旅人が歩けばわんにゃんに出会う
海外編 香港
香港で出会った猫や犬の写真を紹介しています。
1、ビルの谷間のワンコ(深水埗 2000年1月)
香港と聞くと、高層ビルが密集した町並みを思い浮かべる人が多いだろう。観光パンフレットなどに使われる写真も、香港島と九龍半島を隔てた海峡沿いに並ぶ高層ビル群や、香港島・セントラルのビジネス街、九龍半島南端の繁華街の華やかなビル群が使われることが多い。
実際に香港の町を歩いてみると、そういった商業地区や繁華街だけではなく、少し中心から離れた住宅地でも、高層マンションが所狭しと建ち並んでいて、香港の凄まじい人口密集ぶりに驚く。そして、あまりのビルの多さに圧迫感や息苦しさを感じてしまう。
香港の下町と言われているのは、深水埗。古くからの市場や商店が多い地域で、古き良き香港を感じられる場所の一つ。
その深水埗を散策しているときのこと。雑然としたビルが建ち並ぶエリアを歩いていると、ビルの合間の狭い路地にワンコがいるのに気が付いた。
この路地には、引越しなのか、普段からこういうものなのかわからないが、古くなった家財道具が散乱していて、それに混じるようにしてワンコがいた。
これはいったいどういった状況なのだ。カオスな状況に頭が混乱する。思わず立ち止まると、ワンコは私の方へおもむろに寄ってきた。そして、悲し気な様子で見つめてくる。
「ワンコ、お前も捨てられてしまったのか・・・」 周囲の様子、ワンコのみすぼらしさや元気のなさからから、そういった状況が頭に浮かび、同情の気持ちがこみ上げてきた。
一緒に連れて行ってあげたいところだが、私には人生をかけた旅がある。犬連れでは宿に泊まれないし、国境も越えられそうにない。ごめんよ。と、頭をなでてあげるのだった。
ちなみに、この写真は1年かけてユーラシア大陸を横断するぞ!と、日本を旅立って5日目に撮ったもの。そして、この旅で最初に撮ったワンコの写真になる。
出発する前、海外では狂犬病が怖いので、狂犬病に対する人間用のワクチンを打つか打たないかで迷った。
狂犬病というのは、狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりすることで発症する病気で、すぐに病院で適切な処置をしないと、ほぼ100%致死にいたるという大変恐ろしい病気だ。
なので、アジアとか、南米とか、アフリカとかを長く旅をする人は、狂犬病のワクチンを日本で打ってから旅立つ人が多い。
保険適用外なので、結構な値段がするけど、死んでしまっては元も子もない。安心して旅をするためにも接種しておこう。迷った末、そう決断するのだが、全部で3回接種しないと効果が望めないことを知らなかった。
出発までそんなに日にちがなかったので、今から接種を始めても3回目を打てずに出国することになってしまう。高いからと迷っている場合ではなかった・・・。
で、高額の費用をかけ、中途半端な接種するのなら、わざわざ痛い思いをして打たなくてもいいか。犬に近づかなければいいんだし・・・。という結論になったのだが、犬好きには無理な注文だったようで、犬を見つけるとどうにも犬に引き寄せられてしまう・・・。
今回は、それなりに経済の発展している香港なので、狂犬病ウイルスを持っている犬に出会う可能性は交通事故に遭うよりも少ないだろうし、狂犬病になっている犬は明らかに挙動がおかしいということ。この犬はそういった素振りはない。私なりにこの犬は大丈夫だと判断して近づいた。
でも、国や地域にもよるけど、海外で犬や猫が可愛いと、日本と同じ感覚で接すると、病院行きで旅が終了するだけではなく、最悪の場合、命を落とす危険がある。旅に出て5日目に犬に近づいている私が言うのもなんだけど、そのことはくれぐれも頭に入れて旅をして欲しい。
2、親子で仲良くお昼寝(旺角 2000年1月)
