尾道にゃんこ#8-2
冬の朝の尾道にゃんこ その2
(2023年1月)
冬の朝の尾道散策と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全4ページ)
§3、冬の朝日と尾道水道
車の中で軽く朝食を食べ、カメラの装備を整え、再び散策の開始。間もなく朝日が昇ってきそうな尾道水道を眺めつつ、駅の方へ向かって海岸沿いを歩いた。
尾道水道を疾走している漁船があった。この時期の広島県内では、冬の味覚カキ(牡蠣)の水揚げが盛んに行われている。カキ養殖が盛んな広島湾に朝日を見に出かけると、早朝から漁船が活発に移動して様子を目にする。
広島県はカキの生産量日本一。カキ養殖業がとても盛んだ。しかし、瀬戸内海沿岸の全てでカキの養殖が盛んかというと、そうでもない。
ここ尾道付近、もっと言うならしまなみ海道沿いでは、あまりカキの養殖は盛んではなく、高台から海を眺めても、牡蠣筏が海に並んでいる光景を見つけることができない。
同じ瀬戸内海なので、どこでもカキ養殖が出来るのでは・・・と思ってしまうのだが、潮の流れが穏やかだとか、カキ筏を設置できるスペースある場所とか、養殖を行うのにも向き不向きがあるそうだ。
尾道駅へ到着。今日の日の出時間は7時14分。太陽の方向に向島があるので、実際に太陽の姿が見えるのはもっと後になる。
尾道駅から電車に乗って通勤通学する人は、7時から7時半ぐらいの時間帯に多いので、真冬の時期は太陽が昇ってくる前に渡船に乗ったり、駅の改札へ向かう人も多い。逆に尾道にやって来る学生たちは、まぶしい朝日を浴びながら改札を出ることになる。
ちなみに、広島市内は3分遅れの日の出になる。熊野の山から昇ってくるので、実際に朝日が差し込むのは7時半過ぎ。ちょうど通勤通学で賑わう時間帯になる。
広島市内はデルタ地帯にあり、非常に橋が多い。橋には小さなアップダウンがあるので、東へ向かう場合、太陽の光が強烈に目に入る場面が多く、信号や歩行者などが見えにくい。そういった事情から、冬の朝は事故が多かったりする。
造船場の建物の後ろから日が昇ってきた。この時期は向島の方から日が昇ってくるので、写真に撮るとまぶしすぎて素敵な朝日とはならないだろう・・・と思っていたのだが、今日は空気が少しよどんでいるのもあって、意外といい感じ。うれしい誤算となるだろうか。
この時期の学生たちは、まぶしい朝日を前方から浴びながら船に乗船していく。その様子はとても印象的で、尾道の冬の朝ならでは情景となるだろうか。
女子学生たちは大きなマフラーを首に巻いていた。まるで北国の民族衣装のように感じるほどで、見慣れないと少々違和感を感じる。気になって調べてみると、どうやら存在感のあるマフラーは今年のトレンドとなっているようだ。
でも広島市内で流行っているかというと、そこまででもないといった印象。広島市内と尾道を含めた福山地域では方言や文化圏が微妙に違うので、流行も微妙に違っているように感じる。東から文化が流れてくることが多いので、来年あたり広島でも大流行するのかも・・・。
学生を満載した渡船が朝日に向かって進んで行く。映画のワンシーンに使われてもおかしくないようなとても美しい光景だ。
毎日船に乗って通う学生たちの目には、どう見えているのだろうか。もうありふれた光景となってしまっているのだろうか。すし詰め状態なので、そんな情緒に浸っている余裕はないのだろうか。それとも朝日よりも異性を眺めていたりするのだろうか。様々な人間ドラマが頭に湧き上がってくる。
そう、ここは映画の町、尾道。様々な事柄に想像力を湧きたてられ、なんでもドラマスティックに感じるものだ。
太陽が昇ると、尾道水道に少し海霧のような靄がかかって幻想的な光景となった。もうちょっと濃い霧だと美しいはず。ちょうど潮が穏やかな時間ということもあって、海峡というよりも、湖といった風景にも見える。
以前、渡船の情景を見つけるために、夏の朝に訪れた事がある。夏の渡船の風景こそ尾道らしいと思っていたのだが、冬も冬でなかなか素敵だ。特に淡い感じで太陽の光が尾道水道を照らす様子がいい。
結局、人々を感動させるようないい景色や情景というのは、いつ訪れてもその時々の良さがあるということなのだろう。
8時を大きく回ると、通学の学生の姿が少なくなり、また太陽も高くなり、感動的な渡船の情景から普通の渡船の情景になった。もう朝の渡船の情景を十分に堪能できたし、と、再び駐車場に戻ることにした。
猫に出会えそうな場所を選びながら商店街を歩くものの、猫の姿を見かけない。日は昇ったとはいえ、まだ気温も低いので、猫も寝床でジッとしているのだろうか。
駐車場近くまで戻ると、よく見かけるにゃんこが「やあ、久しぶり人間。おはよう。」ってな感じで向こうからやって来た。「久しぶり、元気にしていたか」ってな感じで撫でてあげると、そのまま日の当たる場所でくつろぎ始めた。やっぱり少しでも暖かい場所がいいようだ。