佐渡島一周ツーリング記
#3 佐渡島への船旅
2003年8月、友人と2人、1泊2日の行程で佐渡島一周を試みた時の旅行記です。(全17ページ)
5、新潟港にて
新潟から佐渡へのフェリーは、新潟市と上越市から出てる。新潟港の方が主要航路となっていて、一日5往復と利便性が高い。しかも、乗船時間も短いし、料金も安い。一般的な観光客が選ぶとしたらこちらになる。
新潟港を出港する第一便は、朝6時の出発。それに乗れば、佐渡でほぼ一日有意義に使うことができる。一泊二日の旅程なので、是が非でもこの便に乗りたい。ということで、深夜、東京から国道17号を延々と走ってきた。
新潟港に到着したのは、午前5時。見事に計算通り。我ながら300キロの長い道のりをうまく走り切ったものだ。思い描いていた通りに事が進んだので、自然とニンマリと顔がほころんでしまう。
港に到着すると、すぐにターミナルへ向かった。フェリーに積める車やトラックの数に上限があるように、バイクにも限りがある。
えっ、バイクだったら適当に空いたスペースに押し込めば、少々なら融通が効くんじゃない・・・。などと思う人も多いだろう。が、そのへんの駐車場のようにはいかない。
バイクをフェリーに積む場合は、船の揺れで倒れないように固定することになる。固定するのは壁になるので、壁沿いの限られたスペースにしか積むことができない。なので、バイクの載せられる数は普通の人が思っているよりも少なかったりする。
8月終わりとはいえ土曜の朝一の便。どこかのツーリングチームが佐渡ツーリングを企画しているかもしれない。あるいは我々と同じように夏の最後の思い出といった感じで、旅好きなバイク乗りがわんさか来ている可能性もある。
「前のお客様でちょうどバイク用のチケットは売り切れてしまいました。次の便にしてください。」ってな事になったら最悪だ(この時代は予約ができなかった)。まずは先に乗船チケットを確保しておこう。その後にバイクに乗ってコンビニを探して朝食をとったり、ガソリンの給油をすればいい。
何はともあれといった感じで、急いでチケット売り場を訪れてみると、チケット売り場には長い列が・・・出来てはいなく、ガラガラだった。
もう売切れてしまった後・・・。ってな雰囲気ではないな。これは単に空いているだけのようだ。ちょっと当てが外れたような気分で、窓口を訪れ、バイクを載せたい旨を伝えると、空きはあるとのこと。よかった・・・。まずは一安心。
張り切って何かを行っているときは、周りの人間も自分と同じように考えていたり、同じ方向に進んでいるように思えてしまうもの。必要以上に心配し過ぎてしまったようだ。
ただ、このまますんなりとチケットを購入することはできなかった。運賃はバイクの排気量で異なり、車検証の提示が必要とのこと。仕方なく一度バイクに戻り、シート下に収納している車検証を持って再び窓口に行き、乗船券を購入した。
それにしても・・・、バイクの乗船代というのは車に比べると安いものの、往復として考えると、そこそこの額になってしまう。
しかも排気量で料金が区切られているので、1100ccの私は250ccに乗る友人よりも多く払わなければならなかった。隣で友人がバーゲンセールの様な値段を払っているのを見ると、ちょっと嫌な感じ・・・。
乗船券を購入する時に、「バイクは一番先に積みます。車が並んでいる列の一番前で待機していてください。もう間もなく積み始めます。」と言われた。
えっ、もう積むの。まだ出航まで1時間ぐらいあるのに・・・。これは予定外だった。友人のバイクは燃料タンクが小さく、レース用バイクなので燃費もあまりよくない。乗船券を購入した後にさっと給油しに出かける予定だったので、ガソリンの残量が少し心配な状態。
コンビニで朝食も買いたいところだが、もう積むというのならしょうがない・・・。いや、ちゃっちゃと行ってくれば間に合うんじゃないかな・・・。どうしよう。
