旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とわんこの日々
世田谷編 2006年Page16

世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。

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24、東北ツーリング、最終日(2006年10月19日)

地理院の地図

国土地理院地図を書き込んで使用

4日目が始まった。昨夜は、あまりにも寒くて夜中に何度も目が覚めた。東北の寒さの洗礼を受けたというべきか、東北の秋の寒さを舐めていたというべきか、どちらにせよあまりよく寝られず、つらい朝を迎えた。

眠いけど、寒い・・・。疲れもたまってきて起きるのが辛い・・・。寒いけど、もっと寝ていたい・・・。と、寝袋の中で葛藤するものの、道の駅なので、早くテントを撤収しないとみっともない。起きよう・・・と、意を決し、寝袋から脱出した。

テントの外に出ると、一段と寒い。地面に霜は降りていないが、気温は一桁半ばぐらいだろうか。寒すぎて気持ちが萎えるが、ダラダラとしていても寒いだけ。さっさと身支度を整え、テントの片づけた。そして荷物をパッキングし、バイクの荷台に固定すると、本日のハイライト、大湯環状列石へ向かった。

大湯環状列石(万座環状列石) 東北ツーリングの写真
大湯環状列石(万座環状列石)

大湯環状列石は、縄文時代の遺構になるのだが、環状列石の名の通りに石が円形に並べられた珍しい遺構になる。

ここでは道を挟んで、最大径44メートルの野中堂環状列石と、最大径52メートルの万座環状列石の2つの環状列石を見ることができる。

使われている石は約2キロほどの距離にある大湯川から運ばれてきた川原石で、これまでの発掘調査からは、環状列石を構成する配石遺構は「配石墓」であり、その集合体である環状列石は「集団墓」である可能性が高いと考えられているそうだ。

とはいえ、一概にこうだったというよりは、数百年、或いは千年単位で使われていたものなので、最初は日時計だったのが、祭礼用になり、そのうち墓地になったとか、時代の流れとともに役割が変わったということも考えられるのではないかと思う。

大湯環状列石(野中堂環状列石) 東北ツーリングの写真
大湯環状列石(野中堂環状列石)
野中堂環状列石の中心部 東北ツーリングの写真
野中堂環状列石の中心部

おそらく、ストーンサークルと聞くと、イギリスのストーンヘンジを思い浮かべ、人知を超えたものとか、宇宙人との交信の場だったとか、とてもミステリアスに感じる人が多いと思う。私もそういったトキメキを持ちながらここを訪れた。

でも、日本のストーンヘンジと期待しながら訪れると、古代の神秘を感じられる場所であるのは確かだが、小さな石を並べただけのそっけない感じの遺構とで、少々ガッカリしてしまった。

ストーンヘンジのように石が大きければ迫力があるのだが、小石ばかり。せめてナスカの地上絵のように絵とか幾何学模様になっていれば面白く感じるのだが、単なる円。もっと数がたくさんあれば壮大なのだが、そうでもない。きっと遺跡にあまり興味ない人には中途半端な遺跡だと感じるかもしれない。

まだ朝早いので付属の資料館は開いていなく、幾分失望感を感じながら大湯環状列石を後にした。

角館の武家屋敷 東北ツーリングの写真
角館の武家屋敷

大湯環状列石からは国道341号線を南下していき、みちのくの小京都と呼ばれる角館に立ち寄った。

角館は、江戸時代初期にこの地を統治していた芦名家、そしてその後を継いだ佐竹家によって美しい街づくりが成され、それが現在でもいい状態で残っている。

特に見所となっているのが2つの武家屋敷通りで、北に内町武家屋敷街、南に田町武家屋敷通りがあり、両方とも伝統的建造物群保存地区になっている。

角館 安藤醸造レンガ造蔵 東北ツーリングの写真
安藤醸造レンガ造蔵
角館 古い商家 東北ツーリングの写真
古い商家

実際に歩いてみると、凄い。10軒程度そういった建物が通りに散在しているのかと思っていたのだが、通り全体が昔の風情を保っていて、その規模の大きさに驚いた。よくもまあこれだけ建物が残ったものだ。

武家屋敷以外にもこの界隈には古い建物が多く残っていて、まるで時代劇のセットに入ったかのよう。久しぶりに魂を揺さぶられるような町歩きができた。今回の旅で一番感動したといっても過言ではない。

ただ、いいことばかりではなく、問題もあった。一か所のエリアに固まってあるのではなく、直線状に長くあるので、歩いたら歩いた分だけ戻ってこないといけない。おかげで時間と体力をかなり消費することとなってしまった。

