旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

尾道にゃんこ#10-3
桜雨と尾道にゃんこ その3
(2023年4月)

桜を散らす雨が降る中、尾道と竹原を散策した様子と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全6ページ)

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§4、浄土寺の鳩

尾道の地図(国土地理院地図)

国土地理院地図を書き込んで使用

尾道を代表する寺といえば、千光寺、西國寺、そして浄土寺になる。千光寺と西國寺は桜の名所として知られている。浄土寺はどうだろう。桜の時期に浄土寺を訪れたことがなかったので、今回の訪問目的の一つにしていた。

ちょっと仮眠した後、昼前に出発。小雨が降ったりやんだりした空模様の中、商店街を東に突き抜け、更に2号線を歩いていった。

浄土寺は、尾道市街地の東端に立地しているので、中心部からかなり歩かなければならない。いつでも気軽に・・・というわけにはいかず、尾道の散策回数が多い私でも、浄土寺へは今まで数回しか訪れていない。

尾道 浄土寺 浄土寺の参道と山陽線の写真
浄土寺の参道

しばらく歩くと、到着。ここ浄土寺も、参道を線路が横切っている。でも、ここでは線路の下をくぐるようになっているので、踏切で電車を待ったり、歩きにくい踏切を歩く必要がない。

その点ではいいのだが、いかんせんここの高架の高さが低い。なので頭を打ちそうになるし、続く階段も急で、歩きにくい。晴れの日に訪れたときは、そこまで気にならなかったが、傘をさしている雨の日だと、結構気になる・・・。

尾道 浄土寺の山門の写真
浄土寺の山門

浄土寺は、真言宗泉涌寺派の大本山になる。山号は転法輪山で、院号は大乗院。本尊は十一面観音菩薩になり、山門にでかでかとそのことが掲げられている。

山門は朱色で塗られていて、とても目立つ。この山門は室町時代の建築様式で建てられていて、重要文化財に指定されている。

尾道 浄土寺山展望台から見る尾道水道に沈む夕日の写真
浄土寺山展望台から見る夕日(冬至頃)

尾道では、千光寺と千光寺山展望台が有名だが、浄土寺と浄土寺山展望台の組み合わせもなかなか素敵で、写真好きを中心に隠れスポットとして知られている。

特に太陽が南に沈む冬の時期、浄土寺山展望台や浄土寺不動岩展望台から見る、尾道水道に沈んでいく夕日は素晴らしい。

ただ、ここまで行くのが大変で、かつての修行場となったような急な山道を登っていかなければならない。これがまるで登山のよう・・・。車でも展望台付近まで行くことができるが、結構狭い道を通っていかなければならなく、運転に自信がない方は、一人で訪れるのはやめておいた方がいいかもしれない。

尾道 浄土寺 国宝の本堂と花びらの写真
国宝の本堂と花びら

浄土寺の境内に入ると、散った桜の花びらが雨水に流され、あちこちで固まっていた。地面に桜色の塗料を流したみたい・・・。見方によってはアートに見える。最近では、お寺でのアートも流行っているので、うまくやれば話題になりそうでもある。

まずは本堂へお参りしよう。本堂は1327年に建立されたもの。和様を基調として、大仏様式と禅宗様式の細部を取り入れた中世折衷様仏堂建築の代表作となるようで、なんと国宝に指定されている。

国宝とは凄い。ということになるのだが、修繕が施され過ぎていて、素人目には普通のお寺のお堂とあまり変わらなく見えたりする。実際、国宝の案内板がなければ、全くわからなかった・・・。

尾道 浄土寺 桜の木とお地蔵様の写真
桜の木とお地蔵様

本堂横には桜が植えられていて、その下にはお地蔵様が桜まみれになって佇んでいた。満開で晴れた日だと、さぞ美しい光景になるのではないだろうか。

境内全体でみると、桜はまとまってではなく、所々に植えられていて、境内にアクセントを加えているといった感じになる。千光寺や西國寺のように桜爛漫な様子を期待して訪れると、ガッカリするかもしれない。

尾道 浄土寺 阿弥陀堂と多宝塔の写真
阿弥陀堂と多宝塔

境内には文化財に指定されている建物が建ち並んでいる。本堂の横にあるのが重要文化財の阿弥陀堂。更に向こうにあるのが、国宝の多宝塔。

阿弥陀堂の起源は、南北朝時代に遡るという。古さもさることながら、優れた和様建築として評価されている。

多宝塔は二重の屋根を持った塔で、1328年の建立。阿弥陀堂よりも少し古く、中国地方における古塔の一つと知られている。

尾道 浄土寺 国宝の多宝塔で雨宿りする鳩の写真
鳩の雨宿り

素人目には、多宝塔が国宝なのは、納得。本堂よりも遥かに貫禄を感じる。その多宝塔に、これが国宝の塔か・・・と近づいていくのだが、なんとびっくり。屋根の下にたくさんの鳩がいるではないか・・・。って、鳩が雨宿りしているのか。なんか凄い光景だ。

