佐渡島一周ツーリング記2003 タイトル

佐渡島一周ツーリング記
#2 新潟への道のり

2003年8月、友人と2人、1泊2日の行程で佐渡島一周を試みた時の旅行記です。(全17ページ)

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3、移動へのこだわり

地理院の地図
佐渡への道のり

国土地理院地図を書き込んで使用

今回の旅の始まりは、仕事を終えた金曜日の夜。自宅に帰り、少し仮眠した後、土曜日の朝一のフェリーに乗船するために、深夜、家を出発。途中で友人と落ち合い、延々と東京から新潟に向けて国道17号を走った。

一般道だと情緒を感じながら走ることができるし、高速代もかからない。なので、私の移動の第一選択肢は一般道となる。ただ、時間と体力を多く消費することになるので、必要に応じて高速道を使ったりはする。

えっ、新潟まで下道で行くの!高速の関越道を使えば早いのに。なんか貧乏っぽい・・・。と、普通の感覚ではこうなる。特に車に乗っている人はからはそう突っ込まれる。

自分の信条のイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

私が下道にこだわるのは、私なりの旅の哲学に拠る。旅の本質は、移動すること。なので、移動を簡略化してしまうと、旅の面白さが減少してしまう。例えば、飛行機や新幹線に乗っての超高速移動は、短い時間で遠くまで行けるので、確かに便利で有用だ。

でも、移動自体は単なる高速移動となり、移動中に旅の情緒をほとんど感じることはない。同じように高速道路に乗っても、囲まれた道を高速で移動するだけとなり、目的地に着くワクワク感はあるが、移動する楽しさがあまりない。

そう、速すぎる移動では旅の情緒を感じることがなないし、自分自身でやれる選択肢も少ない。気の迷いとか、気まぐれといった感情が入り込む余地も少ない。まるで作業的な移動というのは大袈裟だが、無味乾燥な移動は旅をつまらなくする。

江戸時代の旅人のイメージ(*イラスト:ヤーマンさん)

(*イラスト:ヤーマンさん)

移動をどれだけ楽しめるか。移動に自分なりのこだわりがあるか。移動に柔軟性や遊び心があるか。そういった移動に対するこだわりが強いほど、旅は楽しくなる。これはユーラシア大陸横断をしてきた私の旅の哲学になる。なので、なるべく一般道での移動を心がけている。

それに・・・、というより、こっちの方が重要だったりするのだが、高速道を使うと安くはない通行料を払わなければならない。バイクの高速料金は軽自動車と同じで、普通自動車の8割になる。

バイクは車と比べると、車体が小さく、重量も軽く、タイヤも2つしか付いていないので、道路を傷める程度はとても低い。それなのに、軽自動車と一緒では割に合わない。まるで大人と子供の差。そう、鉄道などの運賃の子供料金的な扱いでいいはず。

どうにも貧乏性の私の中では、一人乗りのバイクだと割高感や不公平感を感じ、高速道路を積極的に利用したい、とはならないのだ。

高速道路のイメージ(*イラスト:イラストスターさん)

(*イラスト:イラストスターさん)

とはいえ、東京ー箱根程度の距離なら好きな方を選べば、ってなことになるのだが、新潟までは300キロある。これだけ長い距離を一般道で走るのは、それなりに気力や体力が必要になる。

それを補うのは、やはり旅の移動へのこだわりというやつ。自分なりの哲学を持っていると、それを燃料とすれば、長距離でも気にはならないものだ。それに、いざとなれば高速を使えばいい訳だし、何より、節約志向の旅は使命感やら達成感やらがあって、これはこれで楽しい。

更に今回の場合は、友人が一緒。「旅のよい道連れは旅路を短くさせる (ウォルトン)」とあるように、仲間がいれば長い旅路もそんなに苦にはならないし、苦労した分だけ行ったときの楽しみも増えるというもの。

やれやれなイメージ(*イラスト:ちょこぴよさん)

(*イラスト:ちょこぴよさん)

と、旅はこうでなくては・・・などと、胸を張って私は宣うのだが、その崇高なる哲学に付き合わされる友人はたまったものではない。こんな長距離を一般道で移動するなんて、面倒なだけ。正気の沙汰ではない。こういうことは一人旅の時に思う存分にやってくれ・・・となるはず。

でも、今回はそんな私に声をかけ、旅のパートナーに選んでしまったのは自分自身。一人だったら絶対にやらないが、同行する私が張り切って走るし、実際問題、高速代が浮くというメリットはあるので、渋々といった感じで付き合っていた。きっと走りながら、私に声をかけたのは色んな意味で失敗だったかな・・・、と思っていたに違いない。

