旅人とわんこの日々
世田谷編 2005年Page2
世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。
3、新しい挑戦と試走(2005年2月28日)
昨年の秋に、仲のいい友人と後輩Kがバイクのレースに出場し、その手伝いをした。彼らにとっては初めてのレースだったし、倉庫に眠っていた古いバイクをレース用に改造せずに出場したので、ラップタイムが伸びないこと。直線でバンバン抜かれ、ハンデを含めない実際の成績は冴えないものだった。
成績とともかく、熱くなれるのがレースというもの。走っていた彼らはもちろん、手伝いながら応援する私も大いに盛り上がり、楽しい体験となった。
その余韻が冷めやらぬうちに、友人が「来年はレース活動に力を入れるんだ。今度は他のチームと対等に戦えるバイクで出場し、いい成績を残すんだ。」と決意し、頻繁にネットオークションをチェックし始めた。
友人たちが参加したのは、山梨県韮崎市にある「スポーツランドやまなし」の非公式というか、ローカルなレース。参加できる車両は250㏄。しかも4ストロークエンジンのみという独特のレギュレーションになっている。
該当車種で最もレース向きなのは、4気筒のレーシングタイプ。ホンダならCBR250RR。ヤマハならFZR250R。カワサキならZXR250。スズキならGSX-R250といったモデルになる。
しかし、コストのかかる250㏄の4気筒バイクはもう製造していないので、必然的に中古を探すことになる。これがなかなか厄介で、バブルの産物とか、マニアックなカテゴリーとなり、玉数が極端に少ない。
しかも、載せられているエンジンは、1万5000回転以上で回すのが当たり前の高回転型エンジンなので、故障しやすく、程度のいいものが見つからない。あったとしても、新品と変わらない値が付いていて、趣味でレースをしている友人には手が出ない。
オークションの出品者のところや、バイク屋などを色々と回り、12月にようやく手ごろなバイクを手に入れることができた。
車種はカワサキのZXR250。一応エンジンはかかるが、ほぼ不動車。そのため安く手に入ったのだが、悪い箇所を直し、万全な状態にするのが大変。
でも、こういうオイルにまみれながら四苦八苦する部分も、レース活動の一部。この地味な過程もまた面白かったりする。
バイクに詳しい友人と後輩Kが主に機械部分を整備をし、錆の出ているサスペンションは程度のいいものと交換、エンジンはキャブレターの洗浄程度ではちゃんと直らなかったので、最終的にはバイク屋にメンテナンスに出した。
私はメカに詳しくないので、塗装担当。バイクの外側を覆い、空気抵抗を少なくしている部品をカウルというのだが、転倒するとすぐに割れてしまうし、日の当たる場所にずっと放置していてもパキパキになって割れてしまう。非常に壊れやすい部品になる。
手に入れたバイクもカウルの状態が悪く、ネットオークションで程度のいいものを探したのだが、色違いのものしか揃わなかった。そのまま取り付けたら、つぎはぎ状態となって格好悪い。だったら全体を新しい色で塗り直してしまおうということになった。
昨年のレース中、ピットレーンでサインボードをライダーに出すときに、バイクが地味な色だったので判別しにくかった。レースでは目立つ色の方が何かとメリットが大きい。思い切って一番目立つ色にしようではないか・・・と、明るめの黄色に塗ることにした。
で、2月の終わりにようやく各部分が直り、塗装も終わり、バイクの修理がほぼ完了。家の近所や第三京浜を走らせてみた感じでは、まあとりあえず普通に走る。後は実際にサーキットでハードに走らせてみて、細かい部分を調整していけばいい。
バイクは友人のものだが、ばらした状態では置く場所がないからと、しばらく我が家で保管していた。今日はすることもないし、慣らし運転をしておいた方がバイクにもいいだろう。ということで、ちょっくら試走してくるか・・・と、完成したばかりのバイクで箱根に行ってみることにした。
