尾道にゃんこ#9-1
鞆の浦と尾道にゃんこ その1
(2023年3月)
春先の鞆の浦と尾道の散策と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全4ページ)
§1、イントロダクション ~春先の風物詩~
今年の冬は雪が多かった。滅多に雪の積もることのない広島市内でも、12月、そして1月と、何度も雪が積もった。一度の積雪量はそこまで多くはなかったが、雪が積もった回数では記録史上ってやつになるのではないだろうか。
なんて寒い冬なんだ。地球が温暖化ではなく、寒暖化しているのではないか。と、多くの人が困惑していたのだが、2月に入るとポカポカと暖かくなり、3月には一転して暑くなってきた。
その為、今年の桜の開花予想は、全国的に「例年よりも早い」といった予想になっている。もちろんそれは桜だけに限ったことではない。梅や水仙など春先に咲く花は軒並み開花や満開の時期が早くなり、季節が少し前倒し状態になっている。
結局のところ、気圧配置の影響で一時的に寒かったり、雪が多かっただけで、地球温暖化というシナリオは絶賛継続中のようである。
とまあ、寒かった冬から一気に春がやってきた。東京から広島に引っ越してきて、あれっと思ったことの一つが、中国地方には梅とか、早咲きの桜などといった一足早い春の風物詩が少ないこと。
関東では青梅、小田原など各所に大きな梅林があり、梅まつりが盛んに行われている。そのすぐ後には河津桜を中心とした早咲き桜が見ごろを迎える。早咲き桜は、河津桜の原木のある河津や伊豆半島、三浦半島や房総半島などに名所が幾つもある。
といったわけで、関東では2月、3月に一足早い春の訪れを楽しむことに事欠かない。このへんの事情は、せっかちな関東人の気質と、のんびりとした中国地方の気質の差が関係しているかもしれない。例えば、ひな祭り。中国地方では旧暦や月遅れでやっているところが多いが、関東ではほぼ新暦で行っている。
以前は旧暦でやっているところもぼちぼちとあったが、3月3日を過ぎると、関東では「今更ひな祭り・・・」といった時期外れ感が強く、いまいち盛り上がりに欠ける。で、結局、他に合わせて新暦に替えてしまった。
広島でも一足早い春が楽しめる場所はないだろうか。観光サイトなどを調べてみると、福山の南、鞆の浦周辺に田尻町菜の花畑、田島のやぶ椿と水仙の里といった見所があるようだ。
鞆の浦は古くからの港町。尾道とは少し風情が違うが、ここも猫が多いことで知られている。一足早い春と、猫を求めて旅をしてみるか。そのついでに尾道に寄って帰ろう。ということで、3月中旬に鞆の浦と尾道に向かった。
§2、一足早い春の風景
最初に訪れたのは田尻町にある菜の花畑。高台に菜の花畑が広がっていて、瀬戸内の海を見下ろす感じがいい。もう少し広いと圧巻となるのだが、平坦な土地が少ない地域なので、しょうがない。
ちなみにこの付近の高台には杏の木が多い。杏の花は一般的な桜(ソメイヨシノ)とほぼ同じ時期(気持程度早い)に咲き、菜の花や瀬戸内の海とコラボする様子はなかなか美しい。その年の気候にもよるが、3月下旬の杏まつりに合わせて訪れるのが、一番のお勧めになるだろう。
菜の花畑を見終わり、駐車場に戻っている途中で、にゃんこを発見。颯爽と施設の駐車場を横切っていった。
「ちょっと待ってよ。」と声をかけても、足を止めることなく、むしろ足を速めて去っていってしまった。できれば菜の花畑で出会いたかったな・・・。
次に訪れたのは鞆の浦だが、先に田島のやぶ椿と水仙の里を紹介しておこう。鞆の浦のある半島部分の左側に浮かんでいるのが田島。無料の橋で半島部分とつながっている。
田島の南側斜面にあるのが、やぶ椿と水仙の里。樹齢300年のやぶ椿と水仙が自生していた場所を、地元の住民が手入れし、この場所が出来上がった。
訪れると、約10万本の水仙は少し枯れかけていたが、まだ見頃。河津桜はちょうど満開。やぶ椿の方は少し遅かったようで、ほぼ散ってしまっていた。どの花に合わせるかで訪れる時期を悩みそうだ。同時に咲いてくれれば一番いいのだろうが・・・。
離島には猫が多い。それが世の理・・・なのかどうかはわからないが、一般的には多い。橋でつながっているとはいえ、田島も立派な離島。あちこちで猫に出会えるだろう。そう思い、島内ではゆっくりと車を走らせ、猫がいないかと簡単に探してみたが、遭遇することはなかった。
会えた動物といえば、やぶ椿と水仙の里のヤギたち。ふれあい動物園のようになっていて、人懐っこいヤギと触れ合えたりもする。
§3、鞆の浦のにゃんこ
福山市中心部から南へ15キロほどの所にある鞆の浦。古くから潮待ちの港として栄え、その名は万葉集に詠まれている。沖に仙酔島や弁天島などが浮かぶ景色は美しく、日本で最初の国立公園に指定されたことでも知られている。
鞆の浦は、江戸時代に北前船の寄港地として栄えた。現在でも細い路地には古くからの商家が並び、当時の町並みの雰囲気が残っている。また、朝鮮通信使が寄港した際に迎賓所となった福禅寺など、趣きのある建物も残っていて、散策の楽しい町になっている。
