旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とワンコの日々
世田谷編 2005年(5/8)

世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。

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7、旅とレースの狭間(2005年8月5日)

8月。夏休みだ。旅行の季節だ。今年の夏はどこへ行こう。

昨年は夏前だったが、2週間かけて鹿児島の南にある屋久島までバイクでツーリングを行った。今年は北・・・。そうだ。北海道がいいな。

友人のバイクと日本本土最北端宗谷岬の写真
友人のバイクと日本本土最北端宗谷岬

昨年の夏、友人が私に対抗するかのように、日本本土最北端となる宗谷岬までバイクで行ってきた。

北海道ツーリングは、バイク仲間の間では憧れとなっている。みんな、いつかは広大な北海道をバイクで颯爽と走りたい・・・と憧れるが、実際にやろうと思うと、時間やらお金やら体力が必要になる。

結局、行きたいと思うだけで、実行に移す人はほとんどいない。それを友人はみんなに先駆けて行ったので、飲み会の席では羨望のまなざしを受けていた。

私も北海道へはバイクで行ったことはない。二番煎じになるのは嫌だけど、せっかくなら2週間ぐらいかけて北海道を一周してみたい。

北海道というと最北端といったイメージが強いが、北海道の東、納沙布岬は日本本土最東端になる。こっちも同時に訪れたなら、二番煎じでも友人に勝てる・・・。そう、私はかなりの負けず嫌いなのだ。

北海道の地図(地理院の地図)

国土地理院地図を書き込んで使用

旅の構想は膨らむが、現実は厳しい。昨年は次の仕事が始まるまで時間の空きがあったので、長期でツーリングができた。

でも、今年はそうはいかない。まとめて休めてもせいぜい5日ほど。しかも8月の後半から父親が入院することになっていて、色々と家のことをやらなければならないので、旅行ばかりもしていられない。

頑張っても3日間の旅行が限界。3日あればそれなりに遠くへ行けるが、この暑い時期に張り切って遠出をすると、バテてしまいそう。今体調を壊してしまうと、母親に負担がのしかかるし・・・。さてどうするか・・・。

一緒にレースをしている友人たちからは、夏合宿のような夏のサーキット走行会のお誘いも受けている。みんなで一緒に取り組むレースも楽しくていいが、今年の休日はレースの活動ばかり。それよりも私にとって大事なのは旅ではないだろうか。旅をする気持ちを失っては自分のアイデンティティがなくなってしまう。

よしっ、短くても旅に出よう。走行会の方は断り、一人で手軽に一泊二日のツーリングに出かけることにした。

静岡の地図(地理院の地図)

国土地理院地図を書き込んで使用

目的地は富士山の西側から大井川流域。今年の元旦は御前崎へ初日の出を見に行く予定にしていたのだが、残念ながら雪で中止となってしまった。

せっかく御前崎に行くのなら、東京に戻りながらどこへ寄ろうかな・・・と、その下調べをしている時に、旧東海道のさった峠や由比の宿場町に古い情緒が残っているのを知り、行ってみたくなった。

また前々から日蓮宗の総本山身延山へも行ってみたいと思っていたし、大井川流域の茶畑のある風景や美しい渓谷も行きたい候補地のリストに入っていた。

私の移動力ならこのエリアは日帰りが可能だが、宿泊があるのとないのとでは、旅をしているという実感が段違い。せっかく時間があるのだから旅気分を満喫しよう。のんびりとテント泊ツーリングをすることにした。

由比宿、由比本陣跡の写真
東海道由比宿、由比本陣跡

急ぐ旅ではないので、朝、ゆっくりと出発。国道246号で沼津まで行き、そこから国道1号へ。富士市を越えると、旧道へ。

最初の目的地は由比。ここ由比港はサクラエビの産地ということで、町中にはサクラエビ関係の看板やのぼりが多い。

まずは由比宿の象徴の本陣跡へ。立派な門があり、歴史的な建物に期待が高まるが、残念ながら建物は残っていなく、中は公園や美術館となっていた。ただ、この本陣付近の街道沿いには趣きのある建物が多く残っていて、旧東海道の情緒を感じることができた。

