旅人とわんこの日々 タイトル

プロローグ
#1-6 ワンコを里親に出す

ワンコのいる日常と旅についてつづった写真ブログです。

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15、お別れ

東京のイメージ(*イラスト:さっきさん)

(*イラスト:さっきさん 【イラストAC】

かなりの田舎ではあるが、育ったこの地でずっと・・・、いや、少なくとも高校を出るまでは、何も変化なく暮らし続けるものだと思っていた。しかし、まさかの急な父親の転勤。しかも大都会東京へ。人生何が起きるかわからないものだ。

でも暮らす場所が田舎から都会に変われど、家族構成は変わらない。新しい土地でも同じような暮らしが続いていくはずだったのだが・・・、借家で犬を飼うことができなく、不本意ながらジョリーを里親に出すことになってしまった。

まさか5年半でジョリーとお別れになるとは・・・、全く想像していなかった未来である。しかも育った土地や仲の良かった友人からもお別れをしなければならなく、短い時期に愛着のある事からのお別れが続くと、結構メンタル的にしんどい。多感な時期だったので、心のバランスをとるのも大変だった。

落ち込むイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

実際にジョリーとの別れが決まってみると、5年半も一緒に暮らしたので、情が移り、離れがたい。でも、まだ一緒に暮らせる可能性は残っている。一旦引っ越した後、ペットが飼える物件を探して引っ越せばいい。

そういった一抹の希望と、こうなるかもしれないと、引越しが決まった2カ月前から覚悟をしていたので、引越しが決まった時のように目の前が真っ暗になるほど酷いショックを受けるということはなかったが、やっぱりつらい。

一番辛く感じるのが、里親に出されることなど知らずに、今度はここが新しい住居になるんだ・・・といった感じで、家の中を楽しそうにウロウロしているジョーリーを見ること。

間もなくお別れなんだよ・・・。もう一緒に暮らせないんだよ。こっちの都合で、ごめんね・・・。そう思いながらジョリーを見ていると、自然と涙がこぼれてしまう。

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こうなる場合を想定して、里親先は決めてあったので、親戚に「やっぱり駄目でした。犬をお願いします。」と伝えると、親戚も了承してくれた。近隣なら休日にでも車で連れて行くのだが、東京から中国地方へ連れて行くにはちょっと遠すぎる。

犬を長距離で輸送するにはどうすればいいのだろう・・・。ペット専用の宅急便みたいなサービスはあるのだろうか・・・。

飛行機と犬のイメージ(*イラスト:しばらぶさん)

(*イラスト:しばらぶさん 【イラストAC】

調べてみると、ペットの長距離輸送は飛行機の貨物で行うのが一般的のようだった。って、こんな小さな犬が飛行機に乗って大丈夫だろうか。新幹線ならともかく、飛行機だと気温とか気圧とか色々と心配。

航空会社に問い合わせてみると、体調を崩してしまう犬もたまにいますが、一時的なもので、小型犬のヨークシャーテリアでも安心してご利用いただけますとのこと。

ちょっと不安に感じるが、他にいい方法がない。羽田空港に連れていき、親戚には近くの空港まで引き取りに来てもらうことになった。

お別れの前日 ヨークシャーテリアの写真
お別れの前日

引っ越しが終わった10日後、お別れの日がやってきてしまった。その日は平日だったので、朝、犬とお別れをし、学校へ行った。

いつもよりも多く撫でてあげたのだが、いつもと違う様子にジョリーはいぶかしがり、しつこいぞ!といった感じでちょっと嫌な顔をしていた。

そして夕方、学校の授業を終え、家に帰ってくるのだが、呼び鈴を鳴らしてもいつものジョリーの鳴き声がしない。玄関に入っても今まで出迎えてくれていたジョリーがやってこない。

分かっていたことだけど、実際に家の中に犬がいなくなってみると、とても寂しい気持ちでいっぱいだった。

新しい環境で ヨークシャーテリアの写真
新しい環境で

とても素朴な場所に引き取られました。

それから犬のいない生活が始まった。時間を持て余した時など、今までの癖でジョリーの名前を呼び、「あっ、いないんだ」と気が付き、ガッカリすることも多かった。

死んだわけではないけど、ここにいない。いる場所は分かっているけど、会えない。なんとも表現のしようがない微妙な感覚だ。

ジョリーがいないのはやっぱり寂しい。何とかならないだろうか。しばらくは犬が可能な物件の話は?と親に尋ねていたが、なしのつぶて。どうも本気で探している感じではなさそうだった。

16、再会・・・

夏休みのイメージ(*イラスト:がらくったさん)

(*イラスト:がらくったさん 【イラストAC】

ジョリーを里親にだしてから迎える最初の夏休み。広島の祖母の家に里帰りした時に、ジョリーは元気にやっているだろうか。会いたい。と親に頼み、家族全員で預けた親戚の家を訪れることにした。

久しぶりだな。ジョリーに会うのが楽しみでしょうがない。きっとジョリーも我々に会いたがっているはず。やっと迎えに来てくれたと、めちゃくちゃ歓迎してくれるのではないか。もし一緒に連れて帰ってくれと泣きせがまれたらどうしよう。

