佐渡島一周ツーリング記
#9 大佐渡スカイライン走破
2003年8月、友人と2人、1泊2日の行程で佐渡島一周を試みた時の旅行記です。(全17ページ)
15、道遊の割戸
佐渡の北側の山間部を「大佐渡スカイライン」というとても立派な名がついた道が横切っている。佐渡金山の前を走っている道がそうで、金山見学の後はそのままこのスカイラインを山へ向けて登っていくことにしていた。
NSR(レース用バイク)でやってきた友人は、この大佐渡スカイラインを攻めきらないと佐渡島を制覇したことにならないとの事。彼にとってこの道を走ることが佐渡での第三目標になっていた。
完全に普段よくツーリングに行く伊豆スカ(伊豆スカイライン)のノリだが、佐渡の地図を見た時にこの道を見つけ、佐渡では絶対ここへ行きたい!この道を走りたい!と決めていたようだ。
ここからが俺の旅の本番。佐渡のお手並み拝見!とばかりに、アクセルを吹かせて張り切る友人。
大佐渡スカイラインはほぼ一本道。途中に展望台が幾つかあるので、そのどこかで待ち合わせすることにして、私は後からゆっくりと追いかけることにした。どうせ頑張って走っても離されていくだけだし・・・。
意気揚々と友人が出発した後、私も出発。走りだすと、すぐに佐渡金山の象徴的な存在「道遊の割戸」を発見。「道遊の割戸」というのは、江戸時代の露天掘り跡になるのだが、これがなかなかビックリするような形をしている。
なんと山が真ん中で真っ二つに割れている。まるで大きな刀でぶった切ったみたい。なんでも巨大な金脈を掘り進むうちに山が裂けてしまったそうだ。
これは見事な割れっぷりだ。凄い。人間の金への執着心や強欲ぶりを感じる。写真に撮っておくか・・・。いや、もうバイクにまたがってしまったし、面倒だからいいか・・・。う~ん、やっぱり写真に撮っておこう・・・。と、路肩に停車。
でも、ヘルメットを脱ぐのが面倒なので、ヘルメットをかぶったままパシャ。ちゃんと撮ったつもりだったが、後で現像した写真を見たら見事に指が写りこんでいて、肝心の山が割れた部分が写っていなかった・・・。
このツーリングに出かけた2003年は、まだフィルムのカメラが優勢の時代だった。デジタルカメラの場合だと、こういった失敗はありえないし、あったとしてもその場で気が付き、撮り直すことができる。
しかし、フィルムのコンパクトカメラの場合、ファインダーで見える画と、実際にレンズで見えている画は構造状別だったので、指がレンズにかかっていたとしても気が付かないのだ。しかも、フィルムを現像してみるまで、その失敗がわからなかったりする。
なので、現像してみたら、指が入っていたり、ストラップが入っていたり、レンズに大きなゴミが付着して、ちゃんと写っていなかった・・・と失望することは、フィルム時代にはよくあることだった。
話がそれてしまったが、この写真を撮った場所はメインの佐渡鉱山の裏側になる。こちらにも坑道があり、大切山抗や大立竪坑などといった案内板が掲げられた坑道の入り口があった。
名が知れているだけあって、佐渡金山は広いし、見どころも多い。資料館の展示では江戸時代に栄えた相川集落にも奉行所や古い町並み、金山関係の施設が残っているらしい。
時間の都合でメインの坑道しか見なかったけど、もっと時間をとってゆっくりと見て回るべきだったかな・・・。もっと佐渡金山をじっくりと見ていたいといった気持ちが湧き上がってくるのだが、もう後の祭り。友人は勢いよく山を登っていってしまった・・・。
16、大佐渡スカイライン走破
あまりゆっくりしていては、事故ったんではないかと友人が心配してしまう。先を急ごう。ということで、大佐渡スカイラインを登っていった。
道は2車線で比較的まともな感じ。これなら飛ばして走っても大丈夫そうだ。少し急ごう。そう思って少しスピードを上げて走るのだが、コーナーを3つ過ぎると道は細くなり、強烈に曲がりくねり始めた。
