旅人とわんこの日々 タイトル

旅人とわんこの日々
世田谷編 2005年Page10

世田谷(砧公園)での犬との生活をつづった写真日記です。

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14、旅とレースの狭間 モータースポーツの沼(2005年8月5日)

スポーツランドやまなし サーキット走行の様子
サーキット走行

昨年の秋から友人のバイクレースを手伝い始め、今年の7月には後輩の代役でレースにも出場した。大きなサーキットで行われる本格的なレース活動からすると、お遊びみたいなレース活動になるが、実際にレース活動を経験してみると、改めてレース活動とか、サーキット走行を含めたモータースポーツは、野球やサッカーなどとは違って特殊な趣味だと感じる。

モータースポーツに関心のない人からすると、二輪にしても四輪にしてもモータースポーツと名が付くものは、クラッシュしたり、転倒したりするイメージが強く、難しいとか、危ないといった印象が強いと思う。

バイクレースでのクラッシュの写真
クラッシュ

実際にやってみると、外野の人が思っているほど危険ではない・・・と、レースで転倒した人間が言っても説得力はないが、転倒や事故をしても大きな怪我となるケースは多くない。

それこそ野球で足をくじいたとか、ボールが当たって打ち身になったというのと同じ程度で済む場合がほとんどだ。

怪我をする確率的にもサッカーや野球と比べて変わらないとは思うが、怪我をした時に後遺症が残るような大きな怪我になったり、死亡する確率は圧倒的に高い。

人間が制御できるスピードを越えて走っているので、そういった不幸な事故になってしまう可能性があるのは、ある意味しょうがないし、そのへんは受け入れてやるしかない。

昨年のことだが、南米を旅行した際、気を抜いているときに置き引きに遭い、旅行が台無しになってしまった。まさにモータースポーツも一緒で、真剣に取り組んでいるときに大きな事故になることは少ないが、いい加減な気持ちでやっていると、足元をすくわれて痛い目をみる。というのが、適切な言い方だと感じる。

スポーツランドやまなし レース用の装備品
レース用の装備品

危ないとか、難しいという以上に痛感するのが、とてもお金と時間のかかる趣味だという事。

レースに出るだけでも、車両の整備費用、タイヤ、ガソリン、オイルなどの消耗品、そしてサーキットまでの交通費、サーキット走行費などが必要になる。もちろん前提として、サーキットを走れる車両、自分を守るためのヘルメットや革製のレーシングスーツ、安全装備やグローブ、ブーツは必須である。

私の場合は、代役ということで参加できない後輩の装備一式を借りたし、レース用のバイクも友人のを使用したので、出場料や消耗品代ぐらいしか費用はかからなかったのだが、もし今後も継続的に参加しようとするなら、バイクなどはともかく、最低限自分用の装備を揃える必要がある。

ある程度本格的にやるとなると、バイクを競技用に改造しなければならないので、そのバイクをサーキットまで運搬する車、そしてバイクを整備するための工具一式が必要になってくる。これらを揃えるとなると、とんでもなく高い。中古でそろえてもうん百万かかる。

レース関係者のトランポ
レース車両を積んだトランポ

もし友人と切磋琢磨といった感じで、レースやタイムを競い合うなら、自分用の競技車両からトランスポーター(通称トランポ 運搬車)まで揃え、普段から暇を見つけて練習したり、車両の整備をしなければならない。そうなると確実に生活が仕事とレースの2パターンしかなくなってしまう。

趣味でやっているのだから、無理のない範囲で活動すればいいんじゃない。レースが楽しめれば少々順位は関係ないんじゃない。まあレースをしない人はそう思うだろう。

しかし草レースとはいえ、レースをやる人間は熱くなりやすい。山に登るなら山頂を目指すのと一緒で、出るからには一番をといった気持ちになるものだ。

表彰台のイメージ(*イラスト:acworksさん)

(*イラスト:acworksさん)

その為には、休日にサーキットへ練習に出向いて練習をしたり、負けたのが自分の腕でなく、マシンのせいだと納得がいかないと感じたなら、ブレーキなどのパーツを高価なものに交換してみたりと、納得いくまでマシンにお金と時間をかけてしまうもの。

