佐渡島一周ツーリング記
#12 感動的な宿根木集落
2003年8月、友人と2人、1泊2日の行程で佐渡島一周を試みた時の旅行記です。(全17ページ)
21、感動的な宿根木集落
沢崎灯台とその周辺の散策を終えると、バイクにまたがり出発。来た道を戻るので、今度は太陽に向かって走ることになる。太陽光が正面から目に入り、ちょっとまぶしい。目を細めながらバイクを走らせた。
宿があった集落を越え、しばらくすると宿根木の集落に到着した。この集落は佐渡でも異彩を放った集落になる。まず驚くのが、木造の建物が密集していること。なんでも約1ヘクタールの土地に110棟もの建造物が並んでいるそうだ。
丘の上から見るとその特徴的な集落の様子がよくわかり、まるで家々がくっつきあっているかのよう。まさにすし詰め状態といった感じだった。
これだけ密集していれば火事になったら大変だろうな・・・。木造家屋ばかりだから下手したら集落が全滅とか・・・。ここを訪れた誰しもが、まず心の中で思うことだろう。
また、江戸時代に船大工の里として栄えた名残りで、建物の外壁に船板や船釘を使用している建物があることでも知られてる。
実際に集落を訪れてみると、人が歩けるほどの細い路地ばかりで、ほとんどの家が家の前まで車で入ってこれない状態だった。建て替え工事や引っ越しといったときに大きな荷物を運ぶのが大変だろうし、救急人が出たときや消火の際にも不便をしそうだ。
そういった不便な分だけと言っては何だが、集落内の建て替えはあまり行われず、今でも昔ながらの建物や石畳が多く残っている。この集落の中は江戸時代のまま・・・というのは少々大袈裟な表現だが、少なくとも昭和のまま時代が止まっているかのような雰囲気だった。
こういった特徴的な集落を歩いていると、他の集落では気にならないことが気になったりする。
路地沿いには、壁の長板を縦に設置している家があり、横を歩くと家が高い塀のように感じる。路地によっては左右にそういう家が建っているので、まるで狭い通路の両脇に高い塀が聳えているかのように感じ、歩いていると少し不安な気持ちになってしまう。
路地に影が多いのも気になった。狭い通路の両脇に隙間なく家が並んでいるので、影が多いのはここでは日常的な光景になる。ただ太陽の位置で影の付き方が変わってくるので、訪れた時間帯や季節、天気によって集落や路地の印象が凄く変わってくるはずだ。
数少ない機会かもしれないけど、路地に光がズバッと差し込んだ時とか、靄がかかった時、朝夕の淡い感じの時間帯など、光と影がうまく調和した時、ほんの一瞬だけかもしれないけど素晴らしい情景となりそうな気がする。そういった機会に訪れることが出来たらな・・・と、路地を歩きながら思うのだった。
集落の奥の方へ進むと、共同井戸や供養塔などの石碑群、学校跡を利用した公会堂に、神社、そしてお寺があった。もの凄く立派なものというわけではないが、昔の建物を大事に使用しているので、それぞれ歴史を積み重ねた分だけ味があった。
それにこの付近は建物が密集していなかったので、普通に空を見ることができるのがいい。窮屈だった雰囲気から解放され、ちょっと落ち着く感じがする。きっとここで暮らす人にとっても憩いの場となっていて、今は姿はほとんどないが、子供たちの遊び場にもなっていたはずだ。
宿根木の集落のすぐそばには、旧宿根木小学校校舎を利用した佐渡国小木民俗博物館があり、この地域の民俗資料などが展示されている。
この博物館には、なんと実物大の千石船が展示されている。この千石船は、実際にここ宿根木で建造された船を、残っていた設計図を基に復元したもの。
屋外の倉庫に置いてあったので、博物館に入館しなくても外からその姿を見ることができた。「白山丸」と名付けられた巨大な木造船はとても美しく、ちょっと大袈裟に言うなら大航海時代のようなロマンを感じる。
この千石船で栄えたという宿根木。別名、千石船の里とも呼ばれている。船大工で栄えただけあって、外壁に船板や船釘を使用して建てられた木造家屋があったり、年季の入った木造家屋が密集していたりと、独特の情緒を感じる集落だった。
更には、外界から隔離されたかのように古き良き時代の情緒も残っていて、ユーラシア大陸を横断した旅人の目から見ても、唯一無二とか、感動的という言葉がふさわしく感じる。今回の佐渡訪問の中で一番印象に残った集落であった。
#12 感動的な宿根木集落 「#13 たらい舟のある風景」につづく