尾道にゃんこ#11-1
除虫菊と尾道にゃんこ 前編
(2023年5月)
ゴールデンウィーク中の尾道と因島の散策と、出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全2ページ)
§1、イントロダクション ~コロナ明けのGW~
間もなくゴールデンウィーク。今回のゴールデンウィークは、新型コロナウイルスの規制が解除されてから、初めて迎えるゴールデンウィークになる。当然、各行楽地では、コロナ以前のような賑わいが戻ってくることへの期待が高まっている。
ただ、観光客を迎える行楽地の様子がニュースで流れていたが、想定外のことも起きているようだ。急に人出(需要)が増えても、対応する人がいないと、うまく回らない。
例えば、宿泊施設では従業員が足らなく、全ての部屋を稼働できないといった事も多々起きているとか。いきなり元通りに復活。めでたし。めでたし。ということには、ならないみたいだ。
もっと広く世界に目を向けても、一気に需要が減ってしまった航空業界では、乗務員不足から飛行機が飛ばせなかったり、空港で働く人が足りずに、セキュリティーチェックや荷物の受け取りに何時間も待たなければならなかったり、最悪、空港の職員不足で運休となるケースもあったりする。
更には、コロナ明けのリベンジ旅行となり、世界各地の有名観光地には溢れんばかりの人が押し寄せ、観光をするのに何時間も並んだりと、大変な状態になっているようだ。
ここ数年、閑古鳥が鳴いていたと思ったら、一気にパンク状態へ。こうも目まぐるしと経験則も当てはまらない。コロナ前の常識やガイドブックで旅をしたら、予定が狂いまくってストレスが溜まりそうだ。
そういった世界的にリベンジ旅行で盛り上がっている中、日本では間もなくゴールデンウィークを迎える。当然、軒並み長距離の公共交通機関は満席、宿泊施設も満室となっていて、期間中は各地で劇混みの予想が出ている。
このような大混雑する日に旅をしても、人を見に行ったり、渋滞にはまりに行くようなもの。家で大人しく過ごしたほうが、時間を有意義に使えるとも言える。
でもまあ、私のように公共交通機関を使わず、宿泊施設も利用せず、自由気ままに旅をする人間には、あまり関係ない・・・。ということはないが、そこまで深刻になる必要もない。
有名な観光地を避ければ、そんなにストレスはならないだろうし、車での移動も、時間や場所を選べば、ひどい渋滞に巻き込まれないで済むはず。そもそも、広島周辺ではあまり深刻な渋滞にはならない。
少々混雑していても、コロナ明けの開放感あふれる楽しい雰囲気を味わいに、どこか行きたいな。さて、どこへ行こう・・・。せっかく行くならゴールデンウィークらしい場所がいい。
ゴールデンウィークといえば、まず思い浮かぶのが、イベント。ゴールデンウィークには、各地で町を挙げた大規模なイベントが行われている。そういったイベントを旅の目的にするのも、特別感があって楽しい。
広島で言えば、市内で行われるフラワーフェスティバルが全国的に知られている。ただ、今年はサミットの影響で6月の開催となっている。
他の町では何かイベントとかやっていないかな・・・と、文明の利器であるインターネットを駆使。中国地方のイベント情報を物色してみると、3年の中断期間を経て、4年ぶりに復活というところが多いものの、様々な事情で内容が縮小されているものが多い。
なかには今年も中止だったり、そのまま消滅しているものもある。こういったイベントに関しても、完全にコロナ前と同じというわけにはいかないようだ。
尾道の観光サイトを訪れてみると、でかでかと「連休中は尾道市内は渋滞します。尾道は駐車場が少ないので、駐車場が満車になります。自家用車で訪れる方はご注意ください。」と、掲示が出ていた。
行楽客が集中するゴールデンウィークは、フェリーでしか訪れることのできない宮島や、ウサギの島の大久野島は、乗船待ちの観光客で大混雑する。
でも、尾道は島じゃないし、ちょっと混雑するぐらいではないのか。普段の尾道を知っているので、ちょっと大袈裟ではないのかな・・・。と、この時は思っていた。
それよりもイベント情報を見ると、因島で除虫菊まつりをやっているとあった。4日は他に行く場所もないし、因島へ行ってみようかな。と、計画を立て始めた。
§2、車中泊
あれこれと考え、今年のゴールデンウィークは、3日に混雑が少なそうな鳥取の米子の方へ行き、日吉神社の神幸神事「よいとまかせ」などを見て、4日は因島や尾道。4日の夕方ころから5日にかけて天気が崩れるみたいだし、5日は道路も混みそうだし、4日のうちに帰宅することにした。
「よいとまかせ」は、米子市淀江町にある日吉神社の神幸神事になる。「よいとまかせ」というのは、「いい世の中だなあ、さあ、もっといい世の中でありますように」との意味。
当日は、杖払を先頭に、寺社奉行御供廻り、獅子舞や山車、神輿などが続く総勢200名もの御幸行列が、「よいとまかせ」という掛け声を発しながら町を練り歩いていく。「よいとまかせ」の声が響く中、古風な町に大名行列のような古風な行列が進む様子は、とても趣きがあった。
