旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

旅人が歩けばわんにゃんに出会う
海外編 カンボジア

カンボジアで出会った猫や犬の写真を紹介しています。

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1、路上の屋台とワンコ(2001年9月)

カンボジアの地図のイメージ(*イラスト:ナロンエースさん)

(*イラスト:ナロンエースさん 無料イラスト【イラストAC】

東南アジアのタイとベトナムの間にカンボジアがある。日本人旅行者にとって、タイは古くから人気の国で、ベトナムは最近人気となった国。その間にあるカンボジアは・・・、現在でも印象の薄い国のまま。世界最大の仏教遺跡アンコールワット遺跡がある国というぐらいしか、思い付かない人も多い。

カンボジア アンコールワットの遺跡の写真
アンコールワットの遺跡

カンボジアが印象の薄いのには少々訳がある。隣国で起こったベトナム戦争が終結したのが、1975年。その後、カンボジアではポルポト政権が誕生するのだが、これがとんでもない独裁政権だった。

政権に反抗するものを片っ端から捕まえ、捕虜収容所に送り、拷問の末に虐殺。その数が170万の人というから、人の所業とは思えない。国は混乱し、その後に起こる内戦の死者を含めると、200万人以上が亡くなったとされている。

カンボジア ポルポト派の捕虜収容所の写真
ポルポト派の捕虜収容所

そのポルポト政権が転覆した後、復興と、民主化が進められ、1992年には自衛隊が国連平和維持活動(国連PKO)として派遣された。自衛隊創設以来、初の大規模海外派遣ということで、大々的にマスコミで報じられ、模擬試験や受験のテストにも頻繁に登場した。この時代を受験生として過ごした人(私のこと)は、カンボジアといえばPKO、と連想する人も多いと思う。ほんと、よくテストに出てきた。

その後は民主化が進められていくものの、貧困や治安、インフラの未整備などの問題があり、日系企業が積極的に進出することはなかった。治安の問題から、アンコールワット以外を訪れる旅行者も少なく、日本との関係性が薄ければ、話題に上がることも少ないというもの。

それに、経済的な事情からスポーツや芸術などの国際舞台で活躍する人材も育ってきていない。国の名が報じられる機会が少ないので、印象が薄くなってしまうのもしょうがない。

カンボジアの道の写真
カンボジアの道

私がカンボジアを訪れたのは、2000年と、2001年。内戦からは少し時間が経ち、外国人がようやく自由に国土を移動できるようになった時期になる。比較的落ち着いていたが、まだまだ復興途中といった雰囲気で、貧しさということを随所で感じた。

特にひどいと思ったのが、道路。カンボジアを訪れて、何が一番つらかったかというと、移動。とにかく道が悪かった。

道がちゃんと舗装されているのは都市部だけ。それ以外は主要幹線道路でも舗装されていなかったり、舗装されていても穴ぼこだらけといった状態。移動する度に苦痛に耐えなければならなかった。

カンボジア メコン川の渡船の写真
メコン川の渡船

貧しい国を訪れているのだから、それぐらい文句を言わずに我慢しろよ。確かにその通りだ。文句を言ったら罰が当たる。でも、道は真っすぐでも絶えず穴をよけながら蛇行するので、気持ち悪くなるし、穴にはまれば上下に体がバウンドする。

急に激しい揺れとなるので、油断していると、頭や肘、足をなどを、窓や肘置き、前の座席にぶつけて、打ち身やたんこぶができる。同じ体勢でいると、お尻も痛くなる。これを耐えるのはなかなかきつい。おまけにスピードを出せないから、移動にはめっぽう時間がかかる。

カンボジア スタックするピックアップトラックの写真
スタックするピックアップトラック

更に厄介なのが、雨量の多いスコールがあること。道がぬかるむと、スタックして動けなくなる。なので、区間によっては移動手段が4WDのピックアップトラックとなり、乗客は荷台に乗り込むことになる。これまたよく揺れるし、油断していると、外に放り出されそうになる。

乗り物に乗れば、誰でもダンスを踊ってしまう道。「カンボジアの道はダンシング・ロードだ」というのは、旅行者の間でよく使われていた皮肉。誰が言いだしたのか知らないが、なかなかうまいことを言うものだ。ちゃんと舗装されている道路のありがたさをしみじみと感じた国だった。

カンボジア 路上の屋台とワンコの写真
路上の屋台とワンコ

幹線道路(Between Phnom Penh and Siem Reap)、Cambodia Sep.2001

道が悪いので、移動に時間も体力もかかる。運転手はもちろん、乗客も然り。必然的に休憩も頻繁に行われるのだが、気の利いたサービスエリアとか、ドライブインはない。

小さな村の小さなお店の前で停車することも多かった。それはそれで各駅停車の旅をしているような感じで、素朴なカンボジアを見ることができてよかったように思う。その時に見つけた屋台とワンコ。犬が痩せているのが気になるが、人間もここでは痩せた人が多いので、あまり違和感がない。

ちなみに、カンボジアでは犬食の文化がある。内戦中は犬も食料になり、辛い思いをしたのだろうな・・・。ということは、どうしても頭に浮かんでしまう。

カンボジア 橋の補修の写真
橋の補修

強盗以外で手っ取り早く収入を得る方法。原始的な商売として女性の売春がよく上がるが、通行人から通行料をとるといったことも古くからある。

とはいえ、普通の道で勝手にそんなものを徴収しても、誰も払わない。でも、それがスタックしたときとか、橋が壊れて通りにくい場合には、そうもいかない。

Road Cutとか、道路カットというのだろうか。ちゃんとした呼称は分からないが、道路をぬかるませ、はまった車両を復旧させるお礼にお金をもらう。橋などを補修し、車が来たら板を置き、通行させて、お金をもらう。車がいなくなったら、また壊す。

