旅人が歩けばわんにゃんに出会う
国内編 鳥取県
鳥取県で出会った猫の写真を紹介しています。
1、因幡の黒にゃんこ(鳥取市白兎 2023年4月)
鳥取といえば、何といっても鳥取砂丘が有名。鳥取市の北側の日本海に広大な砂丘が広がっている。砂丘と名が付く場所は日本各地にあるが、ここの特徴は立体感のある砂丘が広がっていること。風の強い土地なので、砂が風で積み上がり、砂漠のような荒々しい地形を楽しむことができる。
その鳥取砂丘の西側、千代川を挟んで鳥取空港があり、その更に西側は、伏野海岸、白兎海岸と砂浜が続いている。
白兎海岸には、すぐ沖に淤岐之島(おきのしま)が浮かんでいて、陸地には白兎神社が鎮座している。そう、ここは日本神話(古事記)に登場する因幡の白兎ゆかりの土地になる。
因幡の白兎の話はよく知られていると思うが、少しくだいて書いておこう。
白兎海岸のすぐ沖に浮かぶ淤岐ノ島(おきのしま)に白ウサギが暮らしていた。白ウサギは島から見える本土に憧れ、渡ってみたいと思うようになった。
しかし、この距離を泳ぐのは無理そうだ。途中で命を落としてしまうかもしれない。何かいい方法はないだろうか。その思案していると、サメ(こっちの方言ではワニ)がやって来た。これはちょうどいい。サメを利用しよう。
白ウサギは、サメに「私の一族と、お前の一族、どちらの方が数が多いか。競おうではないか。」と提案し、サメは同意した。
サメは白ウサギの言うとおりに、自分の同族をありったけ連れてきて、数えやすいように島から浜に向かって一列に並んだ。白ウサギは、しめしめと数えるふりをしながらサメの背中の上を陸へ向かって渡っていった。
しかし、あまりに事がうまく進んだことに気をよくした白ウサギは、渡り切る直前に「お前たちはまんまと私にだまされたのだよ」と、口を滑らせてしまった。
それを聞いたサメは怒り、最後のワニが白ウサギを捕え、仕返しに毛皮を剥いでしまった。
皮を剝がされ、哀れな姿になった白ウサギは、浜辺で途方に暮れていた。すると、神様が通りかかった。白ウサギは神様に事情を説明すると、「海水に身体を浸し、その後、風に当たって休めば治る」と教えてくれた。
白ウサギは神様に礼を告げ、早速それを実践するが、これは大ウソ。更に酷い状態になってしまった。
白ウサギが痛みでのたうち回っていると、また神様が通りかかった。今度の神様は大国様だった。
大国様は白ウサギから事情を聴くと、「なんてかわいそうに。すぐに真水で体を洗いなさい。それから蒲(がま)の花を摘んできて、その上に寝転ぶといい。」と教えた。
白ウサギは、すぐに言われたとおりにした。すると、身体から毛が生え、しばらくするとすっかり元の白ウサギに戻ったという。
実は、最初に通りかかった神様は大国様の兄弟である八十神。それぞれ因幡の国の八上比売(やかみひめ)に求婚しに行く途中だった。大国様が因幡の国に到着すると、八上比売が求められたのはウサギを助けた大国様だったという。めでたしめでたし。
白兎神社の鳥居前には、大国様と因幡の白兎の石像があり、鳥居の横には白兎名物うさぎ焼きの売店がある。うさぎ焼きの文字にドキッとするが、どうやらタイ焼きみたいな食べ物のようだ。とはいえ、「うさぎ焼き」では、残酷なイメージが思い浮かび、あまり印象がよくないような・・・。
実は神話は書き換えられていて、サメに皮を剥がされたウサギは、海水に浸し、少し日干しにした後、人間に丸焼きにされて食べられてしまったとか・・・。うさぎ焼きの店を見てからは、そんなストーリーが頭から離れなくなってしまった・・・。
