旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とわんこの日々
世田谷編 2005年Page11

世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。

広告

15、父親の手術と病気になること(2005年9月5日)

入院のイメージ(*イラスト:みほなさん)

(*イラスト:みほなさん 【イラストAC】

父親の手術が無事に終わった。父親の病名は胃ガン。ガンが発覚したのは2年前の2003年春。すぐに手術を行い、ガンになっている部分を中心に胃の3分の2を切除した。

その1年後、縫合した部分が破れ、胃酸が流れ出て激しい腹痛を起こし、部分麻酔の軽い手術を行った。約2年後の今回は、ガン細胞が転移して大きくなっている部分や、胃から腸につながる管の縫合部分は前回緊急だったので、応急処置的にしか治していなく、その部分をきちんと治してもらった。

しっかりと全身麻酔を行う手術ではあったが、そんなに難しい手術ではなく、数時間で終わるとのこと。前回のように9時間といった長丁場ではないし、仕事を休んでまで行く必要はないか・・・と、今回は母親と妹に任せて病院には行かなかった。

衝撃を受けるイメージ(*イラスト:pandamamaさん)

(*イラスト:pandamamaさん 【イラストAC】

一昔前だったら、「あなたの病名はガンです。」と告げられたら、「ガ~ン」と絶望で膝から崩れ落ち、効果音としてベートーヴェンの運命が流れるのが定番だったが、最近の医学は進んでいるので、ガンになったからといって必ずしも絶望のどん底に陥る必要はない。

ガンの解明が進み、手術のレベルも上がり、胃の部分切除は昔の盲腸と同じレベル・・・というのは少々大袈裟かもしれないが、そんなに深刻になる必要はないと、前回の手術の時に説明を受けた。

ただ、ガンという病気の本当の恐ろしさは、ガン細胞が転移していくこと。胃ガンになり、胃のガンを取り除いて一件落着となればいいが、他に転移してしまうと厄介だ。転移したガン細胞が成長して大きくなると、またそれを手術で取らなければならない。今回の手術がそうだ。

手術のイメージ(*イラスト:asakuracさん)

(*イラスト:asakuracさん 【イラストAC】

父親の場合は、最初の手術の時に「手術自体は難しくありませんが、ガンの転移するスピードが早ければ、最悪の場合、もって数年かもしれません・・・。」などと手術前の説明で言われたが、実際に切開してみると、最悪の状態ではなく、一回目の手術でガン本体と転移した部分のほとんどを取り除くことができた。

おかげでその後は落ち着いていて、今回の手術で前回に残ってしまった部分や、少し転移している部分を切除した。術後経過がよければ、これでまあ一段落することになる。新たに脅威となるガンが発生しなければ、もう手術を行うことはないだろう、とのこと。

その説明が本当なのかはわからない。患者を元気づけるための医者の戯言かもしれないが、これが最後の手術と聞き、父親は手術を受けるというのに機嫌がよかった。

医者の説明のイメージ(*イラスト:うさぎやさん)

(*イラスト:うさぎやさん 【イラストAC】

父親がガンになり、その様子を見ていると色々と考えさせられる。一番思うのは、やっぱり早期発見は大事だということ。ガンが大きくなる前、そして他に転移する前に対処できれば、ガンは必要以上に恐れる病気ではない。

父親の場合も、もう少し早く発覚していたら、胃を大きく切除する必要はなかっただろう。切除する量が小さければ小さいほど、元に近い生活を送れるというもの。もっと早く見つかっていれば・・・というのは、きっとガン患者の誰しもが思うことではないか。

でも早期発見できなくても、末期症状だったり、転移が酷くなければ、父親のように手術で取り除き、ある程度普通の生活に戻ることができる。

とはいえ、それは命に別条がないというだけ。やっぱりガンにならない・・・。いや、何の病気にしても病気にならないのが一番。日常生活において、あれが駄目、これも駄目と制限が多くなり、生活の楽しさが激減してしまうことになる。

定年退職のイメージ(*イラスト:シルバーバックさん)

(*イラスト:シルバーバックさん 【イラストAC】

また、ガンなどの大きな病気をすると、人生のプランが大きく崩れてしまうことになる。父親の場合は、定年退職と同時にガンが発覚した。定年後は時間があるので、あれをして、これをしてと、趣味が少ないながらに考えていたようだが、いきなりつまづいてしまった。

手術でガンを取り除き、無事に退院すると、形としては普通の生活をできるようになった。病気が治ったので、人生の再出発。今までの分を挽回だ。と、本人は思っていたようだが、胃の3分の2を切除したので、全てが今まで通りとはならなかった。

ゴルフをするイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん 【イラストAC】

ゴルフが数少ない趣味の一つだが、最初のうちは傷口が開いたらどうしよう。スイングの時に内臓が痛むと、縫合した場所が破れたとか・・・と怖くなるそうだ。

ゴルフですらこの状態、という言い方がふさわしいのか分からないが、手術や病状次第では激しく身体を動かす運動や趣味は怖くてできなくなる。

食べるものに関しても、胃を3分の2切除したので、手術前のように思い切って食べることができない。胃の消化が追い付かないと、その先の腸の負担も大きくなるし、アルコールに関しても一応禁止されている。