4、新潟への道のり

ということで、旅は道連れ世は情けってなもので、友人と深夜の17号をひたすら北進していった。深夜の道は交通量が少ないので、大きな国道でも走りやすい。

信号に引っかかること以外ではストレスを感じることなく走り続け、信号が少なくなる郊外に出ると更に楽になったが、太平洋岸から日本海岸までは330キロ。徐々に疲労感が身体に蓄積していった。

山越えのイメージ(*イラスト:ハルハルさん)

(*イラスト:ハルハルさん)

新潟への道中で一番の難関というか、厄介なのが、群馬と新潟の県境になっている三国山脈。広義では越後山脈の一部になる。

三国山脈は佐武流山(2192m)を筆頭に、谷川岳、苗場山、朝日岳など2000m級の山が連なっていて、2000mの聳えるような壁となっている。実際、日本海側気候と太平洋側気候の境界(中央分水嶺)にもなっているので、まさに壁と言える存在だ。

三国山脈を越えるには国道17号の三国峠を通ることになるのだが、ここは勾配やカーブがきつい。しかも峠の区間が長い。体力や時間の節約ってことで、峠を回避し、関越道の関越トンネルを通って一気に抜けてしまおうと思っていたのだが、トンネル手前のインターで入り損んじてしまい、結局ワイディングのきつい三国峠を走ることになってしまった。

走り屋のイメージ(*イラスト:ニッキーさん)

(*イラスト:ニッキーさん)

金曜の夜中なので走り屋がわんさかいて、もの凄いスピードであおられて怖い思いをするのでは・・・と、頭文字Dの世界が頭をよぎり、後ろから車がかっ飛ばして来ないだろうかとビビリながら走るものの、特にそういう車はいなく、無事に峠を越えて新潟へ入った。

よかった。と、ホッとしているのも束の間、県境を分けている新三国トンネルを抜けると、雨が微妙にポツポツと落ちてきた。同伴している友人は筋金入りの雨男。大学時代、彼と一緒に走ったツーリングでは、かなりの確率で雨のイベントが発生していた。社会人になっても、まだ雨男を卒業していないのか・・・。

と、友人のせいにしてはいけない。高い壁のように聳える三国山脈は日本海側から吹く風と、太平洋側から吹く風がぶつかるので、普通の山以上に天候が不安定になる。なので、とても雨が降りやすい環境なのだ。

でも、その教科書通りの展開をちゃんと引き当てることを考えると、やっぱり雨男の称号は今なお健在なのかもしれない。この先の展開がちょっと怖い・・・。

スキーリゾートのイメージ(*イラスト:のりまきさん)

(*イラスト:のりまきさん)

本降りになってくれるなよ・・・と、願いながら山道を下っていった。霧雨の中、スキーリゾートとしてよく名を聞く苗場を通り過ぎ、更に下って越後湯沢の町に到着すると、少し靄がかかっているものの、雨の方は止んだ。無事に雨のイベントを乗り越えたようだ。よかった・・・。佐渡に付く前にずぶ濡れになっては、テンションが下がる。

更に17号を北上していくと、高級米の産地の魚沼があり、その先、長岡の手前からは国道がまるで高速道路ようなバイパスになっていた。昔から新潟は政治の力で道がいいとは聞いていたが、ここまで立派な道があるとはびっくり。スイスイと走れていいんだけど・・・、覆面パトカーがいたら怖いな・・・。

早朝だからきっとおまわりさんはいないはず。いや、逆に早朝だからいるかもしれない。新潟には新潟の事情があるからな・・・。よそ者にはこの部分が分からないので、飛ばして走るのをためらう。

パトカーのイメージ(*イラスト:アート宇都宮さん)

(*イラスト:アート宇都宮さん)

走っている車の多くがそれなりにスピードを出しているから大丈夫だろうと思うものの、一般道を高速道路感覚で走って捕まると、一発免停なんて恐ろしいことになる。

旅先で交通違反で捕まる憂鬱さと言ったら筆舌に尽くしがたい。旅程の半分を過ぎていたり、帰路で捕まるならまだしも、これから旅が始まるぞという時に捕まったら、今心の中にあるワクワクしている気持が一気に抜けてしまうだろう。更には、ずっと捕まったモヤモヤを引きずりながら旅をすることになるので、この後の旅がつまらないものになるに違いない。

いや、我々の性格からすると、ふてくされてしまい、船に乗らず東京へ引き返す選択をするかもしれない。まだ時間はある。それだけは是が非でも避けなければ・・・。ゆっくりと車の流れに合わせて走る事にした。

しばらく高速道路のようなバイパスを走ると、新潟港出口の標識があり、そのインターで降りると、後は親切なほどあちこちにある標識を辿り、無事に新潟港に到着。時計を見ると、5時少し前。フェリーの出発は6時だから、計算通りになかなかいい時間に到着したものだ。

佐渡島一周ツーリング記03'
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