そのうさぎ焼きの売店の横に猫がいた。落ち着いた様子から、このお店の人に面倒を見てもらったり、やってくる観光客に食べ物をもらったりして暮らしているのだろう。
せっかくなので、傍に寄ってみる。このにゃんこ、顔が黒くて、胴体は茶色。なかなか個性的な毛並みをしている。というか、率直に言うなら、素敵な毛並みとは言えない。
いやいや、忘れてはいけない。ここは神話の地だ。この猫は元々きれいな黒猫だったのではないか。悪戯をして胴体の皮をはがされてしまい、その部分の肌が荒れ、毛並みが元の黒色に戻らなくなってしまったのではないか。きっとそうに違いない。
皮を剥がされた因幡の白兎は、現在では神様として白兎神社に祀られている。この黒猫もどきに見える猫も、実は因幡の黒猫という神様なのかもしれない。
粗相のないようにしなければ。そうだ。胴体部分にちゃんと黒い毛が生えてくるように軟膏を買ってこよう。黒色の毛染めも買っておいた方がいいかな。きっと猫様は喜び、浦島太郎の話のような展開が起きるかもしれない。
なんて猫を見ながら一人で妄想の世界に入っていたのだが、猫としてはいい迷惑。「なに勘違いしているの。このおっさん。早く向こうに行け。」といった渋い表情でこっちを見ていた。
2、白壁土蔵群でのにゃんことの出会い(倉吉市 2023年4月)
鳥取県の真ん中に倉吉の町がある。倉吉の名の通り、蔵の多い町として知られている。その象徴が白壁の立派な蔵が並ぶ倉吉白壁土蔵群。この一帯には、江戸や明治期に建てられた建物が多く建ち並び、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。
倉吉白壁土蔵群があるのは、JR倉吉駅から南に3キロちょっと程離れた打吹玉川地区。江戸時代の城下町となり、商業の中心地として栄えたそうだ。
ここの趣きのある部分は、水路のような玉川沿いに白壁の町並みが続いていること。水路と蔵が並ぶ様子はもちろんのこと、水路に架けられた小さな石橋に趣きを感じる。
また、赤い石州瓦の蔵が並ぶ様子は、山陰以外から来た人には独特な景観と感じるだろう。
倉吉白壁土蔵群を歩いていると、にゃんこを発見。白壁の町並みを悠々と歩いていた。
にゃんこは、ここの象徴である水路に架かる橋を渡っていくのだが、あいにくと毛並みがグレーなので、古い木や古びたセメントと被ってしまい、せっかくの町並みに全く映えなかった。黒猫とか、白っぽい三毛だったらな・・・。などと勝手に思ってしまうのだった。
この猫と出会ったのは、男はつらいよ第44作「寅次郎の告白」(1991年)のロケに使われた場所。寅さんが甥の満男の恋人、いずみちゃんとばったり出会う場面に登場する。しかも、ちょうど寅さんが立っていた場所に猫が現れたので、ビックリした。
この時は、祭り訪問の空いた時間に寅さんのロケ地でも回ってみるか・・・と、鳥取砂丘や八頭町などを巡っていたので、偶然の猫との出会いに感激したのは言うまでもない。
写真を撮った後は、急いで猫が去った方向へ走っていくと、民家の入り口に猫がいた。私を見つめる表情は、「人間、息を切らしてまで、何か用か。」といった感じ。
この時はチワワと一緒に白壁の町を散策をしていて、チワワを抱えてダッシュしてここまでやってきた。写真を撮るのに抱えているチワワが邪魔なので、なるべき猫に見えないように下に降ろすのだが、にゃんこは私の後ろに隠れているチワワに気が付いてしまった。
「おい、そこのチビ。一体何者だ」といった表情となり、どうにもチワワが気になってしょうがない様子。
耳がカットされているので、この界隈で暮らす地域猫なのだろう。ウロウロしていれば、散歩する犬を見かけることも多く、犬にも慣れているのかな。チワワを見てもあまり大きな反応がない。
