旅人が歩けばわんにゃんに出会う
海外編 ベトナム北部2(ハノイなど)
ベトナムで出会った猫や犬の写真を紹介しています。
1、ハロン湾の水上ワンコ(2000年2月)
ベトナム観光のハイライトの一つが、首都ハノイの東方にあるハロン湾。ベトナムには世界遺産が8つあるが、フエの歴史的建造物に次いで2番目に選出されたのが、このハロン湾になる。
ハロン湾とは、その名の通り海にある湾になるのだが、ここの特徴は広大な湾内に大小2千の岩山が海面から突き出ていること。
あるものは島のように大きく、あるものは岩山のように小さく、またあるものは変わった形をしていてと、様々。そのような島々が重なり合った湾内の様子は素晴らしく、世界中の観光客を魅了している。
ハロン湾の観光は陸上から眺めることもできるが、それでは物足りない。クルーズ船に乗って湾内を遊覧するのが一般的だ。
クルーズ船は島々を縫うようにしながらハロン湾内を遊覧していく。船で動きながら見る場合、奥の島、手前の島が重なったり、ずれたりと、奥行きのある風景を楽しむことができるのがいい。
天候はそれぞれの良さがあると思うが、小雨の日に訪れた私から言わせてもらえば、晴れたほうが絶対にいい。遠くが見えないと楽しさも半減してしまうからだ。
湾であること。島々が多いということは、海が穏やかということになり、絶好の漁場となる。クルーズの最中に漁をしている漁船と頻繁にすれ違った。
そして島の陰などには、水上で暮らす人々の家が浮かんでいた。それなりに水上生活者が多い土地になるようで、クルーズ中に結構な数の水上の家を目にした。
水上の家というと、家型の船というか、筏が浮かんでいる様子を想像すると思うが、それは上級な水上の家。もっと原始的な小舟で暮らす水上生活者の姿もあった。まだこの頃のベトナムは貧しかったので、ギリギリのラインで暮らしている人がそれなりに多くいるというのが現状だった。
クルーズツアーの途中で、水上で暮らすワンコを発見した。こんなところにワンコがいるなんて・・・というのが、率直な感想。
経済的にあまり余裕のないベトナムだと、犬は番犬として飼われていることが多い。畜産とかなら相性がいいが、漁業ではどうなんだろう・・・。水上の上だと番犬としての役割は果たせるのだろうか。いないよりはましとは思うが・・・。そんなことがすぐに頭に浮かんでくる。
この犬の実際の役割は分からないが、飼い主の子供は物売りをしていた。クルーズ船が鍾乳洞のある島に到着すると、ボートをこいでクルーズ船に近づき、物を売り始めた。
携えているバスケットを見せてもらうと、お土産に、お菓子に、飲み物に、タバコが入っていた。欲しいものはタバコぐらいか・・・。
「タバコいくら?」「300」「えっ、普通の三倍もするの・・・」「ちょっと高いな。もっと安くしてよ。」「250」「う~ん、もうちょっと」「じゃ、200」う~ん、二倍か・・・。海の上とはいえ二倍払ってタバコを買うのもな・・・。根っからの貧乏性なので、ためらってしまう。
どうしよう。150ぐらいでと思っていたので、もう一声かけるか・・・。と思ったらワンコの心配そうな顔が後ろの方で見えてしまった。そんな顔で見つめるなよ。悲しそうな犬の顔にはどうも弱い。
分かった200でもらうよ。頼むからワンコ。そんな心配そうな顔をするな。ちゃんとご主人様に利益が出るようにタバコを買ったぞ。って、わんわんホイホイってな客寄せが役割だったのか。おまえは。
2、ハノイ旧市街のワンコ(2001年10月)
ベトナムの首都は北部にあるハノイ。南部にあるホーチミン・シティーの方が、経済や町の規模が大きく、よくその名を耳にするので、ホーチミンの方が首都だと間違えてしまう人も多いようだ。
ホーチミンに経済規模では負けていても、ハノイはベトナムの政治文化の中心になる。人口もホーチミン市に次ぐ2番目。人口が多く、大きな町であることには変わりがない。
このハノイの町は、首都とか、大都市らしくない落ち着いた雰囲気を持っている。そう感じてしまったのは、町の中心に個性的な旧市街があるからだろう。
旧市街一帯は細い道が入り組み、通りには古い商店がずらっと並んでいる。歩いていると、下町的な人情味あふれる光景を多く感じた。東京でいえば千駄木辺りの商店街がひたすら続いているといった感じになるだろうか。
この旧市街を特徴づけているのが、同業組合ごとに区分されていて、通りごとに金物屋とか、乾物屋とか、面白いところでは墓石屋とか、同じ業種が集まっていること。俗に、ハノイ36番地(36通り)と呼ばれることも多い。
なので、歩いていると、通りごとに雰囲気がガラッと変わって面白い。散策好きな人間にとっては、手軽に色んな味を少しずつ食べられるクッキーの詰め合わせのような町になるだろうか。本当に歩いていて楽しい町だった。
