佐渡島一周ツーリング記
#14 味噌工場の見学
2003年8月、友人と2人、1泊2日の行程で佐渡島一周を試みた時の旅行記です。(全17ページ)
23、味噌工場の見学
小木から佐渡の東側の海岸を北上していった。観光マップに目ぼしい見どころが記載されていなかったので、赤泊ぐらいまではノーストップで走るつもりにしていたが、5kmぐらい走ると、「えっ、ここ、なんか凄いぞ!」と感じるほど、レトロな感じの集落に入った。
後で調べると羽茂大橋の集落になるようだが、道の両脇には長屋というか、倉庫というか、でかい建造物が並んでいて、なかなか迫力のある景観となっていた。しかも周辺には木造の家屋が多くあり、この付近一帯から独特の情緒を感じる。
一体ここは何だろう。そしてこれは何の建物だろう。ムラムラと好奇心がもたげてくる。ちょっと散策してみるか。宿根木とはまた違った趣きに惹かれ、バイクを停め、ちょっと歩いてみることにした。
歩いていると、どこからとなく香しい匂いが漂ってくる。これは・・・味噌の匂いか。少し歩くとマルダイ味噌の看板があった。
なんか聞いた事があるぞ。あの坊主頭の少年が出てくるCM、「マルコメ~、マルコメ味噌♪」で有名なやつ・・・、って、いや、これはマルコメか。味噌会社の名前はどれもよく似ていて紛らわしい・・・。
工場らしき建物の入り口には、さりげない感じで「見学受付はこちら」という張り紙が板が貼ってあった。中を見学できるのか。酒蔵や醤油工場の見学はよくあるけど、味噌はあまりないかも。せっかくだから入ってみるか。
とはいえ、工場周辺には人影がなく、工場の入り口も扉が閉まっていて閉塞感が半端ない。本当に見学できるのだろうか。そもそも営業しているのだろうか。一人だったら物怖じして扉を開けるのをためらうような雰囲気。でも、今回は友人と一緒。こういった場合には連れがいると心強い。
ちょっと遠慮がちにドアを開けると、元気のいいおばさんが出てきて、「見学ですか?どうぞどうぞ。」と迎えてくれた。
置かれていた見学者ノートに記帳した後、おばさんの案内で工場の中に入っていった。ここの工場見学は、製造過程を詳しく見れるといった見学ではなく、古い建物の内部や昔使っていた道具、製造過程を表現した模型やパネルなどを見て回るもの。
最初におばさんがマルダイ味噌について簡単な解説を行ってくれ、後はご自由に見て回ってくださいということなので、味噌の香りが漂う中、自分たちのペースで工場内を見て回った。
一番印象的だったのが味噌を醸造する樽。これが、とんでもなくでかい。しかも樽の年季の入り具合がまたいい。おいしくなりそうな菌がびっしりと浸み込んでいそうだ。
そしてこの樽を見ていると、自然とさっきのたらい舟が頭に思い浮かんでくる。この樽でみそ樽舟はどうだろう。使わなくなった樽を短く切って、団体用の大きな樽舟というのも面白いかも。
6人ぐらいの乗客を載った大きな樽船が湾内を連なって動く光景を思い浮かべるとちょっと楽しい。きっと舟の中では、「なんか味噌の香りがしてこない?」「みそ樽舟だもん。」「お腹空いてきたね。」「味噌汁付きの刺身定食が食べたいね。」なんて会話が弾むことだろう。
敷地内には現在は使われていない昔の木造建物が放置されていた。昭和初期の工場といった雰囲気の建物で、味噌工場というよりは、養蚕とか、製糸工場という方が似合っている気がする。
全体的に痛みが目立ち、所々崩れそうなほど朽ちていた。そういった部分に歴史や情緒を感じてしまうが、このままだと本当に朽ち果ててしまうか、或いは解体されてしまうことになりそうだ。
一通り回って、最後に入ったのはこの会社の味噌などの商品を展示している明るい部屋だった。この部屋にはさっきのおばさんが待ち構えていて、うちの味噌はいかがですかと味噌汁の試食を勧めてきた。
佐渡の味噌には特徴があるようで、みそ汁を渡してくれる時に「佐渡の味噌は海の味噌なのよ。ワカメとか、海産物に相性がいいの。」などと説明してくれた。海のすぐそばなので、潮風がいい影響を与えているのだろうか。
実際に口にしてみるとおいしい。口当たりがマイルドな感じがする。あの年季の入った樽で造ったものなのかな・・・。味噌はあっても困らないし、自宅に佐渡の味を土産にするっていうのも悪くないな・・・。
とはいえ、バイクなのでかさばったり、重いものは荷崩れを起こす原因となる。なので、あまり味噌はお土産としては好ましい存在ではなかったりする。う~ん、どうしよう・・・。
友人とともに迷ったが、おばさんの熱心な態度に負け、おばさんの目論見どおりの展開ってやつで、工場を出るときには二人とも荷物にならない小さいサイズの味噌が鞄の中に入っていた。
#14 味噌工場の見学 「#15 赤亀岩と猫神様」につづく