今まで当たり前にしていたことができなくなる。普通のことができなくなる。そのことが、どれだけ辛いことか。周りの人間が楽しんでいるのに、病気を理由にできないことがどれだけストレスに感じることか。間近に見ていて、色々と考えさせられる。

入院の見舞のイメージ(*イラスト:ひのまおさん)

(*イラスト:ひのまおさん 【イラストAC】

父親のことを書いたが、病人を抱えると家族側にも負担がのしかかる。入院すれば誰かが定期的に行く必要があるし、今回のような手術の際には付き添いで行かなければならない。

手術が終わったら、それで終わりではない。自宅に戻ってきたらしばらくは病人扱いで手間がかかるし、普通の生活ができるようになっても、あれができない。これができないとなると、家にいることが多くなる。そうなると、母親も外出がしにくくなり、引きこもりがちになってしまう。

父親にしたら自分は病人だ。好きで病人になったんじゃないといった気持があるし、母親にしたら病気になったのはあんたの不摂生でしょ。家にいるときはなるべく自分のことは自分でやってよ。私にだって自分の趣味や交友関係があるのよ。となる。

いがみ合う老夫婦のイメージ(*イラスト:柴野いおりさん)

(*イラスト:柴野いおりさん 【イラストAC】

そのへんのわだかまりが増えれば、家庭内に不平不満が多くなり、空気が悪くなってしまう。そのストレスからまた新たな病気やトラブルが発生し・・・といった悪循環が生まれる事も多々ある。

ほんと、病気になると自分自身にも、周りの人間にも何一ついいことがない。病気になれば、身体が痛かったり、辛かったりするのは当然だが、手術して治った後も不自由な思いをしたり、薬を飲み続けたり、食事制限があったりと不自由をする。もちろん、病院に行く手間暇がかかるし、お金もかかる。

自分は病気になって不幸だ。といったような被害者的な病人気分でいると、家族からも疎まれたり、友人からの誘いも少なくなったりと、周りの態度も変化することもある。病気になると、こんなはずでは・・・と思う事ばかりのようだ。

胃がんのイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん 【イラストAC】

ちなみに父親がなったガンは胃ガン。その名の通り、胃にできるガンで、胃壁の内側にある粘膜(上皮)の細胞がガン化して起きる。

家族や親せき、或いは知人がかかって、身近に感じている人も多いかと思う。実際、胃がんは日本人がかかりやすいガンのうちの一つで、ガン統計の上位3番以内の常連となっている。日本人というか、東洋人に多く、西欧人には少ない傾向があるそうだ。

発生要因として指摘されているのが、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染と喫煙。この他に、塩分の高い食品や揚げ物、アルコールの摂取が、胃がんの発生率を高めると言われている。発生要因を見ると、男性の方が女性よりも2倍発症率が高いというのも、なんとなくわかる気がする。

不摂生のイメージ(*イラスト:asakuracさん)

(*イラスト:asakuracさん 【イラストAC】

胃がんは早期発見すれば怖くないとか、早く手術してとってしまえば死ぬことはないとか、死なないガンの一つと言われるが、現実はそんなに甘くはない。

胃がんが厄介なのは、早い段階で自覚症状が出ることはほとんどなく、場合によってはかなり進行しても無症状ということ。

早期発見すれば怖くないと言いつつ、病気だと自覚症状が表れた時にはかなり進行が進んだ状態で、大きな手術が必要だったり、手術をしても余命宣言をされて・・・と、手遅れな場合も多い。健康診断をきちんと受けている人にはそんなに怖くない病気と言えそうだ。

健康診断のイメージ(*イラスト:atelier-ayaさん)

(*イラスト:atelier-ayaさん 【イラストAC】

あとは、胃がんは遺伝でなりやすい。と、昔は言われていた。なので、自分が胃ガンになった時、親兄弟とか、祖父母が胃がんになっていたら、ああやっぱり・・・となっていた。

今では遺伝の因果関係は否定されている。どうやら似たような食生活や生活習慣をしていたらなりやすいとのこと。そう言われれば納得する。

父親を見て自分を正せというわけではないが、タバコはやめたし、今後はお酒もほどほどにして、健康診断もちゃんと受け続けようと思う・・・。あくまでも思っているだけではあるが・・・。

目覚ましで起きるイメージ(*イラスト:羊毛種さん)

(*イラスト:羊毛種さん 【イラストAC】

とまあ、父親の手術が終わって、ホッとしてはいるところだが、別の問題も発生している。ここのところ父親が不在で、母親も付き添いとかで忙しい。で、困るというか、仕方ないというか、前回の手術時と同様に私の日課に犬の散歩が増えてしまった。

朝、夕の散歩は主に父親が運動を兼ねてやっていたが、朝は私、夕方は母親に交代。今までゆっくり寝ていられた部分がそうでなくなるので、結構大変。早く退院して、犬の散歩に復帰してくれないかな・・・と、切実に思っているところだ。

旅人とわんこの日々
世田谷編 2005年Page11
2005年Page12につづく Next Page
広告
広告
広告