町を歩いていると、親と子猫5匹、仲良くお昼寝しているのを発見。親の寝床と、子の寝床が別々というのが、なんだかほほえましい。
近づいても安心しきっているのか、警戒の素振りがない・・・。実はこの場所、路上で行われているストリートマーケット。それなりに人通りが多かったりする。猫が安心しきっているのは香港人の優しさからなのだろう。
香港の夜といえばビクトリアピークや海峡沿いの夜景が人気となっているが、路上で行われるナイトマーケットもよく知られている。実際、香港らしい情緒を求め、観光客も多く訪れている。
路上マーケットが行われているのは主に下町と呼ばれる地域。女人街、廟街夜市(男人街)、電脳街など色々なマーケットが行われていて、マーケットごとに飲食店、衣料、アクセサリー、日用品、骨董、電気製品、雑貨など売られているものに特徴がある。
食品や日用品が売られているマーケットは午前中から営業していて、アジア的な活気がある。今回猫に出会ったのもそういったマーケット。お店の裏側でスヤスヤとお昼寝をしていた様子を起こさないように激写してみた。
3、香港仔のワンコ(2000年1月)
「戦争」と聞いて、どの戦争を真っ先に頭に思い浮かべるだろうか。多くの犠牲者を出した太平洋戦争という人もいれば、朝鮮戦争だったり、ベトナム戦争、オイルショックを引き起こした中東戦争、ハイテク兵器が使用された湾岸戦争、現在進行形で行われているウクライナ戦争を思い浮かべる人もいると思う。
どの戦争を思い浮かべるかは、自分にどれくらい影響があったかとか、戦争が起こった時の自分の年齢などに拠るので、人それぞれ違ってくるだろう。
私の場合は、ベトナム戦争がすぐに頭に思い浮かぶ。おそらく私と同じようにベトナム戦争を思い浮かべる人は、それなりに多いのではないかと思う。
私の子供の頃は、ベトナム戦争が流行っていた。と書くと、不謹慎に思うかもしれないが、流行っているという表現が適切だったように思う。
私自身、実際のベトナム戦争は知らない。でも、戦争が終わって10年も経つと、色々と落ち着き、ベトナム戦争を描いた映画が多く上映されるようになった。またゲームでも、ファミコンウォーズや大戦略などが流行り、戦争を模したサバイバルゲームが流行ったり、モデルガンもよく売れていた。
日々の生活の中でも、交通戦争や受験戦争といった表現も頻繁に使われ、戦争というものをよくわかっていない子供には、戦争が流行っていたり、何かカッコいいように感じる日常だったように思う。そういった子供時代を過ごした影響だとは思うが、今でも戦争というと、ベトナム戦争が真っ先に頭に浮かぶ。
そんな私の思い出はともかく、戦争が起これば多くの人が死に、多くの人が住む場所を失うことになる。
国を追われ、難民となる人も多いが、これは最終手段になる。そう簡単に国を脱出できるはずもなく、その道中は過酷なものとなるからだ。
よくニュースで流れるのが、小さな船に多くの人が乗りこみ、運を天に任せた感じで脱出している様子。いわゆるボートピープルというやつ。ベトナム戦争でも大きな国際問題となった。
ボートピープルや難民の受け皿の一つとなったのが、香港。ベトナム戦争が終わった後、中華系人種への弾圧もあって、最終的にはベトナムから20万人以上という難民が香港に押し寄せた。
土地の少ない香港では暮らす場所も限られる。多くの難民が暮らしたのが水上で、香港の南の香港仔(Aberdeen)一帯は、かつては水上生活者の船で埋め尽くされていたそうだ。
船での水上生活は、のんびりとしていて楽しそうにも思えてしまうが、実際は過酷である。風雨が強いと船が揺れるし、小さな子供が暗がりで海に転落してしまう事故も絶えない。
衛生環境的にもよくないということで、香港政府は陸に公営住宅を造り、彼らを陸に定住させる政策を行った。その結果、私が2000年に訪れたときには水上で暮らす人はほぼいなくなっていた。