なにくそ、これぐらいと、怯まずに登っていくのだが、その先は坂の勾配が強烈になり、カーブを曲がるのも大変。乗っているのが重たく、排気量のあるバイク。しかもまだ納車して2カ月ほどと、完全に身体に馴染んでいない。コーナーの途中で超低速になってしまうと、バランスが取るのがとても難しかった。
大佐渡スカイラインと立派な名がついているので、観光客でも比較的走りやすい道路になっているのかと思っていたのだが、まさか転ばないように走るのが精一杯な悪路とは・・・。名前とのギャップに苦笑いするしかない。
慎重に坂を上り続け、ある程度標高が上がるとカーブや坂の勾配が緩くなった。少し走りやすくなったものの、今度は道の舗装が悪い。外周道路の状態が比較的よかったので、ここも同じだろうと勇んでコーナーに侵入すると、道に補修跡や窪みがあちこちにあり、うゎ~危ない!!!ってな状態。
さすがにこれではバイクを倒しこんで攻めるわけにはいかない。いや、バイクだと普通に走っていても危険だ。コーナーの真ん中にも穴が開いているし・・・。
だいたいこんなとこで転んだりしたら、とんでもなく大変なことになる。バイクの修理もままならないし、あまりにひどい壊れ方をすると、東京まで輸送ってことになり、ビックリするほどお金が掛かってしまう・・・って、冷静に考え始めたら「絶対こんな場所でコケられない!」と、心のブレーキが強烈にかかるのだった。
このスカイラインには幾つか展望台が設置されていた。友人がスカイラインを往復している間に巡ってみたが、一番最後に立ち寄った白雲台にあるレストハウス白雲荘の展望台からの眺めが素晴らしかった。
佐渡は大きな島なので、海沿いを走っていても風景的には普通の半島などと同じで、島ということを実感する場面は多くなかった。でも、ここからは海を含めてよく見渡せたので、佐渡は島なんだな。島に来ているんだなというのを実感できた。幸いなことに他に観光客がいたので、写真を撮ってもらうことにした。
この白雲台からは佐渡の真ん中の国仲平野へ下っていくのだが、この下りが、また強烈。ジェットコースターか!というぐらいの強烈な傾斜になっていた。
道は傾斜がきついので、コンクリート舗装となっていて、滑り止め用に無数のドーナツのようなへこみが付けられているのはいいが、バイクだと振動が多くなるので、余計に走りにくかったりする。
それに下り勾配がきついと、バイクの場合は自分の体重がずっしりと腕にのしかかってきて、結構きつい。何よりも崖下に吸い込まれるような視界となるので、登りよりも何倍も怖く感じる。
怖く感じると腰が引けてバランスをとるのも大変なわけで、転ばないようにと絶えずブレーキは握りっぱなし。まるでスキーのボーゲンのような状態で、ゆっくりと慎重に坂を下っていった。思えば今回の佐渡ツーリングで一番怖かった場面だ。
その恐怖の下り坂がひと段落したところに新保川ダムがあった。腕や手首の疲れやだるさを感じたので、休憩がてらちょっと寄ってみた。
ここはダムの上を歩けるようになっていたのだが、柵の高さが異常に低く、ダムの下を見ると、ちょっと・・・、いや、けっこう怖い。
山の方を見ると、佐渡の山がよく見える。ひときわ高いのは標高1176mの金北山。スカイライン沿いにあった妙見山が1042mと、佐渡は意外と高い山がそびえている。
大佐渡スカイラインにしても最高地点は900mもある。島にある山道。大したことはないだろう。まあ友人に付き合うか・・・といった軽い気持ちで走ったのだが、一気に登って一気に下る山道は難易度が高く、とても攻略のし甲斐のある道だった。
おかげで走り終えてみると、もの凄く満足感やら達成感があった。実は佐渡観光の穴場スポットってやつなのかもしれない・・・。
#9 大佐渡スカイライン走破 「#10 佐渡博物館、そして一日の終わり」につづく