尾道 浄土寺 国宝の多宝塔で羽を休める多数の鳩の写真
多宝塔と多数の鳩

横に回り込んでも、びっしりと鳩が塔に引っ付いている。凄まじい数で、鳩がうごめいているといった感じ。まじまじと見ていると、ちょっと気持ち悪い・・・。

もはや多宝塔ではなく、多宝塔の形をした鳩の巣だな・・・。これ。鳩の糞もたくさんついているし・・・。って、鳩さん。これ、人類の宝、国宝だぞ。

鳩のフンに苦しむ、糞害などという言葉がある。お寺の人も「国宝に何てことをするんだ!」と、憤慨しているに違いない。などと、思ってしまうのだが、必ずしもそうではないようだ。

ここ浄土寺は、足利尊氏公に所縁がある。尊氏公の白鳩伝説にちなんで、境内では鳩が大事にされているとか。

実際、境内の絵馬掛けを見ると、鳩の図柄のものも多いし、鳩の餌も売っていたりする。鳩の寺として、鳩と共存を目指しているようだ。

尾道 浄土寺 休憩所となっているテントの下で雨宿りする鳩の写真
鳩の休憩所

休憩所となっているテントの下でも、鳩が雨宿りしていた。まさに鳩の寺。いや、ここは鳩の楽園だな・・・。

尾道 浄土寺 群れから外れて境内の水溜まりで水遊びをする鳩の写真
群れから外れて水遊びをする鳩

多くの鳩が雨宿りをしている中、一羽だけ輪から外れて雨水に浸かっていた。人間でもいるんだよな。輪を乱し、集団と違ったことをするやつが・・・。鳩でも同じなんだ。そう思うと、ちょっと鳩に親近感がわいてきたりする。そう、私がそういうタイプなのだ・・・。

尾道 浄土寺 群れから離れて水浴びをする鳩むの写真
ほっとけ

親近感を持って鳩の写真を撮ってみるのだが、その表情は、ほっとけ・・・といった憮然とした感じ。きっと君は大物になるよ。

尾道 浄土寺付近の坂道の写真
浄土寺付近の坂道

浄土寺からは、線路の北側を通って西郷寺の方へ。この付近は参道っぽい趣きがあり、雰囲気がいい。道沿いには大きな桜の木もあるので、満開の時にまた訪れてみたい。

尾道 桜の絨毯とかしている西郷寺境内と本堂の写真
西郷寺の境内と本堂

今日入学式がある尾道東高校近くに、西郷寺がある。境内には大きな桜の木があり、散った桜の花びらで、地面が桜色の絨毯になっていた。

鎌倉時代の後期、一遍上人によって浄土教の一派、時宗(じしゅう)が興った。総本山は神奈川県藤沢市の清浄光寺。通称である遊行寺の方が名が知れているだろうか。箱根駅伝で登場する遊行寺坂といえば、ピンと来る人が多いだろう。

この西郷寺はその時宗に属し、本堂は南北朝時代に建てられた。浄土教に特徴的な建築様式であり、また時宗の本堂としては最古のものということから、国の重要文化財になっている。

尾道 西郷寺 桜の花びらだらけの七福神の写真
花びらだらけの七福神
尾道 西郷寺 花びらが引っ付く六地蔵などの写真
花びらが引っ付く六地蔵など

西郷寺境内にはお地蔵様をはじめとして、石像が多く置いてある。その石像の頭上に桜の木があるので、大量の花びらが石像周辺に舞い落ちることになる。

普段ならお地蔵さんの上に桜の花びらがのっかる程度で済むのだろうけど、今日は雨。降ってきた桜の花びらが石像にペタペタと付着し、水玉模様ではなく、桜玉模様みたいになっていた。

ご飯粒を引っ付けているようで、可愛らしい・・・とか、虫が引っ付いているようで、気持ち悪い・・・とか、見方はそれぞれだと思うが、コントラストが大きいので、見ていると目がチカチカしてしょうがない。

尾道 旧久保小学校の写真
旧久保小学校と桜

西郷寺の隣には久保小学校が・・・、あるにはあるけど、2021年3月末で88年の歴史に幕を下ろしてしまった。学校自体はまだ存続していて、現在は移転している。今後は周辺の小学校と統合が行われ、ここに新しい校舎が建てられる予定だとか。

小学校の敷地は、まだそのままになっていて、レトロ感を強く感じる校舎が残っていた。この校舎は、1933(昭和8)年建てられたもの。大正時代から戦前にかけての大きな建造物は、ヨーロッパ古典様式を取り入れたものが多い。

この校舎も、そういった影響を受けたのであろう。さりげない感じでそういった要素が取り込まれている。とりわけ、縦長の窓が3つ並んでいる様子や、三階から屋上にかけての装飾に、大正ロマンを感じたりする。

尾道 旧久保小学校の写真
正門から

さぞ名のある方が設計したのではないか。ル・コルビュジエだったりして・・・。いや、その弟子だった前川國男かも。などと、大物の建築家を頭に浮かべながら検索してみると、設計したのは尾道市土木課の営繕技師であった前田清二氏になるそうだ。なんとびっくり。全く無名の人・・・。あっぱれという言葉しか思い浮かばない。

ただ、名のある人が設計していたなら、文化的価値が・・・とか、後世の為に保存を・・・となるのだろうけど、無名だとなかなかそういった話は出てこない。

しかも、ここは土地がめっぽう少ない尾道。解体という流れになってしまうのも、仕方のないのだろう。でも、もったいない。有効活用できないものだろうか。

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