旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とわんこの日々
世田谷編 2005年Page13

世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。

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17、関東最東端ツーリング(2005年9月19日)

犬の散歩をする老人のイメージ(*イラスト:CNたいらさん)

(*イラスト:CNたいらさん 【イラストAC】

9月頭に父親がガンの手術を受けた。術後は良好で、1週間後に退院予定だったのが、本人が「もう治った」「ここは暇だ」「食事がまずい」などと、わがままを言い、5日で退院してきてしまった。

それだけの元気があれば治りが早いというもので、今ではほぼ平常の生活に戻っている。おかげで父親の代わりに行っていた朝の犬の散歩から解放され、朝が楽になった。

それよりもうれしいのが、気兼ねなく家を空けてツーリングに行けるようになったこと。今年はレース活動に力を入れていたので、あまりツーリングに出かけていない。

友人を誘って出かけるか。先日はレースに出れなくて落ち込んでいたし・・・。「サーキットばかり走っていたら、ラップタイム鬱になってしまうぞ。たまにはツーリングに行こう。」と友人を誘い、日帰りのツーリングに出かけることにした。

関東の地図(地理院の地図)

国土地理院地図を書き込んで使用

目的地は千葉県銚子市の犬吠埼。利根川の河口付近にポコッと飛び出るようにあるのが犬吠埼で、ここは離島を除いた関東の最東端となる。

関東近辺には三浦半島、房総半島、伊豆半島といった有名な半島があり、その先端となる最南端は訪れているが、この関東の一番東端の地へは今まで訪れていなかった。

旅人と名乗るには有名な観光地はもちろんだが、こういった旅心をそそるような最〇端とか、日本一といった場所も押さえておくべきだろう。って単なる自己満足の世界でしかないが・・・。

柴又の帝釈天の写真
柴又の帝釈天

世田谷からなので、東京の中心を横切り、水戸街道へ。そしてまずは友人が訪れたことがないというので、柴又の柴又帝釈天に立ち寄った。

ここの参道には、柴又名物の草団子屋、お土産屋、飲食店といった趣きのある店がずらっと並んでいるのだが、まだ朝早い時間だったので、そのほとんどが開いていなかった。

柴又の帝釈天参道の写真
帝釈天参道

少し閑散とした雰囲気だったが、ここは歩くと独特の旅情を感じる。というより、国民的な映画「男はつらいよ」の舞台になっているので、映画の旅情を思い出し、旅心を刺激するといった感じなのかもしれない。

冷静な目で判断するなら、町並自体はもの凄く情緒を感じるわけではない。ちょっと昭和の雰囲気を感じる賑やかな参道というのが、的を得ていると思う。

寅さんの銅像の写真
寅さんの銅像
葛飾柴又寅さん記念館の写真
葛飾柴又寅さん記念館

でも映画のイメージは絶大で、映画の舞台にやって来たという満足感もあるが、主人公が旅から帰ってきた場面と重なり、なんかこう・・・、長旅から家に帰ってきたときに感じる、胸が一杯になるような気持ちというのだろうか、歩いていると感傷的な気分になってくる。とても不思議な情緒に浸れ、私の中で好きな場所のうちの一つだ。

ちなみに私のバイク、初代も、今乗っている2代目にも、帝釈天の交通安全のお守りを取り付けている。バイクを購入した後に、どこへ行こう。そうだ柴又に行ってみよう。と、柴又帝釈天に向かって風が吹く。そして、せっかく来たのだからバイクにお守りを付けよう・・・となるのだ。

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水戸街道、国道6号線が利根川と交差するところで、道を逸れ、今度は利根川沿いを下っていった。

利根川は、昔から水運が盛んで、川沿いには水運で栄えた町が幾つかある。その中でも江戸優り(えどまさり)といわれるほど栄えていたのが、佐原。次の目的地だ。

佐原の運河の写真
佐原の運河
佐原の古い町並みの写真
佐原の古い町並み

佐原の旧市街には、現在でも多くの見世蔵が街道と運河沿いに残っていて、重要伝統的建造物群保存地区に指定されている。東京近辺では、こういった町並みは川越か、佐原か、となる。

佐原の良さは、今もなお古い町並みが商店として利用されていて、生きた町並みになっていること。そして運河も生きていて、観光船が運行されている。運河から眺める町並みというのも、普段味わえない情緒になる。

香取神宮の写真
香取神宮

佐原から東へ数キロのところに、関東地方を中心に全国展開している香取神社の総本社、香取神宮がある。茨城県鹿嶋市の鹿島神宮、茨城県神栖市の息栖神社とともに東国三社の一社になる。らしい・・・。実はあまりよく知らない。

名前をよく聞くし、観光案内に大きく載っているから訪れてみるか・・・といった感じで訪れてみたのだが、総本社だけあって境内がとても広く、楼門、本殿といった建物も荘厳で素晴らしかった。

汗ばむ陽気の中、広い境内をしっかりと汗をかきながら歩いたかいがあったというもの。訪れる前は「神社・・・。なんか有名なの?」と、あまり興味を示していなかった友人も、出発するときには満足顔になっていて良かった。

犬吠埼灯台の写真
犬吠埼灯台

銚子の町で少し遅い昼食をとった後は、いよいよ犬吠埼へ。半島のどこが最東端になるのか分からないが、真ん中付近のポチっと出っ張っている部分に犬吠埼灯台があり、犬吠埼といえばここを差すことが多い。