アジアでは古くから広く行われていた行為で、舗装された道路を壊す場合もあり、国も頭を悩ませる問題でもあった。そういうことを大々的に行われていた最後の国が、カンボジアになるだろうか。

カンボジア 水掛祭りの写真
水掛祭り

仕掛けた罠にはまると、罰金のように通行量をとられる。こんな理不尽なことが許されていいのか。と、乗客ながらに憤ってしまうのだが、払っている運転手に聞くと、「貧しい人たちだからしょうがない」「持ちつ持たれつというものだ」「こういう道路だし、雨も多い。本当に困ったときには助けてもらわないとダメだから・・・」と、そこまで気にしていない様子。辛い内戦を生き抜いてきた人たちは、寛容力が違う。

現在では、各国の援助で、立派な道ができ、メコン川にも橋が架けられ、カンボジア国内の移動が楽になったと聞く。きっとこういうこともなくなったのではないだろうか。

2、水先案内ワンコ(2001年9月)

日本は四季のある国。桜が咲き、新緑が芽吹く春、緑の濃い夏、葉が色付く秋、葉のない寂しい冬と、近所の公園を訪れたとしても、季節によって趣きが違い、気温や日差しを含め四季の変化を楽しむことができる。

カンボジア 老ロ脇の木の下で雨宿りする写真
雨宿り

カンボジアの場合は、日本の夏のような気温が、一年中続く。気温の変化がほとんどないので、日本の四季のような変化はない。

ただ、雨季と乾季といった明確な変化があり、雨季になると、まあ当然だが雨が多くなり、湿度も高くなる。とはいえ、日本の梅雨のように、毎日朝から晩まで雨が降り続くというわけではない。

東南アジア全般に言えるが、こちらの雨季は、夕方近くになると雲が多くなり、空が暗くなったと思ったら、滝のようなスコールが降るといったもの。昼間は雲は多いが、晴れていることが多い。

日本でいう夕立ちのような降り方をするので、観光で訪れる分には雨季でもそこまで影響がない。ただ、スコールが降ってきたら何もできなくなるし、朝日や夕日を見られる確率は低い。水溜まりなども多くできるので、遺跡などを訪れた場合、足元がぬかるんでいるといったことは覚悟しておいた方がいい。

カンボジア 雨季に水没した木々の写真
水没した木々

結局、スコールが降るだけで、雨季も乾季も対して変わらないんじゃない、ってことになる。実際、観光客が撮った写真を見ても、雨季なのか、乾季なのか区別が付かないだろう。

でも、しっかりと比べると、けっこう景色が変わるのが分かる。例えばカンボジアで最大の湖はトンレサップ湖になるが、雨季には乾季よりも面積が3倍に増える。

その他にもカンボジアには湿地帯が多く、雨季になるとそういった場所が水没し、湖のようになるので、雨季と乾季とで、印象が結構違ってくる。

カンボジア 高床式の家の写真
高床式の家

私は二度カンボジアを横断した。最初は乾季で、バスで移動しながら、ここでは高床式の住宅が多いんだなとぼんやりと眺めていた。

二回目は雨季だったのだが、あちこちが水没し、風景が違うことに驚いた。そして、なるほど高床式の家でないと、ダメなんだなと納得できた。

カンボジア 水が残る道路の写真
水が残る道路

スバイリエン(Svay Rieng / ក្រុងស្វាយរៀង)、Cambodia Sep.2001

バスの休憩で、ベトナムとの国境から一つ先の町、スバイリエンに立ち寄った時のこと。昨日大雨が降ったようで、あちこち水浸しになっていた。ここでは当たり前の出来事になるようで、気にしている人はいない。

カンボジア 小船とワンコの写真
小船とワンコ

スバイリエン(Svay Rieng / ក្រុងស្វាយរៀង)、Cambodia Sep.2001

バスの出発の時間まで少しあったので、水の溢れている路地に入って行くと、いきなり道はなくなり、その先は沼のようになっていた。乾季には道路でも、雨季には水路に様変わりということも、よくある話なのかもしれない。

ちょうど船に乗っている女性がいた。水が多い時は船が足がわりに必須となるのだろう。その横にワンコがいて、女性と一緒に行きたそうにしている。船に乗せるのかなと思ったら、ワンコはそのまま水の中へじゃぶじゃぶと入っていった。

カンボジア 小舟の水先案内をするワンコの写真
水先案内

スバイリエン(Svay Rieng / ក្រុងស្វាយរៀង)、Cambodia Sep.2001

ワンコは水の中を進んで行き、船の前へ。まるで水先案内人のようにエスコートしていく。

近所の野良犬になるのか、飼い犬になるのかわからないが、私が飼い主だったら、うれしいような、泥水に浸からないで欲しいような、複雑な心境になっていそう・・・。

それよりも、さすがにワニはいないよね・・・。ここ。目の前でワニの餌になったらたまらない・・・。あるいは、水から上がってみるとヒルが沢山引っ付いていたりしたら、卒倒してしまいそうだ。

このワンコの泳ぎが気になるが、バスの出発時間が迫っているので、バスに戻ることにした。

カンボジア 柄杓型の小舟の写真
柄杓型の小舟

最後に、木をくりぬいた杓子型の船があったので、写真に撮ってみた。カンボジアの旅では、道が恐ろしく悪かったり、目をそむけたくなるような貧しさや、博物館では目を覆いたくなるような残虐行為の展示があったりと、辛く感じる場面が多かった。

でも、人々が素朴な環境の中で逞しく生きている様子は、人として美しく感じたし、見習わなければなと思うことも多かったように思う。

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