アニメのクライマックスでは、主人公が長く会えなかった人や動物と感動の再会をするといったシナリオが多い。最近のテレビ番組でも、あの人に会いたいといった再会ものを扱った番組が多い。今回のジョリーとの再会もそういった番組に負けないような涙の感動談になるに違いない。

そういった思いで4カ月ぶりにジョーリーと対面したのだが、久しぶりに会ったジョリーはさほど喜ぶわけでもなく、お客さんが来たといった淡白な態度だった。

温度差のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

さすがに我々のことは覚えているようだが、どうもこちらの想いとは温度差がある。それも誤差というレベルではない。

もう捨てられたと思っているのだろうか。それともここが今までよりも快適で、もう戻りたくないと思っているのだろうか。

親戚に話を聞くと、こっちに来てからはしばらくストレスで抜け毛が酷かったそうだ。元気もなく、食欲もなく、面倒をみるのが大変だったとか。

いきなり東京へ引っ越しになったと思えば、今度は飛行機に無理やり乗せられ、全く知らない土地で、全く知らない人に飼われることになったのだから、そのストレスも半端ではなかったはず。

しかも信じて疑わなかった飼い主に裏切られてしまったのだから、小さな体で受け止めるにはあまりにもショックが大きかったようだ。

犬のストレスのイメージ(*イラスト:しらたさん)

(*イラスト:しらたさん 【イラストAC】

そんな思いをした後では、今さら何をしに来た。もうあなたたちのところへは戻りたくない。というような気持ちを心に抱いていても、仕方がない。別れる前と同じような気持ちでやって来た我々と、明確な温度差があるのも当然だろう。

たった4か月。されども4カ月。4カ月が4年もの月日に感じ、まるで浦島太郎になってしまった気分で親戚の家を後にした。

結局、ジョリーに会いに行ったのはこの一度きり。ジョリーの態度にガッカリしたのはもちろんだが、親戚がジョリーをかまう我々を見て、なんとも複雑な表情をしていたのも印象に残った。

地域の秋祭り ヨークシャーテリアの写真
地域の秋祭りのワンコ

ジョリーに会いに行ってからは、犬のことはほぼ諦めるようになってしまった。新しい飼い主に優しくしてもらっているようだし、暮らしている場所は田舎の静かでいい環境だったし、犬も向こうで楽しく暮らしているのなら、このままあっちで暮らした方がいいかもしれない。

私自身、東京に引っ越してからというもの、あまりの空気の悪さで鼻炎になり、半年ぐらい激しい運動をすると鼻水が止まらないという症状に困っていた。

空気のいい田舎でのんびり暮らすほうが、ジョリーにとっては幸せかもしれないな・・・と考え始めると、これはこれで良かったのかも・・・と心の中で納得できてしまう部分もあった。

大気汚染のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん 【イラストAC】

それに一旦暮らしが落ち着いてしまうと、色々と腰が重くなってくるもの。また引っ越しする労力や気力、手間、そして金銭的なことも考えると、ジョリーは我々のことを忘れるぐらい幸せに暮らしているのなら、もう親戚に譲って、犬のことを考えずに暮らそうではないか・・・と思ってしまうのもしょうがない。

里親に出した時には、また一緒に暮らしたい。きっと一緒に暮らせる日がくる。そういった希望や期待があり、まだジョリーとはちゃんと糸でつながっていると思っていた。

しかし、ジョーリーと再会してからは、そういった気持ちは砂時計の砂が落ちていくかように、心の中から徐々に消失していくのだった。

17、飼い主の交代

マイホームのイメージ(*イラスト:iccoさん)

(*イラスト:iccoさん 【イラストAC】

それから4年後、両親が頑張って家を購入し、ようやく犬を飼える環境を手に入れた。そして、中途半端になってしまった犬との生活を再開することにした。

しかし、どうしたものか・・・。ジョリーを預けた親戚は近い親戚ではないので、親戚伝いに様子を聞いてみると、老夫婦に愛され、向こうの生活にすっかり馴染んでいるようだった。どうも今更「返してください。」と言うのは、色々と酷な話になってしまうようだ。

というよりも、預けてから4カ月後に会いに行って、あのそっけない状態だったことを考えれば、今更どうこうするよりもこのまま親戚の家で飼われていたほうが、ジョリーにとっても、老夫婦にとっても幸せだろう。ということで、新たに犬を迎えることにした。

この時に「ジョリーはそちらですっかりと慣れてしまったようなので、新しく犬を飼います。このまま最後までよろしくお願いいたします。」と連絡すると、すぐに大量の写真が送られてきた。その写真にはジョリーがとても元気そうに写っていた。

親戚から送られてきた写真 ヨークシャーテリアの写真
親戚から送られてきた写真

親戚伝いに両親が家を購入したことは伝わっていたようで、もしかしたら返してくれと言ってくるかもしれない。もしそうなったらどうしよう・・・。きっとそういった気持ちが心の中にあったのだと思う。

それが解き放たれた安心感や、今後はわしらに任せてくれてくれて大丈夫だ。といったものがその写真から伝わってきた。

ジョリーは元気そうだし、これで我々も心置きなく他の犬を飼うことができる。勝手な言い分かもしれないが、きっと運命づけられた飼い主の交代で、ジョリーにとっても幸せのステップアップだったに違いない。そう思うことで、納得することにした。

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