旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

尾道にゃんこ#1
あじさいと初尾道にゃんこ
(2018年6月)

あじさいの季節の尾道散策と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。

広告

§1、イントロダクション ~映画の町、文学の町~

尾道水道を望むの写真
尾道水道を望む

尾道といえば、映画の町。世間一般的には、そういった印象が一番強いだろうか。尾道水道を望む崖地に木造の家屋が建ち並んでいる様子や、崖地や展望台から尾道水道を眺め降ろす風景、そして尾道水道沿いに並ぶ建物や造船所、水道を行き来する船の情緒が美しく、数多くの映画のロケ地になっている。

町には映画資料館があり、観光案内所などにはロケ地マップも用意してある。映画に登場する景色や情緒を求めて散策できるというのは、尾道ならではの旅。映画の登場人物に気持ちを重ねながらその場面を歩くと、旅特有の脱日常の心境がより強いものになるに違いない。

尾道 映画資料館の写真
おのみち映画資料館

とはいえ、題名すら知らない映画のロケ地巡りをして、心底楽しいかというと、それはちょっと微妙なところ。「いい景色だね」「情緒があるね」で終わってしまい、後で振り返ってみても、特に印象に残っていない・・・となる場合も多い。

旅の予習といった感じで、一つは有名な映画を見ておき、「この風景はぜひ見たい!」「この風景の中で登場人物のように黄昏たい!」というようなお気に入りの風景を見つけておいたほうが、尾道を訪れる期待や、訪れたときの感動、また、帰宅後の余韻も大きくなることだろう。

尾道 文学のこみちの写真
文学のこみち

映画の町というイメージが強い尾道だが、文学の町としても知られている。温暖で過ごしやすい気候、風光明媚な土地柄、過去には多くの文人墨客が訪れ、滞在した。

そういった文人たちを称え、また文人たちの滞在を記念し、千光寺山の中腹から山頂にかけ、「文学のこみち」と名付けられた遊歩道が整備されている。この道沿いには、尾道にゆかりのある25名の作家、詩人の詩や歌が刻まれた文学碑が置かれている。

尾道 林芙美子像とあじさいの写真
林芙美子像

尾道ゆかりの文人の中でも特に有名なのが、女流作家の林芙美子女史。その功績をたたえ、尾道商店街の入り口に立派な像が設置されている。

彼女は尾道の小学校、高校と卒業し、その後尾道から離れ、波乱万丈の人生を送りながら多くの本を執筆した。代表作は放浪記で、ここ尾道での生活も描かれている。

今回は林芙美子女史を偲んで行われる「あじさいき」を見学するために、尾道を訪れた。この「あじさいき」は毎年、命日の6月28日に近い日曜日に行われている行事で、当日は林芙美子像の前で、母校の児童や学生によって合唱や放浪記の朗読、紫陽花の献花などが行われる。

§2、崖地の散策 ~尾道城を目指して~

イベント開始時間よりも早く着いたので、少し崖地を散策してみることにした。今回は、買い物ついでにイオンに車を止めたので、尾道駅の北付近から散策開始。

尾道 ガウディハウス(下から見た図)の写真
尾道 ガウディハウス(上から見た図)の写真
ガウディハウス

まずはガウディ・ハウスとして知られる建物に立ち寄った。屋根が幾層にも重なり、まるでモダンアートのような佇まい。崖という立地が、更に建物の魅力を引き立て、見る者を感動させる。

よく天空のなんちゃらといった遺跡や城砦があるが、それがもし普通の平地にあったらと考えると、そこまで大したことはないかな・・・となることも多い。色んな観光地を見て歩くと、やっぱり立地場所というのは大事だな、と思ってしまう。

尾道 崖の道の写真
崖の道

特に当てがあるわけでもなく、散策マップも持っていなかったので、崖上に見える尾道城を目指してみることにした。

で、崖地を登っていくのだが、崖地の道は狭いし、場所によっては建物に遮られて視界もよくない。何より土地勘がない。歩いていると、自分がどのあたりを歩いているのか、この道で正しいのか、分からなくなってくる。

ニャンコに遭遇 尾道ニャンコの写真
記念すべき、初にゃんこに遭遇!