払田柵跡 東北ツーリングの写真
払田柵跡

角館から南下し、払田柵跡、六郷湧水群と見学していった。払田柵跡は周囲に何もないだだっ広い場所に柵と門があり、まるで映画のセットのよう。爽快な気分になれる場所だ。

復元された建物からかなり規模が大きかったように思うが、史書に記載がなく、「幻の柵」とも呼ばれているとか。なかなか面白い遺構だった。

小安峡 東北ツーリングの写真
小安峡

さらに南下していき、小安峡へ。皆瀬川の急流が長年にわたり両岸を深く浸食してできたのが小安峡。ここが凄いのは、川沿いの岩の裂け目から大噴湯と呼ばれる蒸気と熱湯が激しく噴き出てくること。

川沿いには遊歩道が整備されていて、間近でその様子を見ることができる。ちょっと硫黄臭いのが気になるが、なかなか楽しい体験だった。

銀山温泉 東北ツーリングの写真
銀山温泉

小安峡からさらに南下し、山形県へ入った。もう夕方。今日の宿を求め、風情のある温泉街として有名な銀山温泉へやって来た。

昨晩の寒さが体に堪えたのもあるが、最後の晩ぐらいは温泉宿に泊まって旅を締めくくろうと、最初から計画していた。

実際に訪れてみると、なかなかハイカラな場所で、大正ロマンという言葉がよく似合う。そして小汚い一人ぼっちのバイク乗りは、どうもこの場に馴染まない。

銀山温泉 古山閣 東北ツーリングの写真
銀山温泉 古山閣

とりあえず値段が安そうな宿を探してみよう・・・。と、宿を覗きつつブラブラと温泉街を歩くものの、どの宿からも一元様お断りとか、お一人様お断りみたいな雰囲気がぷんぷんとする。

おまけにすれ違う温泉客もお金を持っていそうな年配客ばかり。場違い感を強烈に感じてしまう。値段も高そうだし・・・。他の温泉街へ行くか・・・。いや、このまま家に帰ろう・・・。

出発前にはチェーン交換という痛い出費があったし、無職という厳しい状況においては、お金は使わないに越したことはない。それに宿に泊まろうと決めていた後に、やっぱりテント泊っていうのも精神的に辛い。

明日は蔵王などに行く予定だったが、それはまたの機会だ。今回はもう十分に旅をした。今から頑張って帰れば、なんとか夜中には家に着けるはず。家でゆっくり寝よう。それがいい。

と、一路東京に向かってバイクを走らせ、深夜、へとへとになりながら無事に帰宅。昼過ぎまでナマコのように眠り続けたのだった。

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前回の能登・高山、そして今回の東北と、続けて泊りがけのバイクツーリングに出かけた。前回は後輩たちと一緒でワイワイと楽しかったが、今回は一人ぼっち。旅の様子も大きく異なったものになった。

一人で旅するイメージ(*イラスト:アリクワズさん)

(*イラスト:アリクワズさん 【イラストAC】

一人で旅をすると、感動する風景などを見ても感動を共に分かち合える相手がいないし、困った場面で「旅は道連れ・・・」てな感じで力を合わせてくれる人もいない。

食事も一人だと寂しいし、ちょっと荷物を見ていてと、気を緩められる時間をつくれない。とりわけテント泊中は、テントを離れると不安だし、何かあったらと思うと一人だと心もとないしと、寂しさを通り越して、辛く感じる。

一人でテント泊するイメージ(*イラスト:けんけんさん)

(*イラスト:けんけんさん 【イラストAC】

一人旅の方が精神的に辛い機会が多いのは事実だが、メリットも多くある。一人で旅する場合、計画、決断、行動を全部一人でやらないといけないが、その分、常に自分で考え、真剣に選択を行うので、旅に身が入る。

旅をしている最中に、面白そうだからここに行ってみようかな・・・とか、面倒だからやっぱり行くのをやめようかな・・・といった迷いはしょっちゅう起こるもの。そういった時に一人だと臨機応変に計画変更をできるし、すぐに行動に移せるのもいいところ。

連れがいる場合、その人が楽しめるだろうか、機嫌悪くなっていないだろうか、疲れていないだろうか・・・などと、あれこれ気になってしまうものだ。一人ではそういた雑念がないので、迷いなく旅に集中できる環境だと言える。

とはいえ、逆に一人だと、気持ちが折れて妥協しまくってしまうこともあるだろう。人生の縮図のような旅では、一人旅は自分との戦いにもなる。旅は過程が楽しいというが、一人で迷ったり、葛藤したりする過程も楽しい。などと思えると、もう立派な旅の達人ではないだろうか。

旅の過程のイメージ(*イラスト:bonbonさん)

(*イラスト:bonbonさん 【イラストAC】

まあ旅は娯楽の一種。人それぞれ旅に求めているものが違うので、どっちが優れているとかという話ではない。自分自身を向上させたければ、一人旅を勧めるし、旅で気分転換をしたいとか、ストレスを発散させたいのなら、仲間と旅に出るほうがいいというだけのこと。

今回の一人で行った東北ツーリングは、最後の方は妥協してしまったが、改めて自分について、そして自分の旅への熱意を知ることができ、いい旅になったと思う。それとともに10月の東北の寒さ、青森の遠さを身に沁みて実感した旅でもあった。

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