旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

尾道にゃんこ#10-4
桜雨と尾道にゃんこ その4
(2023年4月)

桜を散らす雨が降る中、尾道と竹原を散策した様子と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全6ページ)

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§5、雨の日の尾道散策

尾道 西國寺仁王門の写真
西國寺仁王門

西郷寺からは西へ進み、尾道を代表するお寺の一つ、西國寺へ向かった。ここの境内には多く桜が植えられているが、訪れてみると、もうほとんど散っていた。

足元が悪い中、上の方まで上がっていくのは大変だ。満開の素晴らしい時に来たことがあるしと、門のところでUターン。

尾道 雨のレンガ坂の写真
雨のれんが坂

雨で濡れるれんが坂を登っていく。レンガとか、いらか(瓦)とか、タイルなどが敷かれている道は、地面が濡れ、色が濃く表れる雨の日は、その存在感が更に増す。そして、より情緒を感じたりする。

ただ、こういった路面は濡れると滑りやすくなるのが、難点。最近整備されたものは、滑り止めがしっかりと施されたタイルを使用しているので、あまり心配することはないが、古いものだったり、すり減っていたりすると、要注意だ。

尾道 御袖天満宮の階段の上からの風景の写真
御袖天満宮の階段からの眺め

れんが坂を登ると、大山寺と御袖天満宮にたどり着く。御袖天満宮付近ではよく猫を見かけるが、雨が降っているのもあり、今日は姿がない。

一枚石を使った御自慢の階段の脇には、桜の木がある。晴れていればいいアクセントとなるのだが、あいにくの空模様では、いまいち存在感がなかった。

尾道 御袖天満宮の神牛 マスクを外され、少し口の周りが白くなっているの写真
御袖天満宮の神牛

御袖天満宮の境内には、天神様の象徴である神牛の石像がある。参道の石階段が立派なように、この石像もとても素晴らしい出来である。

コロナ禍が始まってからというもの、この神牛にはとても大きなマスクがしてあったのだが、今日訪れてみると、マスクが外されていた。

マスク焼けというのだろうか。口回りが少し日焼け跡みたいになっているのは愛嬌だが、コロナ明けの開放感を天神様でも感じることができた。

尾道 路地の奥でこっちを見つめる猫の写真
にゃんこ発見

御袖天満宮の階段を下り、住宅地に続いている参道を歩いていると、横の路地の奥ににゃんこを発見。こっちをじっと見ている。

尾道 路地で迷いながら歩く猫の写真
どうしようかな・・・

今日はあまり猫に出会えていない。これはチャンス到来。と、にゃんこが逃げないようにゆっくりと路地に入っていく。

すると、にゃんこの方もこっちに近づいてきた。でも、スタスタとはやってこない。こっちの存在に気づかない振りをしながらトロトロと歩いているといった感じ。

我が家のワンコでも、呼ばれても気が進まない時は、よそ見をしながらゆっくりと近づいてくる。まさにそんな感じだ。

尾道 路地で大あくびをする猫の写真
大あくび

途中まで歩いてきたが、そこで腰を下ろしくつろぎ始めた。元々ここで落ち着きたかったのか、先に進みたいが、私が邪魔で一休みしているのか。どちらかは分からないが、あくびまでしてのんきなものだ。

なんだか人に慣れていそうだな。これならすぐそばまで近づいても大丈夫かも。もっと近づいてみよう。

と、ゆっくりにゃんこの方へ近づいてみたのだが、知らないおっさんの相手をするのはまっぴらとばかりに、路地の向こうに逃げてしまった。

尾道 趣のある石段を登る猫の写真
石段を登る猫

にゃんこが去っていた方向へ進むと、ゆっくりと階段を登っている最中だった。この階段は石造りなのだが、石は真っすぐではなく、波打っている。高さもバラバラで不規則だ。

御袖天満宮の立派な石階段を通ってきたばかりなので、お粗末な階段だと感じてしまったりもするが、これはこれで手作り感があっていい。いい味を出しているというのだろうか。そして、その石段を猫が登っていく様子は、ちょっと趣きを感じる。雨で濡れているから、よりそう感じるのかもしれない。

ちなみに、この階段は福善寺の脇参道といった道になり、映画「時をかける少女」の作中で、地面にタイルがちりばめられたタイル小路として登場している。

映画公開後は一躍有名になり、全国から観光客が押し寄せた。しかし、観光公害となってしまったため、2003年にタイル等を剝がすことになった。家屋も近年取り壊されてしまったので、今ではかつてのタイル小路の面影は全く残っていない。