迷ったが、スタンドの場所が正確にわからない。もたついてしまい、戻って来てみたら「もう乗れません」ってなことになったら最悪だ。無事に船に乗ることができた。それでよしとしようではないか。
給油やコンビニは諦め、桟橋の一番前にバイクを移動させた。指定された場所にバイクを停めるものの、見渡すかぎりでは・・・、バイクは一台もいない。車やトラックの列はそこそこ長くなっているが、この状況から推測するに、実際にバイクで佐渡を訪れる人は稀なのだろう。
最勝のうちは物珍しいので、写真を撮ったり、コンテナや荷物が船に積まれていく様子を眺めて過ごすのだが、一向に乗船の声がかからない。
すぐ積み込むと言っていたのに、結構待たされるな・・・。30分も待たされるなら、ちゃちゃっとガソリンスタンドとコンビニに行ってきても全然問題なかったではないか・・・。
そもそもこんなに空いているのなら、途中でガソリンスタンドやコンビニに寄ってくればよかっんだ。改めて、失敗したな・・・。友人に悪いことをしたな・・・。と、思ってしまう。
そんなことを思いながらボーと過ごしていると、ようやく係りの人が来て、「バイクを積みますから船に移動させてください。」と伝えてきた。ようやく乗船か。随分と待たされたな・・・。
6、佐渡への船旅
他にバイクはいなかったので、我々が一番手で船に乗船。ヘルメットをかぶり、バイクのエンジンをかけ、船に向かってバイクをゆっくり走らせた。背中には長い車の列からの視線を感じる。「いいな」とか、「ようやく乗船が始まった」といった好意的な視線なので、ちょっと気分がいい。
それにしても、船にバイクで入っていくのはなかなか変な感じだ。しかも「滑りやすいので、転ばないように注意してください」と係りの人が念を押して言っていた通りで、床がでこぼこしてとても走りにくい。
佐渡へ向かったものの、フェリー内で転倒し、佐渡を走れなかった・・・なんていうのは、話のネタとして聞く分には面白いけど、本当に起きたらシャレにならない。慎重に走り、係の人に誘導する一番前の隅っこに向かった。
バイクを停めると、係員がテキパキとバイクをロープで壁に固定していった。これなら少々波などで揺れても倒れる心配はない。その様子をちょっと眺めていたが、乗用車の乗船が始まったので、ここにいては邪魔だ。上部の船室に上がることにした。
客室に入ってみたものの、出航前のフェリーは上下に揺れるので落ち着かない。更に上層へ登って屋上の甲板で港の様子を眺める事にした。
しばらく眺めていると、乗船の為に並んでいた車の列が徐々に少なくなっていき、列が消滅すると乗船口が閉じられた。
そしてボォ~ンと大きな汽笛が鳴り、出港。煙突から煙が一段と上がり、エンジンが勢いよく動き始めたので、その振動が体にも伝わってくる。「さらば本州」ってな心境ではないな。「佐渡待ってろ。今行くぞ。」ってな感じで、鬼が島へ向かう桃太郎のような心境かな・・・。
船はゆっくりと岸を離れていった。ちょうどタイムリーな日に来てしまったようで、お隣の貨物用埠頭は早朝だというのに物々しい警備が敷かれていた。
なんでも今日は制裁問題で揺れる北朝鮮船、万景峰号が新潟港に入港するとか、しないとか。動く船からパトカーや機動隊などの警備車両が沢山停まっている様子が見えた。
港を出てしまうと、特に代わり映えのしない風景となり、そのうち飽きて船内に入ることにした。腹減ったな・・・。食堂に寄ってみたものの、営業は30分後からとのこと。そんなに待てない。腹が減ったけど・・・、それ以上に眠い。昨夜から走りっぱなしだからな・・・、寝るか。
二等船室に降りてみると、そんなに混んでいなく、空いたスペースを見つけてごろんと床に横になった。最初のうちは何時もと違う感覚の揺れが気になったが、すぐに深い夢の世界へ旅立っていった。
#3 佐渡島への船旅 「#4 佐渡島上陸」につづく