私が普段乗っているバイクはCBR1100XX。通称ブラックバード。排気量は4気筒で約1100㏄。小型車並みの排気量と、パワーがある。それに対してこのZXR250は同じく4気筒でありながら排気量は250㏄。4分の1ほどしかない。
すなわちブラックバードはシリンダー(1気筒)当たり250cc以上あるので、1気筒だけでZXRを上回ってしまうほどの差がある。
実際に走らせてみると、この排気量の差は思っている以上に大きかった。普段は軽くスロットルをひねるだけで、バイクがスムーズに進んで行くのが、ZXRの場合は、思いっきり回さないと前に進んでいかない。
加速の度にスロットルを頻繁に回さないといけないので、手首が疲れるし、エンジンの回転数が高いので、排気音も甲高い感じでウォーン、ウォーンと喧しい。
なにより、エンジンが回っているのに、前に進まないというミスマッチの感覚がモヤモヤとし、乗っているとイライラしてきてしょうがない。
そもそもとして、いい歳したおっさんが目立つ真っ黄色のバイクでウォーン、ウォーンとバイク小僧のように軽快な音をたてながら走っている様子は、あまり、いや、全く様になっていなかったはずだ。
もちろんいい部分もあり、車体が軽いので、信号待ちや交差点で曲がる時がすごく楽。この取り回しのしやすさは、大きなバイクに乗っていると本当に楽に感じる。
あとは乗り心地には関係ないが、250㏄だと車検がないので、バイクの維持費が安い。それでいて高速道路にも乗ることもできる。この点はとても魅力的だ。
近距離メインで、手軽にバイクに乗りたい人には、スクーターを含めて、250㏄のバイクというのはいい選択肢になると思う。但し、それは単気筒や2気筒の話。4気筒は乗っていて手首と耳が疲れるので、お勧めしない。
箱根ツーリングの方はというと、第三京浜、横浜新道と乗り継ぎ、戸塚からは箱根駅伝と同じコースで箱根に向かった。
茅ケ崎で湘南海岸に出ると、冷たい海風を浴びながらを海沿いの国道134号を小田原に向けて疾走。行楽シーズンの日曜日には、行楽地へ向かう車で大渋滞することで有名なこの道も、今日は寒く、天気もいまいちなので、車があまり走っていなかった。おかげでとても気持ちよく走れた。
順調に走り続け、駅伝でいうなら平塚中継所を通り過ぎ、間もなく小田原中継所にさしかかる所までやってきた。
東京からの箱根路は、人間の足で進むとなると、とんでもなく長い道のりになる。ランナーがタスキをつなぎながら疾走する箱根駅伝では、長い道のり故に毎年様々なドラマが生まれているが、バイクで走ると、あっという間。タスキの受け渡しもなければ、給水もない。ただただ単調な道のりで、何もドラマ性を感じない・・・。
後は最大の難関である箱根の峠を登っていくだけになるのだが、山登りもバイクだとアクセルを回すだけ。誰でも山の神のようにスイスイと登れてしまう。
ただ、ちょっと不安要素があった。今日はちょっと雲が多い空模様で、湘南を走っていても富士山が全く見えなかった。小田原に近づく少し前から空模様が一段と怪しくなり、目の前に聳える箱根の山々は濃く靄っている。
こりゃ、山の上は雨が降っているかも・・・。と、心配しながら進むと、国道1号線に設置されている交通情報の掲示板に、「箱根雪。箱根新道チェーン規制」の文字が・・・。
おいおい、マジかよ。箱根雪って・・・、バイクだとアウトではないか。せっかくここまで来たというのに、雪ではどうにもならない。新年早々雪に祟られたが、また雪に祟られることになるとは・・・。やっぱり今年の旅は呪われているのかもしれない。
仕方ない・・・。引き返すか・・・。駅伝でタスキがつながらなかったランナーのような気分で、帰路の道を黙々と走るのだった。
*デジカメのデーターが消えてしまったので、バイクの整備や今回のツーリングの写真はありません・・・。
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