米子ではこの他にも、藤祭りや古墳まつりを見て、夕方、中国山脈を越えて、山陰から山陽へ。一度家に帰るのは面倒なので、どこかで車中泊をすることにした。
で、フラフラと道の駅を回っていたら、どこも混雑していた。特に尾道からほど近い三原にある道の駅「みはら神明の里」は、夜9時ごろに訪れると、車中泊の車を中心に満車。中に入れないといった、ありえない状態になっていた。さすがゴールデンウィーク・・・。
コロナ禍で増えたのが、車中泊。昔は細々といった感じで、旅好きな人や事情のある人が行っていたのだが、コロナ禍を境にキャンプが広まり、その延長のような感じで、車中泊も広まった。
旅の費用を節約するために一番効果的なのは、宿泊費を抑えること。実際、移動費、食費はあまり大きく削ることができない。私がユーラシア大陸を横断したときも、旅費節約のために一泊500程度の安宿を探して、旅をしていた。
日本国内を旅する時も、基本はバイクにテントを載せて野宿し、知人や親せきの家に泊めてもらったり、時々安い宿に泊まって体を休めていた。
広島に引っ越してきてからは、犬と旅をするようになったので、車で旅行をするようになった。犬と泊まれる宿もあるが、とんでもなく高いし、高い料金を払うならゆっくりしないと損となっては、旅の効率が悪い。外で宿泊する際は車中泊をしている。
「安く済んでいいな・・・」とか、「ワイルド感があっていいな・・・」と、こういう旅に憧れる人もいるが、もちろんいいことばかりではない。外で寝る不安感、落ち着いて寝れない、狭い、疲れが取れない、などと、様々な面で不便を強いられる。
分かりやすく言えば、金銭的部分を体力や精神力で補うといった感じ。トラブルに巻き込まれるリスクもあるので、誰にでもお勧めというわけではない。自分なりにはっきりとした目的や、やらざるを得ない事情がある人のみ、お勧めとなる。
でも、最近ではキャンプの延長のような感じで、大人数で車中泊をする人がいる。それなりに長くこういった旅をしてきているので、はっきりと言えるのだが、キャンプはレジャー。車中泊は野宿。である。
車中泊の場合は、立つ鳥跡を濁さずという言葉を信条に、暗くなって訪れ、明るくなったら去る。すみません。ちょっと使わせてもらっています。面倒や負担はかけませんので・・・。といった気持でやらないと、必ず施設側、他の利用者とトラブルになる。キャンプのようなことがしたいなら、存分にキャンプ場でやってほしい。
とまあ、愚痴が長くなってしまったが、道の駅は混んでいて、車中泊をするどころではなかった。
知らない土地だと、こういう場合、どうしよう・・・。どこで寝よう・・・。と、代わりの場所を探すのに苦労するが、この付近の土地には慣れているので、第二、第三のプランをすぐ用意できる。もう少し車で走り、海岸沿いにある休憩所で、一晩明かすことにした。
§3、早朝の尾道
日の出とともに起きると、身支度を整え、尾道に向かった。連休中は、押し寄せる観光客のあまりの騒々しさに、猫がどっかに隠れているとか、聞いたことがある。
因島へ行った後に戻ってくるつもりにしているので、まずは様子見をしよう。休日の早朝だし、邪魔にならないところに停めておき、猫がいそうだったら駐車場に入れよう。
車を停めて歩き出すものの、なかなか猫に出会わない。猫が暮らしている飲み屋街に行ってみたら、よく出会う猫がスクーターのシートの上で凄い体勢で寝ていた。まるで分厚いクッションのよう・・・。
もう完全に粗大ごみと化したスクーターの上が、お気に入りの寝床になってしまったようだ。
更にウロウロしてみると、通りの隅にうずくまっている猫を発見。何やら排水溝が気になるようで、格子状の蓋の隙間に手を伸ばしていた。
変な猫だな。一体何をしているのだろう。溝の中に何か面白いものがあるのかな。もしかして、もらったおやつを落としてしまい、途方に暮れているとか・・・。
気になる・・・。行ってみよう。ゆっくりと猫に近づいていくものの、猫は私を警戒しつつも、逃げない。余程大事なものを落としたのだろう。拾える状態なら拾ってやろう。そうしたら猫の恩返しが期待できるかも・・・。
猫の傍に行き、溝を覗き込んでみると、なんと溝の中に動く魚影が・・・。って、おい。赤い金魚がいるぞ。これって祭りの金魚すくいに使われたり、大型魚の餌にされる小赤ではないか。
しかも、そこそこ大きい。なんでこんなところにいるの。というより、なんでこんなところで生きてられるの。全く予想していなかった展開だったので、驚いた。
猫が物欲しそうに溝の中に手を突っ込んでいた理由が判明。分かって、すっきり。でも、金魚を捕ってやることはできないな。
じゃあ、またね。と去っていくのだが、猫は不満そう。傍に寄ってきたのなら、捕ってくれてもいいんじゃない、といった渋い顔で、去っていく私を見ていた。
この後も早足で商店街のいつも猫がいる場所を回ったのだが、猫に出会う事がなかった。連休中は猫に会えない、というのは、もしかしたら都市伝説ではないのかもしれない。その検証は、因島に行った後に戻ってきて、ゆっくりと確かめてみよう。