旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

尾道にゃんこ#10-6
桜雨と尾道にゃんこ 竹原編
(2023年4月)

桜を散らす雨が降る中、尾道と竹原を散策した様子と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全6ページ)

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§7、竹原、雨の夕時

竹原 たけはら町並み保存地区を歩くチワワの写真
たけはら町並み保存地区

少し時間をつぶして、夕方、竹原にやって来た。竹原は、かつて製塩で栄えた町。その当時の古い町並みが広範囲にわたって残っていて、たけはら町並み保存地区に指定されている。

とても情緒のある町並みで、数多くのロケ地になっている。例えば、大林宣彦監督の尾道三部作の一つである「時をかける少女」は、竹原が多く登場しているので、竹原の映画といっても間違いではない。

その他、連続テレビ小説「まっさん」の舞台になり、アニメ「たまゆら」の舞台にもなったので、竹原の名からそういった作品を真っ先に思い浮かべる人もいるだろう。

竹原 陶工房「風土」の看板猫、漱石が窓からこっちを見ている様子の写真
看板猫、漱石

そんなに数は多くないが、竹原にも野良猫が暮らしている。が、竹原の猫といえば、なんといっても町並み保存地区にある陶工房「風土」の看板猫、漱石君。

店の中で接客をしたり、店の前でくつろいでいたり、窓から外を眺めていたりすることもある。

これだけだと普通の看板猫だね。ということになるのだが、漱石は、県竹原支局路地裏観光課長にも任命され、竹原の観光ピーアールにも参加していたり、町歩きのテレビ番組に登場することも多い。竹原ではとても有名な猫になる。

アニメ「たまゆら」の写真
アニメ「たまゆら」

実在はしないが、アニメの「たまゆら」に登場した、ゆるキャラ的な「ももねこ様」も、竹原では有名だ。ピンクの丸い風船のような猫で、作中ではさりげない感じで登場している。

地域活性化のため、商店街に「ももねこ様」の像が建てられ、今では町の守り神になっているとか何とか・・・。

竹原 雨の日 旧光本家住宅の写真
旧光本家住宅
竹原 雨の日 胡堂の写真
胡堂

夕方の遅い時間帯に竹原に到着し、暗くなる前に第一次竹原散策を行った。雨に濡れる竹原の町もまたいい。

常々思うのだが、竹原は立地が悪いというか、立地で損をしている。東には美観地区を持つ倉敷があり、西には白壁の町、柳井がある。わざわざ竹原まで足を延ばさなくても・・・となる。

それに山陽線は通っていなく、通っているのは本数の少ない呉線。新幹線の駅からも遠いので、鉄道のアクセスは不便だ。広島空港は比較的近いが、飛行機に乗ってまで竹原にやってくる人は、そんなに多くはない。

もし、竹原が鎌倉の近くにでもあれば、年間で凄まじいほどの観光客が訪れ、鎌倉と並ぶ観光地としてその名が世界に知れていたであろう。それぐらいのポテンシャルを持った町だと、私は思う。

竹原 雨に濡れる竹鶴政孝・リタ像の写真
雨に濡れる竹鶴政孝・リタ像

雨の中を散策していたら、雨で濡れて、竹鶴夫妻の像が桜を背景に艶やかな感じになっていた。

2014年秋から放送された連続テレビ小説「まっさん」。ニッカウイスキーの創業者、竹鶴政孝と、スコットランドに留学中に知り合い、結婚したリタの話になる。

竹鶴政孝の実家は、ここ竹原。しかも、現在も実在している日本酒の酒蔵、竹鶴酒造になる(内部非公開)。放送が始まるなり、竹原に観光客が殺到した。

町はかつてないほどの賑わいに溢れたが、こんな騒々しいのは竹原じゃない。こんな場所では暮らせない。と地元の人が逃げ出したくなるほど、混雑し、混沌とした。

が、所詮は一過性のブーム。大河ドラマ毛利元就の郡山城や、世界遺産になった石見銀山と同じで、一気に増えた観光客は、数年で元の水準に戻る。というのは、交通の不便な地方の現実である。

ただ、近年ではウサギの島大久野島が世界的に有名になり、そのついでに訪れる人が増え、竹原に宿をとる外国人も多くなってきた。

竹原 照蓮寺山門と桜の写真
照蓮寺山門と桜

桜の時期の竹原でお勧めなのが、町並み保存地区の北側にある照蓮寺。ここは門前、境内に桜があるので、開花時期にはとても美しい光景になる。個人的にとても好きな風景で、桜の時期、例えば今回のように尾道などに行く際に、ついでに立ち寄ることもある。

竹原 照蓮寺 門前に座る猫の写真
照蓮寺門前のにゃんこ

照蓮寺付近ではよく猫を見かける。今日も出会えるとうれしいな・・・と期待してやって来ると、門の前で猫が待ち構えていた。門前に佇む猫。とても絵になっている。なんて幸運なんだろう。

