八丈島、三宅島卒業旅行記 1998 タイトル
八丈島、三宅島卒業旅行記

#13 たどり着いたら・・・

1998年3月、学生生活の最後を締めくくる卒業旅行として、友人と3泊5日の行程で八丈島と三宅島を巡ってみました。(全17ページ)

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13、たどり着いたら・・・

船室で寝ているイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん 【イラストAC】

気持ちよく寝ていると友人に起こされた。「もう着くよ」との事。そうか。着くのか。船に乗ってからは酔い止めがすぐに効いたようで、ずっと熟睡していた。

無事に着いたようで何より。沈没しなかったし、船酔いもしてない。よかった。よかった。さて下船の準備をするか・・・。

ん!?寝ぼけた頭で起きあがったものの、なんだか友人の顔がいたずらっぽく笑っているのが気になる。これは何か隠しているな。大学4年間の付き合いなので、こういったことは表情で分かる。

企むイメージ(*イラスト:ゆるこさん)

(*イラスト:ゆるこさん 【イラストAC】

「どこに着いたと思う。」「えっ、どういうこと・・・?」「八丈島だよ。」「うげっ、戻ってしまったのか・・・。八丈島に・・・」

色々と覚悟を決め、頑張って船に乗ったというのに・・・。元の場所に戻ってしまったのか。しんどい思いをしたのは何だったのか・・・。双六で、理不尽にスタートに戻されてしまったのと同じではないか。悪い冗談だよ。本当に・・・。目覚めてすぐ告げられた言葉に愕然としてしまった。

八丈島の地図 地理院の地図
八丈島の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

一体何がどうなってこうなったんだ。少し混乱しながら友人に尋ねると、出航してしばらくしたら船が上下左右にすごい揺れて大変な状態になったとか。そして、「波が高すぎて安全な航海が続けられませんので、八丈島に戻ります。」とアナウンスが流れ、こうなってしまったようだ。

波にもまれる船のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん 【イラストAC】

そんな酷い状態だったんだ。全然気がつかなかった・・・。船が航海を続けられないというほどだから、よっぽどひどかったに違いない。

って、もしかしてそのまま沈没していても気が付かずに私は寝ていたのか・・・。そう考えると酔い止めの薬も恐ろしいな。

いや、それよりもその揺れの中を平然と過ごしていた友人はなんなんだ。そのことの方が驚く。すごい平行感覚をしているな。

「一体どこでそんな才能を身に付けたのだ?」と聞くものの、本人も生まれつきかな・・・と、よく分からない様子。過酷な移動の多い旅人にとって喉から手が出るほどうらやましい才能だ。

島流しのイメージ(*イラスト:K-factoryさん)

(*イラスト:K-factoryさん 【イラストAC】

それにしても・・・、今回の旅行を行うあたって、友人などに「八丈島に島流しに行ってくる。」と冗談半分で言っていたのだが、現実となってしまった。ある意味、有言実行ってやつになるのかな・・・。そう考えると笑ってしまうものの、できれば初めから船に乗らず、一日のんびりと八丈島で過ごしていた方が良かったに違いない。

そんなに悪いことをした覚えはないのだが、なんか罰ゲームみたいな一日だな。本当に・・・。

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下船すると、他に行く当てもないので、再び同じ宿に向かった。朝、風に飛ばされそうになり、悪戦苦闘した道だが、幾分風が収まってきたたようで、朝よりは歩きやすい。ただ、揺れる船の中にいたせいか、酔い止めの薬が残っているのか、足取りが少しふらつく感じがする。

宿に入ると、すぐにおばさんが出てきて、「大変だったね」と笑顔で迎えてくれた。船が戻ってきた事は既に放送で知っていて、我々が戻ってくるのを待っていてくれたようだ。

出迎えてくれた宿のおばさんのイメージ(*イラスト:きのこさん)

(*イラスト:きのこさん 【イラストAC】

お茶を飲みながら宿のおばさんと話をしていると、船が欠航となる事は珍しい事ではないけど、一旦八丈島を出発した船が八丈島に戻ったり、八丈島で船が一晩明かすという事は、連絡船が就航して以来初めての出来事だとか。

なんと我々は運がいい。地元の人でも経験したことがないようなことができたのだから・・・。って、強がってみても虚しいだけ。でもまあ、宿で一息入れながら今日の出来事を考えてみると、無料で荒波をクルーズできたので、ちょっと得したともいえるのかな。

この後も特にすることもなかったので、まったりとしていたら、おばさんの八丈島の暮らしはね・・・。離島の暮らしはね・・・。という不便な話、不満な話が始まってしまった。

愚痴を聞かされるイメージ(*イラスト:カフェラテさん)

(*イラスト:カフェラテさん 【イラストAC】

おばさんとの話が終わると、部屋に戻り、友人と「これからどうしようか」と会議。あまり動きたい気分ではないけど、まだ日が明るい。せっかく旅をしに来たので、何かしなければ時間がもったいなく感じる。

ガイドブックや観光パンフレットをめくると、八丈島歴史民俗資料館が目に止まった。ここなら歩いて行ける。ちょっと行ってみるか。

友人とふらふらとした足取りで資料館へ向かった。相変わらず風が強いけど、少し収まりつつあるような気がする。明日は大丈夫そうかな。

八丈富士を見上げると、強い風と共に豪快に流れる雲が八丈富士にかかってきれいだ。写真に撮っておこう・・・・。あっ、カメラ宿に置いてきてしまった。なんだか頭の中もふらふらしている。今頃になって船酔いになったとか・・・。いや、きっとまだ酔い止めの薬が残っているのだろう。

歴史民俗資料館のパンフ
歴史民俗資料館のパンフ

資料館を訪れると、古い建物の中に縄文弥生時代の遺跡の出土品やら島流しの流人文化についての展示があった。八丈島も色々あったんだな。島流し状態となって展示を眺めてみると、色々と実感できる部分もあったりする。

資料館を見たら他にすることがなくなり、宿に戻った。やっぱり揺れる船に長い事乗っていたので、体の調子がいまいち。宿でゆっくりしていよう。

今日は飛行機も強風の為欠航。八丈島では朝の飛行機(地元では1便と言っていた)で新聞とかが運ばれてくる。

飛行機が飛ばなければ、新聞などの生活物資が届かない事になり、一時的にしろ隔離された島になってしまう。また台風などで船が何日か運休となれば生活物資が届かなくなったり、人の行き来がなくなる。

離島への船便のイメージ(*イラスト:あきゆさん)

(*イラスト:あきゆさん 【イラストAC】

昨日、スクーターで島を周った時には、離島といっても道がいいし、スーパーはあるし、ちょっと不便なだけじゃないかと思ったけど、実際にこのような体験をしてみると、「離島で暮らすのは色々と不便なことも多いのよ」と宿のおばさんが言うのもわかる気がした。

予定外のアクシデントだったけど、離島で暮らす人の目線に少し近づくことができたいい機会でもあったのかな。これぞ本物の体験型の旅というやつだな。そういう機会を引き当てるとは、旅人冥利に尽きるというもの。

なんてポジティブに思ったりもするが、もう二度とあんなに揺れる船には乗りたくはない・・・。

八丈島、三宅島卒業旅行記98'
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