薩埵峠 (さった峠)の写真
東海道さった峠(薩埵峠)

由比本陣から西へバイクを走らせていくと、道が狭くなり、さった峠に向けて少し上り坂になる。

この付近、狭い道に古い日本家屋がずらっと並んでいて、とても美しい。バイクで走ると、ノスタルジックというか、少し時代を遡ったような感覚に陥る。なかなか感動的だった。

情緒のある旧道を登っていくと、家が途切れ、ミカン畑のある山道となる。更に登っていくと、旧東海道の難所、さった峠にたどり着く。

薩埵峠 (さった峠)の写真
東海道さった峠からの眺望

さった峠は、歌川広重の「東海道五十三次之内」にも描かれていて、ここから見える富士山の風景は絶景・・・、というよりは特徴的だ。現在では足元に国道や高速が通っているが、それでも当時の面影が強く残っている。

遥か先に富士山が見えれば「浮世絵と同じだ!」と感動することになるのだが、あいにくと今日は靄の中だった。

身延山久遠寺の写真
身延山久遠寺

さった峠を下ると、東海道の興津宿。こちら側はかなり新しい町並みになっている。ここで東海道とは別れ、52号線を北上し、身延へ。そして日蓮宗の総本山身延山久遠寺を訪れた。

日蓮宗の総本山だけあってその規模は広大。総門をくぐってから三門に至るまでが長い。道路脇には商店や食堂、宿場が並び、まるで一つの町が吸収されているかのよう。

三門からは一転して森に囲まれ、荘厳な雰囲気となる。この広大な伽藍は圧巻というしかない。ただ、歩いて回ろうと思うと階段が結構きつく、大変・・・。

テント泊の写真
テント泊

身延からは、山越えをして大井川上流へ。と思っていたのだが、先日の大雨で、土砂崩れが起きてしまったようで、道に通行止めの立札が設置されていた。

仕方なく再び国道1号まで戻って、西進。そして静岡市から大井川上流方面へ向かった。辺りが暗くなってきたので、途中で夕食を食べ、日帰り温泉に浸かって本日の行程は終了。最後に道の駅に向かい、テントを張って宿泊した。

茶畑のある風景の写真
茶畑のある風景

翌朝起きると、ちょっともやっていた。周囲を見ると、一面茶畑。なかなか気持ちがいい朝だ。遠くにはレトロな電車が走っていたりすると、郷愁という言葉が胸に響く。

人が起きてくる前に撤収。暗くなって現れ、明るくなったら痕跡を残さず去る。のんびりできないのが野宿旅の辛いところ。逆に言えば、ダラダラせず、朝早くから精力的に活動できるというメリットもある。

寸又峡 夢のつり橋の写真
寸又峡 夢のつり橋

で、早速、大井川の上流の観光名勝、寸又峡へ。ここはエメラルドグリーンの水とつり橋が有名となっている。早朝の淡い光と、誰もいない静寂さがなかなか感動的。少し歩かなければならないが、その分感動も大きかった。

奥大井湖上駅の写真
奥大井湖上駅

寸又峡からはさらに上流へ。長島ダム、湖の上に浮かぶようにある奥大井湖上駅、接岨峡などを見て、少し早めに東京へ戻ることにした。

日本最北端みたいな辺境の地へ向かうような大きな旅ではなかったが、こうして自由な旅に出てみると、気分がリフレッシュする。そして気持ちも整理できる。

実のところ少し迷っていた。何を迷っていたのかというと、友人たちとのバイクのレース活動についてだ。先日耐久レースに助っ人として出場したものの、ズバズバ抜かれるし、転倒はするし、冴えない走りしかできなかった。