この猫は毛がふさふさというか、ボサボサで、ワイルド感満点。見た目に結構迫力がある。こんな特徴的な猫は今まで竹原で見たことがないな・・・。

竹原 照蓮寺 門前に座る猫の写真
門前に座る猫

竹原の野良猫は、尾道のように人懐っこくない。だいたい近づくと逃げていってしまう。初対面でいきなり近づいたら、きっと逃げてしまうだろう。こんな絶好のシャッターチャンスは、二度と巡り合えないかもしれない。慎重に事を運ぼう。

ということで、さりげない感じで写真を撮った後は、まずは離れた場所を通り、地元の人っぽい感じで境内に入った。境内に入る人間は、敵じゃないぞ。ここで暮らしていればそう感じるはずだ。

境内に入って振り返ってみると、まだ門前に佇んでいた。こっちから見てもいい感じだ。晴れていればなおよかったかもしれないが、雨だからここで雨宿りをしているのかもしれない。

竹原 照蓮寺 門前で体を伸ばす猫の写真
よく来た人間

境内から戻ってきても、こっちを見ているだけ。愛想がないというか、堂々としているというか、見た目通りにワイルド感のある猫だ。

人間に関心がないのかな。でも、それならとっくに逃げているはず。近づいても大丈夫そうだな。思い切って猫に近づいて、目の前に座ってみたら、反応あり。立ち上がって身体を伸ばし始めた。

やっと人間が釣れた。さて起きて身体を動かすか・・・といった感じ。きっと遊んでくれとせがんでくるのだろう。そういった心構えで待っていたのだが、私の前にくると、ゴロンと横になって撫でてくれと催促し始めた。

竹原 照蓮寺 門前で撫でてくれと催促する猫の写真
さあ撫でろ、人間

なんて図太い猫なんだ。ここまで人懐っこいとは思っていなかったので、驚いた。

しかし、雨の日の野良猫。しかも長毛でぼさぼさ。本当の猫好きなら何もためらわず撫でるのだろうが、私のようなちょっと好きなだけの人間は、触るのにためらう。

この状況は・・・、私の猫好き度合いが試されているのではないか。いや、間違いない。猫の目が私の真贋を試すような鋭い目つきをしている。

竹原 照蓮寺 門前で気持ちよさそうに寝そべる猫の写真
気持ちいいぞ、人間

インドや中東などのトイレには、トイレットペーパーが置いていない。その代わり便器の傍に蛇口と水桶が置いてある。用を足した後、その水を使って、左手で自分のお尻を洗うのだ。

一番最初に行った時は、とても勇気がいった。しかし数回行うと抵抗はなくなり、これはこれでありかなと気にならなくなった。猫を撫でようかと迷いつつ、ふと、そんな昔の旅の場面が頭に浮かんでしまった。

猫とトイレを一緒にしては、猫好きに怒られる。覚悟を決めて撫でてやると、気持よさそうな顔になった。毛が多く、ボサボサで痒いのだろう。暖かくなってきたので、そろそろ換毛気になるだろうし・・・。

竹原 照蓮寺 門前で寝転び撫でてほしいと催促する猫の写真
こら、もっと撫でろ、人間

猫の写真を撮ったし、撫でてやったし、もう十分かな。と、立ち上がろうとすると、もっとなでろと、寝転びながら凄まじい催促をしてきた。なかなか激しい・・・。

竹原 尾照蓮寺 門に入っていく猫の写真
寺に入る猫

あまりにもアピールが凄かったので、仕方がなくもう一回なでてからから去ることにした。

今度は甘える猫を振り払って立ち上がり、門前の階段を降りると、猫は境内の方へ向かっていった。どこへ行くのだろう・・・。寺の中に寝床があるのかな・・・。ちょっと気になる。

竹原 照蓮寺 墓地を歩く猫の写真
墓地を歩くにゃんこ

猫の後を追いかけてみると、墓地へ入っていき、そのまま墓地の奥の方へ消えていった。墓地の奥に寝床となっている場所があるのかな。それとも山の中にあるのかな・・・。

それにしても・・・、大柄の体でノシノシと歩く様子は、あまりに猫に見えない。大柄だし、毛がふさふさしているし、まるで犬とか、タヌキのようだ。

竹原 立ち止まってこっちを振り返る猫の写真
どちら様でしょう

暗くなってきた。一旦、車に戻ろう。山門の階段を下り、車の方へ向かっていると、猫を発見。

この猫は私を見て立ち止まるものの、やっぱり知らない人だったといった感じで、すぐに消えてしまった。親切にしてくれる人と似ていたのかな・・・。

竹原 たけはら町並み保存地区 雨の夜 夕闇が迫る竹原の町並みの写真
夕闇が迫る竹原の町並み

雨の日の竹原でやってみたかったこと。それは暗くなり、町灯りが地面に反射するような場面の写真を撮ること。

カメラのレンズの先に取り付ける部品をフィルターという。カメラを買う時に、店員にレンズ保護の為に必要だとか言われて、買わされたことがある人も多いだろう。

このフィルターはレンズ保護の役割もあるが、色々とエフェクトをかけることができる。もっとも、デジタルカメラになってからは、後からソフトでそういった効果を手軽に加えられるので、昔ほどフィルターを活用している人は少なくなっている。