他の趣味を犠牲にしてまでレース活動に打ち込めるかというと、そんな情熱は私にはない。もし7月に出場したレースで、周囲が驚くような速いタイムを出していれば、その先のステップへ進むことを含め、考慮の余地もあったかもしれないが、いたって平凡なタイムだったし、集中力を欠いて転倒というお粗末な顛末付き。年齢的にも将来性という部分は全くない。

友人からは、「後輩Kの都合の悪い時にだけでも出てくれれば助かる」と言われているが、これも簡単そうで、難しい提案だ。

人数合わせのように出走し、また転倒して迷惑をかけるのは嫌だ。野球とかの助っ人なら、少々エラーしても想定内の出来事。最初っから期待されていないので、笑い話で済む。

エラーのイメージ(*イラスト:mia69さん)

(*イラスト:mia69さん)

しかしモータースポーツの場合は、コケてしまったらチームがリタイヤという可能性もあるし、バイクを壊したらそれなりに修理費もかかる。全くシャレにならない。それに自分だって大きな怪我をするリスクがある。

そうならない為には、やっぱり練習に通ったりしなければならないし、頻繁に走るなら自分用の装備が欲しくなる。そうなると、せっかく買ったのだからと、もっと深みにはまり、時間とお金の支出が大きくなってしまう。

地方選手権に出場の後輩の写真
地方選手権に出場の後輩

これ以上深みにはまっては大変だ。一度レースに出れただけでもいい経験になった。それで十分ではないか。

モータースポーツというのは、安全性やかかる金額を考えると、中途半端にやるには不向きな趣味だ。やるならしっかりと本腰を入れて取り組まないと、気持ち面でも中途半端になり、自分自身が大けがをしてしまうことになりかねない。

ということで、今後はライダーとして参加するのはやめ、来年からは時間があるときに裏方として手伝う程度にすることにした。そうしないと犬の面倒もみれなくなるし、一番大事にしている旅も中途半端になってしまう。

全日本選手権に出場の友人の友人の写真
全日本選手権に出場の友人の友人

ちなみに、これでもまだ趣味でやっている草レースレベルの話。大きなサーキットでちゃんとレース用のライセンスを取得し、公式なレースとか、地方の選手権などに参加するとなると、1秒を縮めるために高価なパーツを装着したり、整備を入念にしたり、定期的にエンジンなどをオーバーホールしたり、多くの練習をこなさなければならない。

この世界は出ていく出費に上限がないので、もし地方選手権に個人で出場するなら、給料の全てをつぎ込み、私生活をレースに捧げないと、メーカーやスポンサーの後ろ盾のあるチームに張り合えない。

全日本選手権250㏄クラスの予選の写真
全日本選手権の予選

全日本選手権に出ている人に聞いても、とにかくスポンサーが付かないことには・・・との事。よほどの御曹司か、高給取りでもない限り、かつかつな生活をしている人が大半になる。

モータースポーツで一番厄介なのは、走れば走るほどお金がかかるという部分。なので、練習すればするほどお金がかかってしまう。そして一番金食い虫なのが、タイヤになる。4輪でもそうだが、タイヤ代の捻出に苦労している人が多い。

よくレーサーがタイヤメーカーのロゴの入った帽子を被ったりしているが、それなりの成績を上げてタイヤメーカーのスポンサーが付いたら、色々と楽になるそうだ。話を聞いていると、「俺にもタイヤメーカーのスポンサーがつかないかな・・・」と、愚痴をこぼすライダーは多い。

ワークスチームのパドック
ワークスチームのパドック
ワークスチームのパドック

まあお金が全てとは言わないが、モータースポーツはお金をかけないとなかなか勝つことが厳しい世界になる。もちろん腕や才能といったものも必要となるが、よっぽど閃くものがない限り、やはりお金といった現実の壁の方が高くそびえている。

こういった金銭的な感覚が他のスポーツと違うところで、負けたのが自分の腕でなく、マシンのせいだと納得がいかないと感じたなら、納得いくまでマシンにお金をかけていくことになる。

そして最終的には、他の人と同じように大枚を叩いた後、自分の才能の限界に気がつき、第一線から退いていく感じになる。はまると恐ろしく深い沼。それがモータースポーツ。なんとなく片足を突っ込むにはちょっと危険な世界だ。

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