この道で尾道城へ行けるのだろうか・・・。また行き止まりになってしまわないだろうか・・・。ちょっと不安な気持ちで歩いていると、塀の上に猫がいた。しかもこっちをじっと見ている。

おっ、猫だ。猫がいる。尾道は猫の町とも言われているけど、本当に町の中に猫がいるんだ・・・。これが私が尾道で出会った最初の猫になり、私を尾道にゃんこの虜とした猫でもある。

塀の上のニャンコ 尾道ニャンコの写真
塀の上のにゃんこ

驚かせないように少し近づいてみるが、塀の上のニャンコはじっとこちらを見た状態で動かない。警戒しているのは確かだが、私の出方を伺っているといった様子。

どうやら人にある程度慣れていて、人の姿を見たら条件反射的に逃げるというわけではないようだ。

何か御用? 尾道ニャンコの写真
何か御用?

更に近づいてみたが、まだ逃げていかない。写真を撮っても逃げていかないところをみると、普段から写真を撮られ慣れているのかもしれない。

それにしても・・・、不思議な表情をしている。警戒しているような・・・、何か訴えているような・・・、普段猫に接することがないので、猫の表情から何を考えているのかを察することができない。

さらに近づき、2mぐらいまで距離が詰まったところで、ニャンコは塀から飛び降り、路地を進んでいってしまった。あら、残念・・・。と思ったら、すぐに立ち止まり、こっちを振き、私をじっと見つめてくる。

何だろう。警戒していることには違いないが、ちょっと付いてきて・・・といった表情をしているようにも見える。これは・・・、もしかして子供の頃に憧れたファンタジー的な展開ではないのか・・・。

猫の聖域 尾道ニャンコの写真
猫の聖域

ちょっと興奮気味にニャンコの後ろをついていくと、ニャンコは木漏れ日が降り注ぐ神社境内のような空間に入っていった。まるで猫の聖域といった感じで、何か神秘的に感じる。小さな猫がいるということは、お母さん猫だったのかな。そして、子供がお腹を空かせていますと、私に訴えているのかな。

近づいていきたいところだが、うっかり中に入ったら自分の体が猫に身体が変身してしまうのでは・・・と、本能的に拒絶反応が起きる。

そう、ここは尾道。何かの拍子に身体が入れ替わってしまう事態が起きてもおかしくはない。(映画の影響)

尾道 崖地の町並みの写真
崖地の階段

猫の聖域のような場所を後にすると、さらに路地を進んでいった。ここでは細い通路や階段が迷路のように張り巡らされているので、町全体が大きな迷路のよう。

視界が悪いので、現在地が分かりにくく、迷子になる確率が高いが、先ほどの猫に会ってからというもの、迷子になる不安よりも、また猫に遭遇しないかな・・・といった探検気分やら、好奇心が湧き上がってきて、路地や坂道を歩く足取りが軽い。

子猫のお昼寝 尾道ニャンコの写真
子猫のお昼寝

猫を探しながら歩いていると、通路の真ん中で子猫が昼寝をしていた。細い路地の坂道と猫。実に尾道らしい情景だ。

どうやら、ここでは一生懸命探さなくても、ブラブラと歩いていれば、猫がその辺に落ちている・・・となるようだ。

尾道のアジサイ寺 持光寺の写真
尾道のアジサイ寺 持光寺

道を間違えつつ歩いていると、アジサイ寺という案内板を発見。今日は気分的に紫陽花日和。あじさいきに因んで、ちょっと立ち寄ってみることにした。

尾道のアジサイ寺 持光寺の写真
持光寺の紫陽花とお地蔵様

このお寺は持光寺。境内は紫陽花の花で一杯・・・というほどではなかったが、多くのアジサイが咲いていた。ただ、もう6月も終わり。旬の時期は過ぎてしまったようで、少し花がしおれ気味だった。

