旅人が歩けばわんにゃんに出会う タイトル

尾道にゃんこ#5-3
豪雨の日の尾道にゃんこ その3
(2022年7月)

豪雨の日の尾道と大久野島の散策と、その時に出会ったニャンコたちのスケッチです。(*全4ページ)

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§5、雨の日の崖地

尾道 雨の日の猫の細道の写真
雨の日の猫の細道

御袖天満宮からロープウェイ駅のすぐそばにある艮(うしとら)神社へ。ここには巨大なクスノキがある。雨に濡れてしっとりした感じのクスノキも、また存在感があって素敵だ。

その艮神社の横から坂を登っていき、猫の細道へやって来た。ここも雨上がりのしっとり感が素敵で、小道がいつもよりもワクワクする感じになっていた。

尾道 しっとりと佇む福石猫の写真
しっとりと佇む福石猫

猫の細道に置いてある福石猫も、雨に濡れると生き生きとした感じになる。まるで雨の日にだけ生命を宿すよう。尾道を訪れた日が雨だからといってもガッカリすることはない。素敵な出会いはたくさんある。

尾道 お洒落なカフェの入り口の写真
お洒落なカフェの入り口

こちらはジブリチックな雰囲気のカフェ、ブーケ ダルブル。入ったことはないが、展望のいいテラスでお茶をできるらしい。

雨だと植物、そして置物なども生き生きとした感じになるので、アニメのように色々なものが動きそうに感じたりもする。そういった事を感じられるのも雨の日ならではのこと。

雨の日は雨の日にしか見ることのできない情景がある。雨の日にしか感じられない出来事もある。濡れるのは厄介だが、それに見合うだけの収穫が得られることもある。だから私は雨の日の散策も好きだ。

尾道 東土堂ポケットパーク こちらを見つめる灰色猫さんの写真
こちらを見つめる灰色猫さん

猫の細道を登り、天寧寺三重塔の所から一旦少し下って東土堂ポケットパークを訪れた。ここは猫スポットとして有名だったが、忌まわしい猫切りつけ事件が起きてからは、ここで猫に出会えていない。

今日は猫さんはいるかな・・・。もうここでは会えないかな・・・。と、気になって訪れてみたのだが、今日は灰色っぽい猫がベンチで佇んでいた。

尾道 東土堂ポケットパークで佇む猫の写真
東土堂ポケットパークで佇む猫さん

久しぶりにここで猫に出会えてうれしいが、他に猫はいないし、以前のような猫のたまり場といった雰囲気があまりない。例えば猫臭というか、猫の生活感が感じられなく、猫の態度もよそよそしい。

尾道 天寧寺三重塔と黄色い電車の写真
天寧寺三重塔と黄色い電車

再び階段を登って、天寧寺三重塔と尾道水道が見渡せる展望スポットへ。ちょうど黄色い電車が来たので、三重塔と合わせて撮ってみる。

尾道 天寧寺三重塔とロープウェイと黒猫の写真
天寧寺三重塔とロープウェイと黒猫

写真を撮っていたら、黒猫さんがすぐ傍の喫茶店の屋根にいるのに気が付いた。

ほんと、黒猫は発見しづらい。我が家の近所に黒猫が多く、普段から黒猫を見慣れている私だからこそ、気が付いたといえるかもしれない。

尾道 水道を望むの写真
尾道水道を望む

近くに寄ってみるが、黒猫が丸まっていると、どう頑張っても黒い丸、ブラックホールのようにしかならない。

ここで立ち上がって、身体を伸ばしてくれないかな・・・。それならいい感じの写真になりそう・・・。などと期待して少し待つのだが、どうにも動きそうにない。

そうこうしているうちに再び雨が強く降り出してきた。これはまずい。カメラが濡れる。慌てて傘をさすのだが、その音でびっくりさせてしまったようで、さっと屋根の下に降りてしまった。

尾道 千光寺境内での写真
千光寺境内で

雨が強く降る中、更に階段を登っていき、千光寺へ。雨の日の千光寺もいいかなと思ったのだが、ここで再び土砂降りとなり、これはかなわないと、しばらく雨宿りした。雨の日もまた風情があっていいとは思うが、降り過ぎはよくない。

