八丈島、三宅島卒業旅行記 1998 タイトル
八丈島、三宅島卒業旅行記

#11 猛烈な春の嵐

1998年3月、学生生活の最後を締めくくる卒業旅行として、友人と3泊5日の行程で八丈島と三宅島を巡ってみました。(全17ページ)

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11、猛烈な春の嵐

ビックリして目覚めるイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

朝方、風の音で目が覚めた。外では風がゴォーと地鳴りのような音をたてて吹き、部屋の窓などがガタガタと大きな音をたてて揺れている。まるで強烈な台風の直撃を受けたかのよう。

あまりに大きな音なので、眠りについても、またすぐ目が覚めてしまう。その繰り返しが続いたので、ぐっすりと眠ることができなかった。

朝起きても状況は変わっていなく、今も頻繁に外から風の吹く音が聞こえ、建物が揺れる感じもする。泊まっている民宿は鉄筋コンクリート製の建物。それでも少なからず恐怖を感じるので、木造の建物だったら恐怖そのものだろう。本当に強い風が吹いている。

突風が吹いているイメージ(*イラスト:やまぐちこよさん)

(*イラスト:やまぐちこよさん 【イラストAC】

恐る恐る窓を開けてみると、雨は降っていないが、風が強烈。少し先にある大きな木が強風にあおられ、折れそうなほど曲がっていた。空を見上げると、雲は多いものの、青空が所々で見えている。雨の方は心配なさそうだけど・・・、なんかよくわからない天気だな。

テレビのスイッチを入れて天気予報を見ると、猛烈な春一番が吹いているとか何とかで、関東全般に強風注意報が発令されていた。こんなに風が強いけど船は大丈夫だろうか。今日はフェリーに乗って三宅島へ行く日。それが一番の心配だ。

八丈島の地図 地理院の地図
伊豆諸島の地図

国土地理院地図を使用

朝食を食べに広間へ行った時に、「今日は船が揺れそうですね・・・」と宿のおばさんと話すと、

「そうだね。これだけ風が強いとかなり揺れるだろうね。覚悟しておいた方がいいよ。」と、同情するような笑顔で言い、加えて「こういう日は船は遅れて到着することが多いよ。結構遅れるんじゃないかな・・・。あっそうそう。八丈島では風向きによって東と西の港を使い分けるから気をつけてね。」と、教えてくれた。

おぉ~、危ない、危ない。反対の港に行ったりなんかすると、待ちぼうけで船に乗れないといった漫画のような展開になってしまう。

町内放送のイメージ(*イラスト:K-factoryさん)

(*イラスト:K-factoryさん 【イラストAC】

部屋に戻り、荷物の準備をしながら待っていると、島の放送が外から流れてきた。船は昨日と同じ底土港に着き、遅れて到着するとのこと。飛行機は午前便、午後便ともに飛ばないというアナウンスだった。

遅れるとわかったなら、港に早く行ってもしょうがない。でも何分遅れるかわからないから、まあ本来の出発時間に港に着くようにして、のんびりと船を待てばいいか。

宿のおばさんにも船のことを確認してみると、「かなり遅れると思うから、もっとゆっくりしていても大丈夫よ。船の到着はさっき流れた島の放送で知らせてくれるから、放送が流れから港へ向かうといいよ。それでも十分に間に合うから、それまで部屋でゆっくりしていなさい。」とのこと。

しかし、慣れない土地。いつ鳴るかわからない放送を気にしながら部屋で待機しているよりも、港で待機しているほうが気分的に落ち着きそうだ。まだお土産も買っていないし・・・。ということで、島の人の感覚では早めに港に向かうことにした。

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「お世話になりました」とおばさんに伝え、宿をチェックアウトした。外に出てみると、生暖かい南風が強烈に吹いていた。

空を眺めると、雲ってこんなに速く動けるもんなんだ・・・と、驚くぐらいのスピードで雲が流れていく。これはきれいかも・・・。まるで空という壮大なキャンパスで繰り広げられる雲の演劇といった感じだ。

突風の中を歩くイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

とはいえ、あまり空に感動ばかりしていられない。逆風になると前に進まないし、順風になると前につんのめってしまうほど風が強い。

風が強いだけならまだしも、たちの悪いことに風の向きが時々入れ替わることがある。前方から吹く風に前かがみになって進んでいると、突然、後ろから吹いたりする。前に体重がかかっているときに、いきなりドンと背中を押されるのと一緒なので、前につんのめって転びそうになる。

手には大きな旅行鞄を持っているのだが、これもなかなか厄介。強風の中で傘を差したら危ないのと一緒で、鞄も手に提げて持っていると、簡単に風で飛ばされそうになる。というか、風に引っ張られる。まるで風が荷物をひったくっていこうとするかのよう・・・。

ほんと、この状況は危険。よそ見をしていたり、気を抜いていると、風にあおられて転倒しそうになる。なるべく空気抵抗を少なくするために鞄を抱っこするように抱え、身体は少し前かがみで丸めるようにし、ゆっくりと確実に地面を捕らえるように歩いた。

波の高い海面 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
波の高い海面

風が強く、波が高い状態でした。

港付近の岸壁 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
港付近の岸壁

海岸付近に出てみると、想像以上に海が荒れていた。白い波が沢山見え、岩にたたきつけた波しぶきが豪快に上がっている。

天気予報では春一番だとか言っていたけど、春一番にしては強く吹きすぎではないか。まるで雨の降らない台風のよう。こんな日に船に乗ることになるとは・・・。まったく付いていない。ひどく船酔いしそうだ。酔うだけならまだいいが、まさか転覆なんてしないよな・・・。自然と最悪なケースが頭をよぎり、気が沈んでくる。

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港に着くと、待合室では大勢の人が待っていた。船の方は・・・。まだ到着していないようで、桟橋に姿がない。海上の方へも目をやるが、海上にも船は見当たらない。

かなり遅れているんだな。宿のおばさんの予想通りだ。さすが長年宿をやっているだけはある。どれくらい遅れているのだろう。確認のために係りの人に状況を聞いてみると、「申し訳ありませんが、強風の為にかなり遅れています。まだ1時間以上はかかるかと思います。」とのこと。

黄八丈の人形 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
黄八丈の人形

まだ当分到着しないな・・・。宿のおばさんの言うとおりに、宿で待機していればよかったかな・・・。まあとりあえず、まだ八丈島のお土産を買っていないことだし、のんびりと港付近にある土産屋を物色するか。

時間をつぶしがてら、港付近にあるお土産屋に入ると、せっかく八丈島に来た事だし、次来る事はたぶんないだろう・・・なんて思ってしまい、土産物をどっさりと購入してしまった。時間があるというのも考え物だ。

荒れる海でのダイビング 八丈島、三宅島卒業旅行記の写真
荒れる海でのダイビング

30分ほどして港に戻るものの、船が到着する気配を感じられない。水平線を目を凝らしてみても船の姿はなく、まだしばらく待たされそうだ。

桟橋の向こうを見ると、この悪天候の中、ダイビングに向かう人々がいた。こんな悪条件の中でダイビングをしても大丈夫なのだろうか。それとも水の中は静かなのだろうか。

ダイビングをした事がないのでよくわからないけど、普段よりも危険そうなのは確かな気がする。きっと時間がないから無理してでも潜りたいのだろうな・・・。我々も時間がたっぷりあれば一日船に乗るのを延ばしたいし・・・。

八丈島、三宅島卒業旅行記98'
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