旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

尾道にゃんこ#6-1
渡船と尾道にゃんこ 前編
(2022年8月)

夏の朝の渡船の風景と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全2ページ)

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§1、イントロダクション ~広島らしい情景とは~

宮島の大鳥居の写真
宮島の大鳥居

広島らしさとは何だろう。国内外、多くの地を旅をして来たので、こういったお国柄とか、その土地の特徴を考えることが好きだ。

広島には、宮島と原爆ドームといった二つの世界遺産がある。どちらも唯一無二の存在で、広島の象徴のように描かれているが、広島らしいかと言われると、そうであるような・・・、ないような・・・。いまいちはっきりしない。唯一無二の存在は、他と比較できないので、その評価が難しい。

広島 牡蠣の写真
牡蠣

広島県は牡蠣(カキ)の生産量が日本一。牡蠣といえば広島産だよね。というぐらい、広く世間に知られている。実際、広島の海には養殖用の牡蠣筏がたくさん浮かんでいて、海岸には牡蠣棚がずらっと並んでいる。

そういった牡蠣筏の中を進んで行くフェリーの様子や、港で大量に水揚げされたカキの殻むきが行われている様子、大勢の人で賑わうカキ祭りや水産市が開かれている様子などは、広島独特の情景で、まさに広島らしいと言える。

広島 牡蠣筏の中を進む船の写真
牡蠣筏の中を進む船

世界遺産といった飛び道具よりも、日本一といった事柄だったり、実際に広島で暮らしている人の行動と、他の地域の行動を比べながら考えると、広島らしく感じる部分の発見や気が付きが多い。

広島人は・・・、と思ったが、広島女子は・・・と考えるほうが私的には楽しいので、広島女子で考えてみることにしよう。

カープ女子のイメージ(*イラスト:パックスタイル山陽さん)

(*イラスト:パックスタイル山陽さん 無料イラスト【イラストAC】

広島女子というお題で考えると、真っ先に思い浮かぶのが、カープ女子。2014年の流行語大賞にも選ばれた。

冷めた目で見ると、単に広島を拠点とする野球球団、広島カープを応援する女子でしょ(実際は結構年齢が高め)。ってことになるのだが、カープのユニホームは広島の民族衣装みたいなもの。広島でカープ戦が行われる日には、市内はカープのユニフォームを着た人であふれている。

旅をしていて民族衣装を着た女性が魅力的だったり、可愛らしく見えるのと同じで、他の地域の人からすると、「なんかいいな・・・」となるのではないかな、と思ったりする。

カープ戦の日の写真
カープ戦の日

カープ自体も広島の象徴として扱われることが多い。市民球団として、市民とともに歴史を積み重ね、広島の町はカープ愛とカープグッズであふれている。

しかしながら、市民球団ゆえに予算が厳しく、どうしても選手の年俸が低くなりがち。主力選手が流出することも多く、成績は安定して強いとはならない。また、プレーにも選手にも他の球団のような派手さはなく、質実剛健ともいえる。そういった風潮を好むのも広島気質になるだろう。

雑談をする女子のイメージ(*イラスト:イチタさん)

(*イラスト:イチタさん 無料イラスト【イラストAC】

広島弁をしゃべる女子も、他の県と違う広島らしい存在になる。とはいえ、こっちで暮らすようになってから知ったのだが、広島市と福山地域とでは随分と言葉が違うし、沿岸部と山間部でも話すテンポが随分と違う。同じ広島弁と一括りにするには無理がありそうなほどだ。

東京で暮らし、うん十年前に東京男子だった私の感覚で言うと、江戸っ子の流れをくむ東京の人は、テンポのいい言葉を好む。なので、「昨日、カープ戦見に行ったんよ」といったような小気味よい言い方は、東京の男子の耳受けがいいと思う。逆に、昭和のやくざ映画に出てくるような、ゆっくりとした口調で言葉がつながるような広島弁は、苦手な人が多い。

路面電車と自転車をこぐ女学生の写真
路面電車と自転車の女学生

広島市内の重要な交通機関となっている路面電車も、広島の象徴的な存在として認識されている。

実際、運航距離、乗客数、車両の数は日本一。その路面電車を利用して通学する路面電車女子も広島らしい存在と言えるが、実際は自転車を利用する方が早いし、お金がかからないので、他の県の人が思っているほど利用している学生は多くない。

どちらかというと、路面電車の横を自転車で勢いよく疾走する女子学生といった光景の方が、広島らしい情景となる。

呉港のフェリーの写真
呉港の江田島行きフェリー

路面電車よりも特徴的なのが、船で通勤、通学をするフェリー女子が多いこと。恐らく・・・、いや、ぶっちぎりで、広島は船で通学する学生の数が日本一になるだろう。

広島は離島に住む人が多いので、船の交通網が発達していて、利用客も多い。観光客に人気の宮島にしても、ウサギの大久野島にしても、わざわざ船で渡らなければならない。でもその不便さや、船旅の情緒を求め、船に乗るのを楽しみにしている観光客は多い。