尾道 雨の日の文学のこみちの写真
雨の日の文学のこみち

尾道は映画の町というイメージが強いが、文学の町としても有名だったりする。過去にはその風情を求め、多くの文人墨客が訪れ、滞在していた。

千光寺山中腹から山頂にかけて「文学のこみち」と名付けられた遊歩道が設置されている。この道沿いには、尾道にゆかりのある25名の作家、詩人の句や歌が刻まれた文学碑が置かれている。

雨が小降りになったのを見計らい、山頂の展望台を目指し、この文学のこみちを登っていった。

尾道 千光寺頂上展望台 PEAKの写真
千光寺頂上展望台 PEAK

山頂に到着。新しくなった山頂展望台とは、今日が初対面。でーんと山頂に佇む様子は・・・・、う~ん、微妙。というか、私的にはこれじゃない感がムラムラと湧き上がってくる。

確か最初の案は雲のような形の展望台で、かなり独創的な感じだったはず・・・。それがなんでこんな味気ないものとなってしまったんだ・・・。う~ん・・・。失望感で一杯。

予算がないのは分かるが、もうちょっと何とかならなかったのだろうか。今の時代、インスタ映えを意識し、絶対ここで写真を撮りたいと思わせるようなインパクトがないとダメなんじゃないの・・・。そもそも尾道らしさも感じられない・・・。

尾道 雨の日の尾道水道の眺めの写真
雨の日の尾道水道の眺め

展望台の形はどうであれ、ここから眺める尾道水道は素敵だ。雨の日もまた趣きがあっていい。と思うのは、晴れた日に訪れたことのある人間の感想。初めて訪れる場合は、絶対に青空の日の方がいい。それは自信を持って言える。

尾道 尾道市立美術館の写真
尾道市立美術館

山頂の展望台からは旧尾道城へ向かった。途中には尾道市立美術館がある。ここは中へ入りたい猫と、それを防ぐ警備員との攻防がよく話題になる。

その猫は黒猫のケンちゃん。もしかして会えるかな・・・と立ち寄ってみたが、残念ながら猫はいなかった。ただ外から見えるところにリアルな猫の置物が沢山展示してあって、猫に沢山出会った様な気分。

やっぱり黒猫はシルエットが美しいので、動きがないと絵にならないよな。さっきの屋根で寝ていた黒猫を思い出しながら思うのだった。

尾道 アイスクリームの冷凍庫と猫の写真
アイスクリームの冷凍庫と猫

旧尾道城に向かっていると、昭和レトロなアイスクリーム冷凍庫の上で猫がくつろいでいた。

懐かしい。昔は駄菓子屋さんや小さな商店の店先に、こういった冷凍庫が置いてあったな。ワクワクしながらそのガラス扉を開け、中を覗き込むようにしてアイスを選んだよな・・・。幼いころの記憶がよみがえってくる。

尾道 軒下で佇む猫の写真
そんなところに立っていたら濡れるぞ

冷凍庫の上にいた三毛猫はとても人懐っこく、立ち止まった私の傍まで一度はやって来たが、雨が降ってるのがわかると、すぐに軒下に戻ってしまった。

そして、「そんなところに立っていると濡れるぞ。お前もこっちにこいよ。」といった感じで、こっちを見ている。なかなかお人好しで、賢い猫だ。

尾道 軒下で雨宿りする猫の写真
猫の雨宿り

「ありがとう。どうぞお構いなく。先を急ぐので・・・。猫さんも風邪ひかないようにね。」と、猫に別れを告げて、先に進んで行く。振り返ると、猫さんの雨宿りって感じでいい情景になっていた。

かつての尾道城の写真
かつての尾道城

尾道には最近まで尾道城があった。過去形になっているのは、もう取り壊されてしまったから。えっ~、城が取り壊されることってあるの?と驚く人もいるかもしれないが、この城は個人が観光用に建てたものなので、歴史的な価値はない。老朽化が進み、安全性のこともあり、市が買い取り、取り壊すこととなった。