坂道でお昼寝 尾道ニャンコの写真
坂道でお昼寝

路地に設置してある散策マップで現在地を確認し、今度こそ山頂にある尾道城に向かって出発。坂道を登っていると、木陰で猫がお昼寝していた。

わざわざ人が歩く通路で寝ていなくても・・・と思うのだが、人への抵抗感がないようで、横を通ってもお構いなし。さすがニャンコの町と言われるだけはある。

壁抜けニャンコ 尾道ニャンコの写真
壁抜けニャンコ

更に登っていくと、突然、家の塀から忍法壁抜けの術のように猫が出てきた。・・・ってことはなく、垣根の隙間から出てきて、私の前に現れた。

野良猫といえば、「人を恐れ、知らない人が近づくと、反射的に逃げていくもの」といった固定概念があるので、自分から手で触れられるような間合いに入ってくる状況に驚いてしまう。

日陰でお昼寝 尾道ニャンコの写真
日陰でお昼寝

構ってほしくて、私の前に現れたのか。かがんで写真を撮り、撫でてやろうとしたら、私を気にしつつ、目の前を素通りしていった。

そして道の端の日陰に入り、そこでゴロンと横になってしまった。なんだ。お昼寝の場所に行きたかっただけか・・・。ちょっと期待外れな展開に、がっかり。

尾道城の写真
尾道城

大量の汗をかきながら崖地を登っていくと、尾道城に到着。いや~、きつかった。下から見て、そこそこ高い場所にあるというのは認識していた。でも、この程度の高さなら楽勝!なんて思ったのだが、そう甘くはなかった・・・。

でも、苦労したいがあったというもので、なかなか立派なお城がそこにあった。高台にあるので、青空によく映えているし、眼下の眺めも最高。まさに天空の城といった感じだ。

尾道城の写真
天空の城

ただ、この城は歴史に実在したお城ではなく、観光用に造られた私的なお城だったりする。すぐ間近で見ると、やっぱりというか、文化財の城とは違ってコンクリートっぽさや、近代的な建物っぽさを感じてしまう。

とはいえ、少し離れるとお城として全く違和感を感じないし、何より立地条件が最高。これはこれでありではないか。そう思ってしまう。ただ、現在は廃業してしまったようで、閉鎖中。中に入ることはできない。

§3、あじさいき

尾道 あじさいき アジサイに囲まれる芙美子女史の像の写真
アジサイに囲まれる芙美子女史の像

イベントが始まるので、急いで坂を下って商店街に戻った。「あじさいき」は、尾道ゆかりの作家、芙美子女史を偲んで、毎年、命日の6月28日に近い日曜日に行われている。

なぜ「あじさいき」なのか。それは芙美子女史が好んでいたのが、アジサイ(紫陽花)だったから。会場となる林芙美子像には、あじさいきの名にふさわしく、多くのアジサイの花が献花され、とても華やかな雰囲気となっていた。

尾道 あじさいき 小学生の合唱の写真
小学生の合唱
尾道 あじさいき 小学生の合唱の写真
高校生と地元の団体の演奏

イベントでは、式典や紫陽花の献花の他に、母校にあたる小学校の児童による放浪記の朗読や、高校生の合唱、地元の団体の演奏などが行われる。

林芙美子女史の像があるのは、本通り商店街の入り口の路上。スペースのある公園ではないので、ローカルなイベントらしく、道路を封鎖して、狭いスペースで合唱や演奏などの催しが行われることになる。

イベントの手作り感とか、お互い様的な感覚とか、昭和的な雰囲気を随所に感じられ、まさにイメージする尾道らしいイベントだった。

尾道 あじさいき 紫陽花の献花の写真
紫陽花の献花

林芙美子女史が通っていたのは、尾道市立高等女学校。現在の広島県立尾道東高等学校になる。あじさいきでは所縁のある東高の合唱部の生徒たちが校歌などの合唱を行う。そして紫陽花の献花も務める。

最後に昭和の情緒が残る尾道らしく、映画のワンシーンのようにクラシックな白いセーラー服で楽しそうに献花している女学生の写真で、今回の尾道にゃんこの最後を締めくくろう。

旅人が歩けばわんにゃんに出会う
尾道にゃんこ編
#1 あじさいと初尾道にゃんこ(2018年6月)
#2 桜の季節の尾道にゃんこ(19'4)につづく Next Page
広告
広告
広告