現在の香港仔は整備され、普通の港・・・とはなっていなく、凄まじい数の船が係留されていて、これはこれで驚く。伝統的な船サンパン(荷物の運搬や人の輸送に使われる小型の平底の木造船)もちらほら見かけるが、周囲には高層ビルが建ち並び、古い映画、例えばブルースリー主演の燃えよドラゴンのような情緒はあまり感じられない。
古き良き時代を感じられるといえば、市場や港を歩いていると、「サンパン?」と観光客向けの船に呼び込んでいるおばちゃんや、作業しているおばちゃんたちの帽子。日本で言う菅笠のような帽子は、昔も今もそう変わらないだろう。
そういった香港仔の市場でワンコを発見。大きな犬が退屈そうにこっちを見ていた。市場の番犬といったところだろうか。
大人しそうな犬だ。長い鎖に繋がれてはいるし、近づいてみるか。そう思うものの、サイズが大きいので、やっぱり怖い。
近づくなり、いきなり態度が豹変して、凄まじい勢いで吠えられでもしたら、腰を抜かしてしまうかもしれない。犬に吠えられて旅ができなくなったとなっては、シャレにならないし、みっともない・・・。
香港仔では水上生活者の姿は見かけなかったが、水上で暮らすワンコがいた。水上のレストランの店番をしている様子は、なかなかおしゃれで、まるで地中海といった雰囲気。
でも、ワンコは船酔いはしないのだろうか・・・。人間と同じように慣れってやつなのだろうか・・・。船酔いしやすい体質なので、ちょっと気になってしまう。
4、城壁村の猫(錦田吉慶圍 2000年1月)
狭い路地を歩いていると、猫が出迎えてくれた。おっ、日本人が来たぞ!ってなものだろうか。
こういった細い路地は、日本では漁港に面した集落に多い。もしこの写真に東京の佃島とタイトルを付けても、多くの人が違和感を感じないのではないかと思う。
足を止めると、猫が集まってきた。カメラを向けると、ちゃんとカメラ目線。いや、何者だろうか。何しているのだろうかといった警戒もあるが、何かくれないか。遊んでくれないかと期待する目線といった感じだろうか。
この時は、まだ写真をフィルムで撮っていた時代。猫にカメラを向ける人が少ないので、猫にとってもカメラが珍しい。ちょっと緊張した堅い表情で写っている様子は、写真を撮られるのに慣れていない人間と同じに思える。
なかなか逃げていかない。いや、むしろ近づいて来ようとする。だったらと、ちょっと遊び心で猫目線の写真を撮ってみた。
現在のデジカメだと、カメラの背面に液晶画面が付いているので、こういった写真も撮りやすいのだが、フィルム時代はファインダーを覗かないと何が写っているのかわからない。
ファインダーを覗くために、地面にうつ伏せになるほど猫の写真に情熱をかけていないので、ノーファインダーで適当に写真を撮ったのだが、案の定というか、ピントがちゃんと手前の猫に合っていなかった。
城塞内を歩いていると、また猫に遭遇。ちょっとぶれてしまったが、ガスボンベの前で。
よく外国人が日本語が書かれた看板とかを珍しがっているが、背景にさりげなく違う国の言葉があると、それだけで異国情緒が増すように感じる。
この猫たちの写真を撮ったのは、香港の繁華街よりもちょっと北、錦田にある錦田吉慶囲(錦田吉慶圍 Kat Hing Wai)。
ここは高さ7メートル、長さはおよそ100m x 90mのレンガの壁に囲まれ、周囲には堀がめぐらされているといった城砦村。歴史も古く、村自体は約500年前、城壁は400年前に建設されたとされている。
現在でも子孫らが暮らしていて、城壁内を歩くことができる。とはいえ、内部にあるのは近代的な建物なので、外部の古い城壁のイメージを持ったまま歩くと、ちょっと違和感を感じてしまうだろう。
この吉慶囲のある錦田まで来ると、人口密度が高い香港でも高層ビル群はなくなり、畑を多く見ることができる。香港にも畑がある・・・。普通の山もある・・・ってな感じで、もの凄く珍しい風景に感じて写真を撮ってしまった。
海外編 香港