城があった場所はそのまま展望スペースとして活用するとのこと。いったいどんな感じになったのだろう。気になっていたので、興味津々といった感じでやってきた。

尾道 尾道城の石垣を利用した展望台の写真
尾道城の石垣を利用した展望台

訪れてみると、城がなくなり、土台となっていた石垣だけが残されていた。上に建物があった頃を知っているので、空間的にガランとした印象を受け、物足りなく感じる。

石垣をそのまま利用した展望台にも入ってみたが、う~ん・・・。これも山頂展望台同様に微妙。お金をかけずに展望台にしたことが、ありありと見て取れる。

しかも中に入ろうとして困った。これを造った人は雨の日のことを考えていなかったのだろうか。階段に雨が入り込むので、階段や通路がビシャビシャ。歩きにくいし、すぺって危ない。何より階段では狭くて傘をさせないので、身体が濡れる。もうちょっと何とかならなかったの?これ。

尾道 旧尾道城 展望台からの眺めの写真
展望台からの眺め

旧尾道城の展望台からは駅方面を見ることができる。駅を見ると、長い編成の列車が止まっている。あれって・・・、豪華寝台列車の瑞風ではないか。あの独特の深いグリーンはそうに違いない。なんとタイミングがいい。後で行ってみよう。

尾道 火事の焼け跡の写真
火事の焼け跡

旧尾道城の展望台から山を下っていき、一番最初に尾道にゃんこに出会った思い出の場所を4年ぶりに訪れた。

以前迷ってくることができなかったので、今回は事前に地図で調べてきた。おかげで迷わずに到着できたのだが、な、な、なんじゃこれ!!!といった状態。どうやら火事が起きてしまったようだ。

いつ火事が起こったのかわからないが、場所が場所だけに撤去が難しく、そのまま放置されているような感じ。素敵な思い出の場所がこういう状態になっていることに、ひどくショックを受けた。

ニャンコに遭遇 尾道ニャンコの写真
猫の領域 尾道ニャンコの写真
4年前の様子

そして思った。尾道の魅力の一つである崖地は、法律で建て替えがしにくく、空き家や更地が増えている。どんどんと家が減る一方だ。

猫も薄々は感じていたが、子猫の姿をずっと見かけていない。避妊を徹底しているようで、もうこれ以上増えることはなく、減る一方になる。

それが安全とか、健全な社会になるのだろうけど・・・、スカスカの崖地や猫のいない町に魅力があるかというと、どうなんだろう。

もっともこれは非日常的な刺激を求め、興味本位で訪れる観光客の戯言に過ぎない。暮らしていれば色々な不便や不満。トラブルが生じる。それを外部の人間がああしろ、こうしろというのは適切ではない。

でも、10年後の尾道の観光地としての魅力は・・・と考えると、現状維持すら難しいような気がしてならない。やっぱりあの山頂の展望台は、もっと尾道を象徴するようなインパクトのある建築物にできなかったのかな・・・。そうすれば、あの展望台へ行きたいと、観光客も増えるだろうに・・・。

尾道駅停車中の瑞風の写真
尾道駅に停車中の瑞風

山を下り、尾道駅に行くと、瑞風が停車していた。調べてみると、山陽コースの上りで、2日目の8時14分から12時1分まで停車する予定になっている。3時間程度、尾道の滞在を楽しめるようだ。

旅の本質は人の移動行為。だから移動にこだわればこだわるほど旅は楽しいものになる。こういった豪華列車で旅をしたら、非日常的な列車の雰囲気が、更に旅の非日常性を高めてくれ、さぞ楽しい旅になるに違いない。

もし、この瑞風に乗って尾道にやって来たら、見える風景も違うだろうか。いつもとは違った感情が湧いてくるのだろうか。

猫散策をしたらどんな気分だろうか。野良猫なんぞには構ってられるかといった、貴族的な考え方になってしまうのだろうか。色々と妄想が止まらないが、実現させるには金銭面を含め、けっこう高いハードルがある。

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