ということで、犬吠埼灯台を目指した。犬吠埼灯台は白色塔形の煉瓦造灯台で、明治7年(1874年)に初点灯した歴史ある灯台になる。その歴史的価値から国の重要文化財となるのだが、それはもっと先、2020年の話となる。

青空に映える白い灯台もいいが、犬好きとしては、犬が吠える岬という犬吠埼という名も気になる。調べてみると、源義経の愛犬だった「若丸」が岬に置き去りにされ、義経を慕うあまり7日7晩鳴き続けたとかなんとか。

源義経のイメージ(*イラスト:めもっ太君さん)

(*イラスト:めもっ太君さん 【イラストAC】

なんと義経が・・・と、そのいわれに感動する人もいるとは思うが、こういった話を疑わずに信じてはいけない。最近世間を賑わせているオレオレ詐欺の鴨にしてくださいというようなもの。

いったい義経は何人いたんだと言うぐらい関東には義経、或いは頼朝の伝説が多い。関東の観光地や有名な寺社を訪れると、恥ずかしげもなくこういった伝説を紹介した案内板がある。日本人は本当によく適当な嘘をつく。そしてそれを簡単に信じる。

この犬吠埼の南から始まる九十九里浜も、源頼朝が一里ごとに矢を浜に刺していき、その数が99本だったからといった謂れがある。箔をつけるために何でもかんでも源氏にルーツを求めるというのも、どうかと思ってしまう。

初日の出のイメージ(*イラスト:simplease20さん)

(*イラスト:simplease20さん 【イラストAC】

ちなみにここ犬吠埼は、日本の本土にある平地で一番早く初日の出を見ることができる場所になり、初日の出の町として売り出し中である。

えっ、関東最東端が日本一早いの。なんで?疑問に思う人もいるだろう。簡単に書くと、一年で一番太陽が低くなる冬至から元旦にかけては、地軸の関係で南の方が日の出時間が早くなり、日本本土最東端の北海道納沙布岬よりも、本州最東端の岩手県トドヶ崎よりも、ここ千葉県の犬吠埼の方が早くなる。

平地でとあるのは、標高が高くなると日の出時間が早くなり、ここよりも遥か西にある標高3776mの富士山の方が数分早いから。

犬吠埼ロカ岬友好記念碑の写真
犬吠埼ロカ岬友好記念碑の写真
犬吠埼ロカ岬友好記念碑

ここ犬吠埼を目的地に選んだのは、関東最東端制覇という目的が一番であったが、もう一つ、ここに設置されている「犬吠埼ロカ岬友好記念碑」を訪れたかったからだ。

ロカ岬といっても「えっ、どこにあるの?何が有名なの?」という人がほとんどだと思う。歴史的に何かあったとか、もの凄い絶景が見られるとか、映画などの舞台になった岬ではなく、ポルトガルの首都リスボンの少し西、大西洋に少し飛び出た岬になる。

で、そのロカ岬とは何なの?ってことになるのだが、ここはユーラシア大陸の最西端になる。なので、日本を出発し、ユーラシア大陸を西に向かって旅する旅人が、とりあえず目的地とするのが、このロカ岬になる。

ユーラシア大陸横断のイメージ(地理院の地図)
一般的なユーラシア大陸横断のイメージ

国土地理院地図を書き込んで使用

日本を出発し、順調に旅をしていき、無事にロカ岬にたどり着く旅人もいれば、途中で脱落する旅人もいる。まるでそれぞれの人生のようで面白い。実際にロカ岬にたどり着いた人の話では、たどり着いたときの感動はひとしおではないようだ。

私もユーラシア大陸横断を試みたのだが、結局、ロカ岬までたどり着くことはできなかった。ロカ岬にたどり着くよりもやりたいことが途中で見つかったので、たどり着けなかったことに悔いはないのだが、たどり着いていたならどんな気分だったのだろう・・・と思う時がある。

ポルトガルロカ岬の写真(*反射率 0.39さん)
ロカ岬

(*写真:反射率 0.39さん 【写真AC】

その大陸横断しているときに、「銚子の犬吠埼にロカ岬との友好碑があるのですよ。両方訪れるととても感動的ですよ。」と、出会った旅人が自慢気に言っていたのをふと思い出し、そうだ、行ってみよう。と、今回やって来た。

しかし、やっぱりというか、ロカ岬へ訪れたことのない私には深い感動はなかった。でも、ユーラシア大陸を横断した人、これからする人にとっては、訪れておいて損のない場所だとは思う。

犬吠埼ロカ岬友好記念碑 記念碑の前での写真
記念碑の前で

ちなみに、一緒に訪れたのは、ユーラシア大陸横断中に旅の様子をリアルタイム旅行記としてホームページに載せてくれていた友人。一緒に訪れることで、果たせなかったゴールを一緒に踏んだぞ!ってなイメージでやって来た。

これでめでたくゴール・・・になるかどうかわからないが、旅の終わりは新たな旅の始まりというように、ここを訪れたことで無性に実際のロカ岬を訪れたくなってしまった。

まあ、今度は時間をかけてわざわざユーラシア大陸を横断したり、前回の続きからといった事をしなくても、飛行機で一気にポルトガルまで飛んでいけばいい。

よしっ、次の目的地は再びロカ岬だ。ポルトガル旅行だ。友人を誘ってみたが、「レース活動で時間も金もない!」と間髪入れず断られてしまった。

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