でも、タイム的には友人と比べても悪くなかったので、練習すればかなり良くなるはず。私がしっかりと戦力になれば、チームとして上位を狙えるかも・・・。

その為にもつなぎなどの装備を買って、もっと練習をしよう・・・といった思いが湧き上がってきた。

その一方、そこまでしてモータースポーツに打ち込みたいのか、本心からレースが好きなのかと、自問していた。

迷うイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

こうして一人で旅に出てみると、やっぱり旅こそが私のアイデンティティ。旅をしていないと自分が自分でなくなる・・・とまでは思わないが、旅している自分が好きだし、旅は捨てられない。なので、最初から結論はほぼ決まっていたのだが、今後、モータースポーツの方は少し距離を置くことにした。

えっ、両方やればいいじゃない。何を迷う必要がある。適度に、そしてうまく折り合いをつけてやればいいだけのことでは・・・。人によってはそう思うかもしれないが、そう簡単な話ではない。モータースポーツというのは片手間でやれるほど容易な趣味ではないのだ。実際にレースに出たからこそ感じたそのへんの事情を少し書いてみよう。

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昨年の秋から友人のバイクレースを手伝い、そして今年の7月に後輩の代役でレースに出場してみて、改めてレース活動とか、サーキット走行を含めたモータースポーツは、野球やサッカーなどとは違った特殊な趣味だと感じた。

モータースポーツといえば、クラッシュしたり、転倒したりする様子がまず頭に浮かび、難しいとか、危ないといった印象を持つ人が多いと思うが、実際にやってみると、それ以上に痛感するのが、とてもお金のかかる趣味だという事。

スポーツランドやまなし レース用の装備品
レース用の装備品

レースに出るだけでも、車両の整備費用、タイヤ、ガソリン、オイルなどの消耗品、そしてサーキットまでの交通費、サーキット走行費などが必要になる。もちろん前提として、サーキットを走れる車両、自分を守るためのヘルメットや革製のレーシングスーツ、安全装備やグローブ、ブーツは必須である。

私の場合は、代役ということで参加できない後輩の装備一式を借りたし、レース用のバイクも友人のを使用したので、出場料や消耗品代ぐらいしか費用はかからなかったのだが、もし今後も継続的に参加しようとするなら、バイクなどはともかく、最低限自分用の装備を揃える必要がある。

ある程度本格的にやるとなると、バイクを競技用に改造しなければならないので、そのバイクをサーキットまで運搬する車、そしてバイクを整備するための工具一式が必要になってくる。これらを揃えるとなると、とんでもなく高い。中古でそろえてもうん百万かかる。

レース関係者のトランポ
レース車両を積んだトランポ

もし友人と切磋琢磨といった感じで、レースやタイムを競い合うなら、自分用の競技車両からトランスポーター(通称トランポ 運搬車)まで揃え、普段から暇を見つけて練習したり、車両の整備をしなければならない。そうなると確実に生活が仕事とレースの2パターンしかなくなってしまう。

趣味でやっているのだから、無理のない範囲で活動すればいいんじゃない。レースが楽しめれば少々順位は関係ないんじゃない。まあレースをしない人はそう思うだろう。

しかし草レースとはいえ、レースをやる人間は熱くなりやすい。山に登るなら山頂を目指すのと一緒で、出るからには一番をといった気持ちになるものだ。

表彰台のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

その為には、休日にサーキットへ練習に出向いて練習をしたり、負けたのが自分の腕でなく、マシンのせいだと納得がいかないと感じたなら、ブレーキなどのパーツを高価なものに交換してみたりと、納得いくまでマシンにお金と時間をかけてしまうもの。

他の趣味を犠牲にしてまでレース活動に打ち込めるかというと、そんな情熱は私にはない。もし7月に出場したレースで、周囲が驚くような速いタイムを出していれば、その先のステップへ進むことを含め、考慮の余地もあったかもしれないが、いたって平凡なタイムだったし、焦って転倒というお粗末な顛末付き。年齢的にも将来性という部分は全くない。