そんなハノイの旧市街を散策中にワンコを発見した。光加減がいい。そして背景も情景もベトナムらしい。慌ててカメラを出してスナップしたものの、上を見ておねだりをしていた犬は、与えられたものを食べ始め、下を向いている写真になってしまった。
スナップは難しい。特に猫よりも動きのある犬はシャッターチャンスだと思っても3秒後にはそうでなくなっていることが多い。
3、池の主に出会う(2000年2月)
町を散策していると、様々な動物に出会う。犬や猫は定番だが、東南アジアでは猿もよく目にするし、インドやネパールでは牛、中東ではラクダが普通に町中を歩いていたりする。でもこういった家畜は想定内。旅をしていると、もっととんでもないものに出会ったりもする。
ハノイ滞在中のことだが、細菌性食中毒になってしまったようで、一日半ほど寝込んでしまった。でも、しっかりと休んだおかげで、だいぶん回復した。
まだ時々お腹がゴロゴロ鳴ることがあるが、刺すような痛さとか、しんどさはなくなり、トイレへ駆け込むこともなくなった。頭の熱も下がり、ボーとすることもなくなったので、もう心配はしなくてもよさそうだ。
まだ体調は万全じゃないけど、宿で寝てばかりいるのもよくない。少し外の空気を吸ったり、歩いたほうが治りもいいに違いない。ということで、宿からさほど離れていない場所にあるホアンキエム湖でくつろぎながら過ごすことにした。
ホアンキエム湖はハノイの中心部にある湖で、池の周囲は公園になっている。ハノイ市民にとって一番有名な憩いの場になるようで、いつ訪れても池の周囲でくつろいでいる人が多い。
ゆっくりと池の周回を周る遊歩道を歩いていくのだが、同じアジア人と言えども日本人が歩くと目立つ。物売りが次から次へと声をかけてきた。
いつもだったら相手にすることはないが、今日は暇な身。からかい半分で売り子の相手をしたり、まず当たることがなさそうなくじを買ってみたりしながら、池を半周した。
池を半周したところで、何やら先の方で人だかりができ、雑然とした感じになっている。様子がおかしい。何か事故でもあったのか。
そばまで行ってみると、みんな池の方を見ている。水死体が上がったとか、身投げでもあったのか・・・。日本的にそんなことを思いつつ、みんなが見ている方向を見ると、何かが浮かんでいる。
やっぱり水死体・・・。いや、みんなの落ち着き具合や、楽しそうな雰囲気からいって違う。よく目を凝らしてみると、何か生き物が泳いでいるようだ。
死体ではないことに安心しつつ、一生懸命に目を凝らして水面を見つめるが、何の生物だかわからない。そうだ望遠レンズで・・・。とカメラに望遠レンズを取り付けて覗いてみても、あまり変わらない。大ナマズとか、アマゾンにいるような伝説的な巨大魚だろうか・・・。
周囲のベトナム人に交じってしばらく見つめていると、少しこっちに近づいてきた。水面から顔を出しているけど、何だ・・・。ワニにしては顔が小さいし、魚だったらこんな感じでずっと水面にいないよな。もしくは体が弱って酸欠状態でアップアップしているとか・・・。
あっ、もしかしてホアンキエム湖のホッシーとか・・・などと、色々と頭を巡らせるが、ない知識を絞ったところで解決するはずもない。見たことのない生物かもしれないし・・・。
なんの生物か分からないが、それよりも気になるのが、池を見つめるベトナム人たちの熱心なこと。
池に生き物がいるというだけで、どっからこれだけの人数がわいてくるんだ(この時代は携帯電話が一般的ではなかった)。ベトナム人って暇なんだな・・・。そんなことを思って見つめていると、また池の中心の方へ離れていってしまったので、その場を後にすることにした。
後で知るところによると、ホアンキエム湖に住む伝説の大亀だったようだ。「伝説のカメが現れたぞ!」ってな感じで、一目その姿を見ようと、これだけの騒ぎになったらしい。
亀の種類はシャンハイハナスッポン。淡水にすむ亀では最大を誇る。カメといえば独特な模様の甲羅があって、丸っこい感じで・・・としか知らなかったので、のっぺりと恐竜のような姿をしているスッポンを、亀だと認識できなかったのもしょうがない。恐らく日本人の多くがこのカメが泳いでいても亀だと教えられない限り亀だと認識できないと思う。
ちなみに・・・、おそらくこの個体だと思うが、2016年1月に死亡しているのが見つかった。日本でもニュースになったので覚えている人もいるだろう。その個体は剥製になって、現在は池にある玉山祠で展示されているそうだ。
今思えば、池の主が遥々日本からやって来た私に会うために、不思議な力で私を腹痛にしたのではないか・・・。そんなことを妄想してしまうような偶然で、不思議な池の主との対面だったように思う。
海外編 ベトナム北部2(ハノイなど) ベトナム中部につづく