近年では世界的に渡し船の数が減っている。とくに急激な経済発展をしているアジアでは、今まで船で渡っていた河川に大きな橋が架けられ、海峡にトンネルが掘られと、交通が格段に便利になった。

便利さと引き換えに情緒がなくなるというのは、よくある話。昔ながらに路面電車が走り、船の情緒が多く残っていることは、ある意味で広島の文化的財産。いわゆる広島らしさになる。

広島 船が行き交う様子を眺める写真
船が行き交う様子を眺める

もっとも、カープがお金がないように、広島自体がお金がなく、地下鉄が作れないから路面電車が残り、橋を架けられないから船便が多く残っているといった事情もある。そう考えると、金欠事情や行政の決断力不足も広島らしさといえるかもしれない。

なので、観光に訪れる分には、広島は情緒があって楽しいとか、スローライフでなんかいいな・・・となるが、実際に暮らすとなると、不便に感じることも多かったりする。

と、前振りが長くなってしまったが、私の中で一番広島らしい情景は、渡船やフェリーが日常の中に自然にある様子。その中でも特に趣きを感じるのが、尾道と対岸の向島とを結ぶ渡船で、今回は渡船の夏の情緒とにゃんこを求め、夏の朝の尾道を訪れてみることにした。

§2、尾道水道を照らす朝日

尾道 早朝の道の真ん中で、豪快に顎をかく猫のの写真
早朝の町で

朝日を見たかったので、早朝に到着。早速町に繰り出すと、飲み屋街でニャンコを発見。

この猫はとても人懐っこい猫さんで、人の姿を見つけると近づいてくる。前回訪れたときには、水溜まりと一緒に写真を撮らせてくれ、今日は早朝の道の真ん中で、豪快に顎をかく様子を撮らせてくれた。

尾道 穏やかな尾道水道と鱗雲がそらに漂う中、尾道大橋の背後から登る朝日の写真
鱗雲と朝日

日の出時間が迫ってきたので、尾道水道沿いへ。どこで写真を撮るのがいいかな・・・。と探すまでもなく、三脚を立てている人が何人かいた。

話を聞くと、どうやらこの時期の尾道大橋から登る朝日はちょっと有名らしい。しかも昨日の夕方のニュースでそのことをやっていたとか。

写真を撮っている人に交じり、日の出を待っていると、尾道大橋から朝日が昇ってきた。今日はウロコ雲っぽい雲がいい感じにかかっていて、なかなかの朝日日和。

尾道 尾道大橋と朝日の写真
尾道大橋と朝日

ちょうど潮の満ち引きが収まっている時間帯だったので、尾道水道の水面が穏やか。広島で写真を撮るときは、太陽の位置、空模様の他に、引き潮、満ち潮といった要素も重要になる。

例えば、宮島の大鳥居。潮が大きく引いていると、多くの観光客が鳥居まで歩いている図になるが、満潮だと海に浸かった鳥居になる。第三の要素があると、構図の計算が増え、写真も撮りがいがあって面白い。このへんの感覚というか、思考の方向性は、魚釣りと通じる部分が多くあるように思う。

尾道 朝日と渡船の写真
朝日と渡船

フェリーの運航が始まった。昇ってきた朝日に向かう船の様子はなかなか美しい。

尾道と対岸の向島は、一般道の橋、高速道の橋、そして3つの航路で結ばれている。歩行者用の橋はないので、車以外だとフェリーを利用することになる。

ここのフェリーには、決まった時刻表はない。朝6時から22時まで、朝夕は頻繁に、それ以外は随時といった感じで行ったり来たりしている。

尾道 コンテナの中でうつぶせに寝ている猫の写真
コンテナの中のにゃんこ

まだ通勤通学で賑わう時間まで、少しある。一旦、車のところへ戻ることにして、商店街を抜けていく。猫のいる八百屋さんを通りがかると、今日はコンテナの中でうつ伏せ状態で寝ていた。

前のめりになって寝ている様子が可愛らしいが、起こすと凄い顔でにらまれるので、そっと写真を撮って後にした。

尾道 お店の前で身繕いする猫の写真
お店の前で身繕い

飲み屋街に戻ってみると、日が昇ったことで猫も活動的になっていた。人の往来も少ないことから、路地でくつろぐ姿もちらほらと。今日は意外と猫が多い。

尾道 駐車場の隅っこでくつろぐ猫の写真
駐車場の隅っこでくつろぐにゃんこ
尾道 尾電信柱の陰で様子をうかがう猫の写真
電信柱の陰で様子をうかがうにゃんこ
尾道 道路の隅でこっちをにらむ猫の写真
道路の隅でこっちをにらむにゃんこ
尾道 塀の上を歩く猫の写真
塀の上を歩くにゃんこ

おそらく、ここの猫たちは朝早い時間帯に餌をもらっているのだろう。この時間帯はお腹が一杯で、くつろいでいる猫、散歩に出る猫と、思い思いに過ごしてるといった感じだった。

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