でもまあ、あまりお騒がせしては悪い。猫に別れを告げて去ることにした。そして、他にも地域猫がいないかな・・・と、この周辺を少し歩いてみたが、見つけることはできなかった。
3、廃線跡と仲のいいにゃんこ(倉吉市関金町 2023年4月)
かつて国鉄倉吉駅から倉吉の南にある関金町山守まで倉吉線が運行されていた。営業距離は20キロで、駅数は9駅。線路は全て単線といった規模の小さなローカル線だった。
なぜこんな過疎地に短い路線が・・・。どう見ても需要が・・・。と疑問に感じたのだが、調べてみると、元々は国鉄倉吉駅から、倉吉の繁華街の打吹を結ぶ鉄道だったのを、1941年に関金温泉まで延伸したとか。
なるほど納得。しかし、沿線の過疎化が一気に進み、1985年(昭和60年)に廃線となってしまった。
その後は、歴史から忘れられていく存在でしかなかったが、近年、美しい廃線跡として、脚光を浴びるようになった。
美しい廃線跡として有名なのは、終点だった山守駅と一つ手前の泰久寺駅の間。とても竹林が美しく、SNSなどで話題になると、多くの観光客が訪れるようになった。
泰久寺駅跡から線路を歩いていくと、線路の脇に竹林が出現。竹林の中に真っすぐ線路があるといったロケーションで、とても素敵な雰囲気となっていた。訪れたのは夕方。昼間の光が多い時間に訪れるほうがよさそうな感じだ。
実際に訪れてみると、SNSなどで話題となり、多くの人が訪れているのも納得。ただ、竹林の維持も大変なようで、いつまでこの風景が維持できるかというのが、悩みの種になっているようだ。
あと、かなり歩かなければならないのも難点。近くに駐車場がないので、泰久寺駅跡の手前1キロほどのところに観光駐車場が設置されている。
お目当ての竹林を訪れるのに、片道1.5キロほど歩かなければならなく、行きはワクワクした気持ちで線路の上を歩いて行けるのでいいが、復路は結構しんどい・・・。
倉吉線の廃線跡を訪れたときのこと。観光駐車場に車を停め、廃線跡を見て戻ると、駐車場の脇で猫が仲良く花壇の花を見ていた。これはシャッターチャンス。と、忍び足で背後に忍び寄ってみると、猫たちの会話が聞こえてきた。
メスにゃん:「あら、花壇にお花がきれいに咲いているわよ。」
オスにゃん:「そうだね。人間が植えとったぞ。ご苦労なこった。」
オスにゃん:「花もきれいだが、君の方がきれいだよ。」
メスにゃん:「まあ、うれしい。」
観光客のおっさん:「なんてませた猫たちだ・・・(独り言)」
オスにゃん:「おい、おっさん。なに勝手に写真撮ってるんだ。」
観光客のおっさん:「すみません・・・。あまりにもお似合いで、写真に撮りたくなるほど素敵な雰囲気だったもので・・・」
オスにゃん:「そ、そうか。そんなに似合って見えるか・・・。うん。まあいい。ゆっくりしていけや。」
観光客のおっさん:「ありがとうございます。」
メスにゃん:「なんかしらけっちゃったわ・・・。せっかくいい雰囲気だったのに・・・。だから人間は・・・。ぶつぶつ・・・。」
近年では中国地方の過疎化が進んでいる。とりわけ中国山地の過疎化は著しく、鉄道の廃線や規模縮小が相次いでいる。
ここも素敵だが私的には広島県安芸太田町の旧可部線沿いの風景が、日本の農村風景、里山風景を兼ね備えていて、日本で最も美しいと思っている。
なかでも安の花の公園はホームに旧車両が置いてあり、ローカル線情緒を楽しめる。とりわけ桜の時期は、とても素敵な空間になるので、多くの人が県内外から訪れている。
国内編 鳥取県