダーに対して申し訳ない気持ちで一杯だった。

失意のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

どうせ走るなら上位とまでいかないにしても、他のチームと競えるような位置で走る方が、期待やら、やりがいが大きかっただろう。10周以上の差がついて最下位に落ちてしまったら、もう挽回不能。練習走行のような気分で走ることになってしまう。

ピットに戻ると、友人たちがすぐに壊れている箇所を確認。バイクに擦り傷は多いものの、走行に支障がある損傷は、クラッチのレバーが曲がっているぐらい。とりあえずペンチを使って修復。それ以外は問題なかったので、次のライダーが乗ってレースに復帰した。

この私の転倒が一番響いたのだが、他のメンバーのペナルティー、ピットストップでの不手際などがあり、今回のリザルトは24台中、21位。またしても惨敗といった結果になってしまった。

スポーツランドやまなし レース後の記念撮影
レース後の記念撮影

この秋には6時間耐久というメインイベントがある。チームとしてそれに焦点を合わせているので、今回の転倒やペナルティーはいい経験になった。

それに新しいライダーが乗ったことで、ライダー層が厚くなったし、新たなバイクの問題点も発見できた。結果は悪かったが、未来につながるレースになった・・・。

そう前向きに考えるようにしているが、やっぱり転倒したのが悔しいし、何より自分が出場して、順位が悪いというのが腹立たしく、なかなか割り切って考えられない。

「参加することに意義がある」と、世間ではよく言う。サンデーレースながらバイクのレースに参加でき、とても貴重な経験ができた。友人たちとの親睦も深まり・・・と定型文が続くのだが、モータースポーツに限って言うなら、この言葉はあまり当てはまらないと思う。

悔しいイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

成績がよくなければ、参加しても悔しいだけ。そういった負けず嫌いな人間じゃないと、危険が伴うサーキット活動をしないし、それなりの金額をかけてわざわざレースに参加したりもしない。

逆にそういった熱い部分をもっていなければ、レース活動をしても面白くないはずだ。それがサーキットの理ってなもの。なので、この悔しさをバネにして次回は・・・。って、また走ることがあるのか、俺。

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