八丈島、三宅島卒業旅行記 1998 タイトル

八丈島、三宅島卒業旅行記
#1 卒業旅行へ行こう

<1998年3月>

1998年3月、学生生活の最後を締めくくる卒業旅行として、友人と3泊5日の行程で八丈島と三宅島を巡ってみました。(全17ページ)

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1、卒業旅行へ行こう

大学の授業風景のイメージ(*イラスト:タービタービさん)

(*イラスト:タービタービさん 【イラストAC】

「大学生の本分は?」と聞かれれば、迷わず「学業」と答えるのだが、私の大学時代はバイトや旅ばかりで、本分であるはずの学業は疎かになっていた。それも「かなり」と付けなければならないほどだった。

入るのは難しいが、卒業するのは簡単。それが日本の大学の現実である。なので、授業をサボって旅やバイトばかりしていても、要領よくやっていれば学科の単位を取得することができ、卒業することもそんなに難しくなかったりする。

だから授業をサボってもいいということにはならないが、あちこち旅をしようと思うと、まとまった時間と、それなりのお金が必要になる。その都合を付けようとすると、私の場合は学業を犠牲にせざるを得なかった。

例えば、学生が一番稼ぎやすいのは、夏と春の長期休暇。短期バイトをしたり、普段のバイトでも集中的にシフトを入れ、まとまったお金を稼ぐ人は多い。

大学のバイクサークルの仲間とツーリングに行ったときの写真
大学のバイクサークル

しかし、一か月単位で海外を旅するなら、その長期休暇を利用することになる。となると、大学のある日常に頑張って働き、旅費などを稼がなければならない。とはいっても、土日に少し働く程度ではお小遣い程度にしかならないし、バイクサークルに入っているので、大学のバイク仲間とバイクツーリングにも行きたい。

で、結局、無理して平日にがっつりとバイトを入れることになる。比較的時間に余裕のある大学生とはいえ、使える時間は有限。夜遅くまで働き続けると疲れがたまり、翌朝、起きれずに授業を欠席してしまったり、テスト前後は授業が少なくなるので、一日バイトを入れたりと、そのしわ寄せは学業の方へいくことになる。

アルバイトのイメージ(*イラスト:yachiさん)

(*イラスト:yachiさん 【イラストAC】

高度な学びの場を得るために、努力して大学に入り、親に高い授業料を払ってもらっているというのに、自分から学業を疎かにしてしまっては、本末転倒。何のために大学に行っているのかわからない。

そのへんは心苦しく感じることもあるが、今現在、自分の中でやりたいこと、やっておきたいことの優先順位を付けると、学業よりも見聞が広がる旅や、人生経験が積めるバイトの方が明らかに高い。

自分の中でやるべきことの序列がはっきりしていると、損をしているといった気持ちや、罪悪感といったものをあまり感じないものだ。

それに、小さい頃から学校の先生などの大人に、「時は金なり」、「光陰矢の如し」といった諺を事あるごとに言われて育ってきた。その教えを実践するなら、後悔が残らないよう、今、自分が成すべきと思ったことを全力で取り組むということは、生き方としては間違ってはいない・・・、はず。

時は金なりのイメージ(*イラスト:きくちまりさん)

(*イラスト:きくちまりさん 【イラストAC】

とはいえ、いくら言い訳をしても、学生の本分である学業を疎かにしている事実には変わりがない。学業をやる気がないのになぜ大学へ行ったの?学業と両立は出来ないの?ってことになる。

学業が疎かになってしまった理由の一つに、進んだ学科が自分と合っていなかったというのもある。現在進行形で進んでいるのが、地球の環境問題。工業化、人口増加により、様々な公害が発生し、また自然の生態系の破壊も進んでいる。

最初は一部の地域の問題だったのが、国の問題となり、今では周辺国だけではなく、今では地球規模の問題となっている。

環境破壊のイメージ(*イラスト:yumaziさん)

(*イラスト:yumaziさん 【イラストAC】

例えば、焼き畑、大規模なプランテーション、無秩序な木材の伐採によって、世界各地の熱帯雨林が急激に減少している。保水能力があり、大気の二酸化炭素を吸収する森林の減少は、地球の規模の環境変動を引き起こし、砂漠化、酸性雨、地球温暖化などの問題が起きている。

とりわけ地球全体の気温の上昇の懸念は大きく、今後は一層の地球温暖化が進み、南極や山岳の氷塊が融解し、海水面が上昇すると言われている。

海水面が上がれば水没する地域が増えたり、低地での水害が増えることになる。また気温の上昇は一層の砂漠化を進行させたり、台風などの低気圧の巨大化を引き起こすとされている。

この地球規模の環境問題に対して、私に何かできることはないだろうか。こういった大きく、複雑な問題は一つ解決しても、別の問題が起きるなど、小手先では解決しないというのは、高校や本などで学習した。やるなら大局的な視点での取り組みが必要だ。そう考え、大学は政治学科に進むことにした。