竹原 たけはら町並み保存地区 雨の夜 夕闇が迫る竹原の町並み ブラックミスト装着の写真
夕闇が迫る竹原の町並み(ブラックミスト装着、以下全て)

こういったカメラのフィルターで、私が好きなのが、ブラックミスト。少し彩度を落とし、光をにじませる効果のあるフィルターで、出来上がる写真は、少しソフトな感じになり、映画のワンシーンような情景となる。

このフィルターが一番効果を発揮するのが、薄暗い時間帯。そして似合うのがレトロな感じの場面。竹原の町並みには、レトロな感じの裸電球の街灯が設置されている。しかも地面が石畳なので、その光をよく反射する。ブラックミストフィルターの為にある町並みというのは大袈裟だが、本当によく似合う。

以前に晴れた日に使ったことはあり、なかなか素敵な写真が撮れた。雨の日だったら、もっといい情景になるのでは・・・と、今回挑戦しに来た次第。

竹原 たけはら町並み保存地区 雨の夜 ブラックミスト装着 夕闇が迫る竹原の町並みの写真
竹原 たけはら町並み保存地区 雨の夜 ブラックミスト装着 夕闇が迫る竹原の町並みの写真
雨上がりの竹原

車の中でレンズを付け替え、フィルターを装着し、散策の第二弾を開始。ブラックミストにはNO.1とNO.5があり、今回は効果の薄い5の方を使った。

街灯の灯りに、地面に反射した灯り、そして空気中の水蒸気が相まって、落ちついた雰囲気の写真になった。

とはいえ、光の加減ではちょっとくどく感じてしまう部分もある。そのへんはたくさん撮って、経験を積み、ちょうどいいバランスを見つけるしかない。

シャッターを押せば撮れてしまう写真だが、こだわろうとするとなかなか難しい。まだまだ修練が必要なようだ。

竹原 たけはら町並み保存地区 雨の夜 アナグマが家の隙間から出てくる様子の写真
家の隙間から出てくる

暗くなった町を歩いていると、近くの家からガサゴゾと大きな音がして、動物が出てきた。これはうまい具合に猫が出てきた・・・。と、最初は思ったが、どうも感じが違う。

猫はこんなに大きな音を立てて登場することは滅多にない。顔も細長いし、何より耳が猫のものではない。これってタヌキではないのか・・・。

タヌキらしき動物は、出てきて周囲を確認すると、私を発見。さてどうする。タヌキ。動かず見守っていると、こいつは害はなさそうだと判断したのか、道路に出てきて、道を渡っていった。

竹原 たけはら町並み保存地区 雨の夜 アナグマが道路を横断していく様子の写真
道を横断していく

旅人が歩けばタヌキにも出会う。ってやつかな。まさか竹原でタヌキに出会うとは思っていなかった。

もしかして先ほど照蓮寺に居た猫。猫っぽくなかったからタヌキが化けていて、撫でてもらったお礼をしに来たとか・・・。いやいや、こいつは騙しやすそうだと、化かしに来たとか・・・。しかし、一日一回しか化けれなかったので、今回はタヌキのままになってしまったとか・・・。突然の出会いに色々と妄想が巡る。

タヌキの仲間のイメージ(*イラスト:うにここさん)

(*イラスト:うにここさん 無料イラスト【イラストAC】

家に帰ってから、あれは本当にタヌキだったのだろうか・・・。と、少々疑問に感じ、画像を調べてみると、タヌキとは少し違った。タヌキに似た仲間で調べてみると、イタチ科のアナグマがヒットした。

アナグマだったんだ。タヌキにしてもアナグマにしてもこの界隈は古い家が多く、空き家も多い。どこかで巣をつくってしまっているのだろう。

旅人としては、こういった偶然の出会いには心躍るが、こういった動物が巣をつくってしまうと駆除が大変だったりする。地元の人にはあまり喜ばしくない光景なのは、確かだ。

まあ、それは猫でも同じことが言えてしまう。うまく動物と人間が共存できればないいなと思いつつ、今回の尾道にゃんこを締めくくろう。

旅人が歩けばわんにゃんに出会う
尾道にゃんこ編
#10 桜雨と尾道にゃんこ(2023年4月)
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