猫が多くいるのは大波止のある出っ張った部分。特に円福寺周辺には猫が多い。と、事前に情報を得ていたので、早速向かってみた。
円福寺は小高い丘の上にある。階段を登っていると、早速、黒猫に遭遇。階段と黒猫。魔女の宅急便に出てくる黒猫ジジを思い浮かべるような光景だった。
通り過ぎて振り返ると、黒猫は通路で寝そべっていた。日当たりのいい通路がお気に入りなのだろう。
円福寺前、一つ上の黒猫が寝そべっているところにある建物は、鞆猫庵という宿泊施設。料金は高めだが、一棟貸し切りで、眺めもよく、部屋は和室と、落ち着いた環境が売りの宿泊施設になっている。
この宿泊施設に付随するように、NPO法人鞆まちづくり工房の猫保護施設(シェルター)がある。眺めと日当たりのいい場所に檻が設置されていて、保護された猫たちが過ごしている。
檻の中の猫たちは一緒に連れてきたチワワが気になるようで、チワワに視線がくぎ付け。私(人間)には全く興味がないようだ・・・。
太陽の光を浴びて気持ちよさそうに過ごしてはいるが、こんな吹きさらしの檻の中で猫は大丈夫だろうか。そう思ったのだが、どうやら立派な室内の部屋があり、天気のいい日はこの檻に上がって来られるようになっているとか。
通り過ぎて行こうとするのだが、ジッとこっちを見て見送ってくれている。なかなか愛らしい猫たちだ。
というより、チワワが気になるのだろう。猫たちはどういった思いでチワワを眺めているのだろうか。何か寂しげな表情をしているように思えるが、自由になりたい。或いは人間と一緒に暮らしたい。そう思っているのだろうか。
保護施設の建物の屋根でくつろぐ猫たち。檻にいる猫と、外にいる猫とでは何が違うのだろう。出入りは自由になっているのだろうか。色々と疑問がわいてくるが、詳しくはわからない。
こっちの猫たちはチワワを見ても無関心な態度。ああはなりたくないものだ・・・などと思っていそうである。
円福寺の前までやってきたら石の柱の上ににゃんこがいた。その姿は凛々しい。というより、チワワが気になってしょうがない様子。
円福寺境内を散策して戻ると、先ほどのにゃんこは地面に降りていた。あいつは特に害はなさそうだな・・・と判断したのだろう。とはいえ、真剣にこっちを伺っている様子からは、油断ならないといったオーラがひしひしと伝わってくる。
このチワワは害がないと判断したのか、別の猫も柱の間から首を出してきた。そしてキョロキョロと外を伺っている。外に出ても大丈夫だろうか。チワワはこの一匹だけだろうか。ってな感じだろうか。
離れた場所に見守っていると、外に出てきて鳥居のある階段のところでくつろぎ始めた。背景に海が見えると、鞆の浦らしくていい。
よく考えれば、お寺なのに鳥居があるというのも変だ。元々ここには神社があったのだろうか。
港町は古くから猫が多い。きっと他にも猫がいるはず。次は古い建物が建ち並ぶ旧市街へ向かった。古い町並みを猫が優雅に歩いていたりすると、最高だ。
実際に歩いてみると、ここでは古い町並みに石畳が敷かれていた。これがとても雰囲気がよく、素敵に感じる。
石畳が敷かれているということは、猫の天敵である車の通行が少ないということ。港町だし、猫が過ごすにはいい環境ではないか。と、私の頭の中で方程式が出来上がるのだが、猫がいそうな雰囲気を感じるものの、猫の姿を見つけることはできなかった。
このへんにいた猫は先ほどの保護施設に収容されたのだろうか。そもそもここでは道が狭いわりに意外と車通りが多い。人間でも油断していると引かれそうになるほどだ。もし保護施設に収容されたのなら、そのほうが猫にとっても安心だ。
旧市街から離れ、眺めのいい医王寺を訪れるために斜面の住宅地を歩いていると、にゃんこを発見。このへんは空き家も多く、猫も過ごしやすいのだろう。
坂道の通路でもにゃんこを発見。車が入ってこれない路地なので、猫も安心しきっている。先ほど空き家で見かけた猫と柄や雰囲気が似ているので、兄弟だろうか。人間には慣れている感じだが、チワワが気になるようで、少し警戒モード。
最初はチワワに警戒していたが、害がないとわかると、興味津々といった態度になった。とはいえ、気になるけど近づくのは・・・といった表情。人間でも性格が色々あるように、猫も色々。反応が一辺倒ではないから、猫との出会いは楽しい。
こちらは扉の向こうからこちらを伺うにゃんこ。こういう場合、猫にピントを合わせるか、手前の扉にピントを合わせるかで迷う。とはいえ、たいていそんなことを考える間もなく猫が去ってしまうことが多い。
なので、とっさにカメラ任せでシャッターを切るのだが、ほとんど場合は手前の草木などにピントが合ってしまうことが多い。でも今回の場合は、扉にピントがあっていても、いい感じになった。
これは15年前の2007年に訪れたときに写真になるが、ゴミ焼却炉横のゴミ箱の上でお昼寝する黒猫さん。塵取りにすっぽりと収まって寝ている様子が可愛らしい。私のお気に入りの写真になっている。
こういった場面に遭遇すると、このまま焼却されてしまうのでは・・・。そんなことが頭をよぎるが、黒猫は安心しきって寝ている。地域で大事にされているのだろう。