政治と金のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん 【イラストAC】

しかし、実際に政治を学び、政治に関心を寄せてみると、理想と現実の壁というのだろうか、自分が考えていたほど単純な話ではないし、政治のややこしさ、利権の醜さは自分の範疇を越えていた。

エコノミックアニマルと世界から呼ばれている日本人、そして日本経済(*バブル後、1990年代後半の話)。社会に柔軟性もないし、集団意識が強いので、なおさら身を切るような大変革は難しい。

ほんと、この国の人は自分が得するとか、目に見える場所で人が死ぬとか、強い外圧がない限り、現状を変えることをしない。なんていうか、集団の中にどっぷり浸かっているので、危機意識というものが極端に薄い。この環境の中で変革を行うのは並大抵の努力ではかなわない。とてつもない権力とか、カリスマがなければダメだろう。

そういったものを私は持ち合わせていないし、そういったことを補うだけの才能や情熱もない。私が政治を学んだところで、環境問題の改善にはつながらない・・・。そもそもとして、自分の能力や性格は政治家には向いていない・・・。自分に、社会に失望してしまうと、学業への関心も薄くなってしまうというものだ。

卒業のイメージ(*イラスト:リコさん)

(*イラスト:リコさん 【イラストAC】

まあ一度の人生。そして一度の大学生生活。専門知識をしっかり学ぶのも、旅などの好きなことに明け暮れるのも、本人の自由というもの。

机上で学ぶことも大事だが、実際に自分の目で世界の現実を見ることや、バイトをすることで社会の仕組みを知ること、学外で人間関係を築くことも立派な学びの一つ。ちゃんと卒業でき、有意義で充実した大学生活を送れたなら、それはそれでいいのではないかと思う。

と、もっともらしい言い訳をするのだが、成績が優秀ならともかく、ギリギリの成績で卒業した人間が言っては、屁理屈とか、負け惜しみにしか聞こえない。きちんといい成績を残したり、大きな成果を挙げた人間が言ってこそ説得力のあるセリフになるだろう。

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とまあ、学業をほったらかし、旅に明け暮れた大学生生活を送ってきたが、無事に4年間で卒業することができた。大学を卒業するのは簡単とはいうが、何も対策もせずに授業をサボってばかりいては、本当に留年してしまうことになる。そこまで大学も甘くはない。

親友のイメージ(*イラスト:poosanさん)

(*イラスト:poosanさん 【イラストAC】

その点においては、代返をしてくれ、ノートを見せてくれる友人の存在が大きかった。様々な格言にあるように、やっぱり持つべきは友人ということになる。それも真面目で信頼のおける友だ。それを身に沁みて感じた大学生活だった。

今日は私の卒業に多大な貢献をしてくれた友人と、「無事に卒業できた。これも君のおかげだ。」と、飲み屋で祝杯をあげていた。といっても、よく一緒に飲んでいるので、今日も、というのが適切だ。

乾杯のイメージ(*イラスト:リモンチェッロさん)

(*イラスト:リモンチェッロさん 【イラストAC】

この友人は九州出身で、九州男児の名に違わずめっぽう酒が強い。同じペースで飲むと身体に堪える。でも、卒業後は地元の九州に戻ってしまうので、こうやって一緒に飲む機会もあとわずかしかない。

卒業できることはうれしいが、社会人になってしまうと、こうやって友人と飲めなくなったり、気軽に旅に出られなくなるんだな・・・。

思えば、今までは学生ということで、比較的時間を自由に使えたし、授業をサボるなど、少々のことは大目に見てもらえていた。これが社会人になってしまうと、自由はなくなり、様々な面で責任が重くなる。税金や社会保障なども払わなければならないと、厄介なしがらみも多い。

この大学の卒業は、楽しかった大学生生活の終わりであると同時に、長く浸っていた学生という特権身分からの卒業ということになる。そう考えると、卒業することに寂しさや抵抗を感じてしまう。

羽ばたくイメージ(*イラスト:ニジンさん)

(*イラスト:ニジンさん 【イラストAC】

とはいえ、いつまでも学生をやっているわけにもいかない。いつかは学生から社会人へと羽ばたかなければならないのなら、みんなと一緒に羽ばたいておいた方が気持ち的に楽というもの。

そうだ。学生時代の最後の締めくくりとして卒業旅行ってなものにでも行ってみるか。最後の悪あがきみたいな感じになるが、最後は旅で締めくくっておけば、社会人になる心的不安も和らぐだろう。

酒の席で、「せっかくだから。卒業旅行にでも行ってみる?」と友人に話をすると、「そりゃいいな。大学最後の思い出作りに是非行こう」と、会話が続いたところで、今回の旅が始まった。

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