尾道 国鉄時代のカラーで走る電車の写真
国鉄時代のカラーで走る電車

御袖天満宮のあとは、一旦車に戻ることにした。2号線まで戻ると、入学式が終わったようで、家路につく新入生と、その家族が歩いていた。

亀山八幡宮の参道まで行ってみるか。いい絵図になるかも。と、駐車場に戻る前に亀山八幡宮の方へ進むと、懐かしい色の電車が走ってきた。

国鉄時代頃、広島を走る電車は湘南色というオレンジと緑で塗装されていた。その後、瀬戸内らしくということで、白っぽい車体に青のラインの入ったカラーになり、更には経費節減ということで、柑橘系の黄色単色になった。今では車体自体が変わり、ステンレスっぽいものになっている。

最近では国鉄時代に走っていた色に戻す、リバイバル色というのが流行し、人気となっている。伯備線を走る特急やくも号がその代表格になるだろうか。この電車もそういった類のものらしい。晴れて、桜が満開だったら最高のシチュエーションだったな・・・。

尾道 亀山八幡宮 鳥居前を通過していく新入生の写真
鳥居前を通過していく新入生

亀山八幡宮の参道にやって来た。この参道の向こう側には、八坂神社が亀山八幡宮と向かい合うように鎮座している。向かい合う神社の前を通り過ぎていく新入生や保護者の様子で、映画みたいな場面にならないだろうか。

ここ尾道で、今日しか見られない情景。それは写真に収め、後世に残しておく価値があるはず。などと、正当化して挑戦するものの、あまり露骨にやっては、ただでさえ不審者なのが、一層不審者になるだけ。

不快に感じさせないように、さりげない感じで撮り、迷惑にならないように自然な感じで風景に取り込まなければならない。言葉にすると簡単だが、やろうとするとなかなか難しい・・・。

尾道 亀山八幡宮 鳥居前を通過していく仲良く傘に納まる親子の写真
仲良く傘に納まる親子

入学式帰りの親子を見ていて感じたのは、親子で歩いていても色々な関係性があるんだなということ。まあ、親子の距離感なんて人ぞれぞれなので、当たり前といえば、当たり前。

仲良く歩いている親子もいれば、淡白な感じで歩ている親子もいる。高校生にもなると、親の前をすたすた歩いている子も多い。そういった子でも、小学校の入学式では、親に手を引かれていたり、不安から親の後ろから歩いていたのではないだろうか。

親離れするかのようにスタスタと歩く子供の背中を嬉しそうに、或いは少し寂しそうに眺めながら歩いている親の姿も印象的だった。

映画のイメージ(*イラスト:ニッキーさん)

(*イラスト:ニッキーさん 無料イラスト【イラストAC】

ここは映画の町、尾道。日常のさりげないことでも、ドラマスティックに変えてしまう。そういった景色と雰囲気、そして不思議な力がある。

鳥居の中へ次々とフレームインして、フレームアウトしていく人達。それは、まるで映画のコマが流れていくかのよう。鳥居に魔法がかけられてスクリーンとなり、人間模様を映し出すドラマを見せられているかのように感じるひと時だった。

やっぱり町の散策は楽しい。町ごとに風土が違い、暮らしている人それぞれにドラマがある。そして今日しか巡り合わない人や風景もある。縁も所縁もないけど、今日、勝手に出会ってしまった新入生たち。実りある高校生活にして欲しい。

尾道 石垣を眺めるようにしている猫の写真
猫さんに遭遇

さて、雨も上がったことだし、熊野神社の猫のところへ寄ってから、車に戻ろう。

熊野神社のスペースを訪れると、朝いた人懐こい猫はいなかったが、別の猫がいた。この猫も時々見かけるので、あの猫と一緒に暮らしているのだろう。

尾道 祠の前でこっちを振り向く猫の写真
人間、ちゃんとお参りしろよ

この猫は、そこまで人懐っこくはない。私の姿を見ると、寄ってくるのではなく、神社の階段を登っていった。そしておもむろに振り向く。その表情は、「ここは神社の神域。お参りしないなら来ては駄目です。」などと、諭しているかのよう。

猫の鋭い眼光に、「はは、恐れ入りました。ちゃんとお参りしていきます。」と、思わずかしこまってしまう。

尾道 祠を守るように座る猫の写真
祠を守る猫

「分かればよろしい。」と、大きく頷いた猫は、祠を守るようにお座りになられた。その様子は、威風堂堂。まるで神の使いのようであった。

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