友人からは、「後輩Kの都合の悪い時にだけでも出てくれれば助かる」と言われているが、これも簡単そうで、難しい提案だ。

人数合わせのように出走し、また転倒して迷惑をかけるのは嫌だ。野球とかの助っ人なら、少々エラーしても想定内の出来事。最初っから期待されていないので、笑い話で済む。

エラーのイメージ(*イラスト:mia69さん)

(*イラスト:mia69さん)

しかしモータースポーツの場合は、コケてしまったらチームがリタイヤという可能性もあるし、バイクを壊したらそれなりに修理費もかかる。全くシャレにならない。それに自分だって大きな怪我をするリスクがある。

そうならない為には、やっぱり練習に通ったりしなければならないし、頻繁に走るなら自分用の装備が欲しくなる。そうなると、せっかく買ったのだからと、もっと深みにはまり、時間とお金の支出が大きくなってしまう。

地方選手権に出場の後輩の写真
地方選手権に出場の後輩

これ以上深みにはまっては大変だ。一度レースに出れただけでもいい経験になった。それで十分ではないか。

モータースポーツというのは、安全性やかかる金額を考えると、中途半端にやるには不向きな趣味だ。やるならしっかりと本腰を入れて取り組まないと、気持ち面でも中途半端になり、自分自身が大けがをしてしまうことになりかねない。

ということで、今後はライダーとして参加するのはやめ、来年からは時間があるときに裏方として手伝う程度にすることにした。そうしないと犬の面倒もみれなくなるし、一番大事にしている旅も中途半端になってしまう。

全日本選手権に出場の友人の友人の写真
全日本選手権に出場の友人の友人

ちなみに、これでもまだ趣味でやっている草レースレベルの話。大きなサーキットでちゃんとレース用のライセンスを取得し、公式なレースとか、地方の選手権などに参加するとなると、1秒を縮めるために高価なパーツを装着したり、整備を入念にしたり、定期的にエンジンなどをオーバーホールしたり、多くの練習をこなさなければならない。

この世界は出ていく出費に上限がないので、もし地方選手権に個人で出場するなら、給料の全てをつぎ込み、私生活をレースに捧げないと、メーカーやスポンサーの後ろ盾のあるチームに張り合えない。

全日本選手権250㏄クラスの予選の写真
全日本選手権250㏄クラスの予選

全日本選手権に出ている人に聞いても、とにかくスポンサーが付かないことには・・・との事。よほどの御曹司か、高給取りでもない限り、かつかつな生活をしている人が大半になる。

モータースポーツで一番厄介なのは、走れば走るほどお金がかかるという部分。なので、練習すればするほどお金がかかってしまう。そして一番金食い虫なのが、タイヤになる。4輪でもそうだが、タイヤ代の捻出に苦労している人が多い。

よくレーサーがタイヤメーカーのロゴの入った帽子を被ったりしているが、それなりの成績を上げてタイヤメーカーのスポンサーが付いたら、色々と楽になるそうだ。話を聞いていると、「俺にもタイヤメーカーのスポンサーがつかないかな・・・」と、愚痴をこぼすライダーは多い。

ワークスチームのパドック
ワークスチームのパドック
ワークスチームのパドック

まあお金が全てとは言わないが、モータースポーツはお金をかけないとなかなか勝つことが厳しい世界になる。もちろん腕や才能といったものも必要となるが、よっぽど閃くものがない限り、やはりお金といった現実の壁の方が高くそびえている。

こういった金銭的な感覚が他のスポーツと違うところで、負けたのが自分の腕でなく、マシンのせいだと納得がいかないと感じたなら、納得いくまでマシンにお金をかけていくことになる。

そして最終的には、他の人と同じように大枚を叩いた後、自分の才能の限界に気がつき、第一線から退いていく感じになる。はまると恐ろしく深い沼。それがモータースポーツ。なんとなく片足を突っ込むにはちょっと危険な世界だ。

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